038 拝啓〜俺の扱いが雑になってる気がします〜
主人公は最初にゴブリンと戦ったきりな気が。
俺たち『F』――パーティー名は変えた方がわかりやすいのは重々承知だ――は、ウルフの討伐クエストを筆頭にして受けられる限りのクエストを受注した。
勿論、パーティーランクはE。そのため、非常に困難な依頼をする必要はない。基本的には街に危害が加えられるのを防ぐもの。
つまり、ゴブリンやウルフのお掃除だ。
大体のクエストが難しくない。何が言いたいのかと言うと、ランクが上がるまで退屈なのだ。
約一週間。俺たちは作業とも言えるクエストを一日に平均四つもこなしている。
前も一ヶ月ほどひとりでゴブリン退治に勤しんでいた時期があったが、それよりも退屈だ。
なぜならエミとアリスがぜんぶ完遂してしまうからだ。俺も戦うって言うのに「見て下さい」や、「こんなこともできるわよ!」って、全然戦わせてくれない。
わかってるよ。俺が褒めると二人ともすごい喜ぶからな。
きっと褒められるのが嬉しいから頑張ってしまうんだろう。
俺はとりあえず、Dランクに上がるまでは二人の動きを観察することにした。俺も参加したいが、今は二人に出番を譲ることにしたのだ。
彼女達の戦闘を見ていてわかったことがある。
まずはエミ。エミはダークエルフとという種族だからか魔法系の技全般が得意だ。彼女自身の保有する莫大なMPと相まって、その火力は強大だ。
しかし、エミは少し不器用なのである。数匹の敵を火力で押し潰すことはできても、俊敏な的に正確に最小の攻撃を放つことは苦手だ。
エミの弱点は、必要ないレベルの火力で攻撃をしてしまうというところだろうか。
次にアリス。種族は賢者。元々は普通の人間だったらしいが、そうとは思えないほど器用で俊敏に戦っている。
見た目が小柄な女の子であるため、ギャップが凄まじい。
賢者特有の戦い方なのかは分からないが、アリスは魔法陣と呼ばれる紋様なものを紙に書いて、僅かに魔力を注ぐことでその効果を起動し、その組み合わせを駆使して戦うスタイルだ。
前には「アタシには魔力は人並み程度しかないわ」と言っていたため、消費する魔力を抑えて戦うのが彼女の中では前提になっている。
ここではわかるアリスの弱点は、火力な大きな技を連打できず、MP消費の激しい遠距離攻撃も苦手としている。
二人とも一般人と比べればとんでもない実力の持ち主だ。しかし実力があるからと言って苦手な部分を無視してはいけない。補って戦えばより強大な敵も倒せるだろう。
やはり、アリスは前衛でエミが後衛のサポートに回って、俺がどちらかの補助に入るのが一番良さそうだな。
本音を言えばこういうクエストで俺の戦い方を二人に分析してもらって決めようと思っていたのだけど……それはDランクに上がってから考えよう。
とにかく、暇で暇で仕方ないクエストをひたすらこなしたことにも、収穫があったことは良かった――
「――しゅじんさま! ご主人様!」
「ん? どうした?」
「今日の依頼も達成しましたよ。帰ろうと思ったらご主人様が難しい顔で何やら考え込んでいたので」
周りを見渡すとウルフやゴブリンの死体があちこちに転がっている。もはや鏖殺だなこれは。
「お疲れ様。よし報告しに帰ろうか」
死体を纏めて回収したのち、ギルドに向かって出発する。
「今日のエミは珍しく雷とか土系の魔法を使ってたわね。どうしたの?」
「炎系ばかりでなく普段使わないものも感覚を強化したかったんですよ」
「私もまだ試したことのない身体強化系の魔法陣でも使ってみようかしら」
ギルドの行き帰りは二人の作戦や反省を聞く時間になりつつある。
エミもアリスも長らく動かすことのできなかった体を自由に動かせることが楽しいのだろうか。そうなら、俺も嬉しい限りだ。
「ところで俺たちって後どれくらいでDランクに上がれるんだろうな」
結構ハードスケジュールでクエストをこなしているから、もうそろそろランクアップの試験なんか受けさせてもらえそうだけど。
「ご主人様。私達は既にDランクですよ。それに、もうそろそろCランクに上がれるそうですよ」
「え⁈」
いつのまにか上がってたんですけど。俺だけ知らない感じ? 心抉られるんですけど。
確かにクエストとかの受付はエミがやってくれるし、自分の受けたクエスト数とか把握してなかった俺も悪い。
「ごめんなさい……伝え忘れてたわ。だって大したことじゃないと思って」
頭を掻きながら、申し訳なさそうにアリスが謝罪してくる。
「ご主人様には私から伝えとくって言ったのはアリスじゃありませんか。すみません、次からそういうことはしっかりと私が連絡する様にしますね」
「いや、全然いいんだけど。仲間外れみたいで悲しいから次からやめてな」
この子達、俺の古傷に塩なってくるよぉ。泣いちゃうよ。
「申し訳ありません!」「ほんっとにごめんなさい!」
まぁ、悪気はなかったんだろうし怒る気もない。
「気をつけてくれればいいから」
「やはりご主人様はお優しいですね」
「マスターにアタシの活躍を見て欲しいって気持ちに熱が入り過ぎちゃったわ」
「次からはパーティーらしく皆んなで戦うからな」
ギルドに帰ると、Cランクに上がったという報告を受けることを俺はまだ知らないのである。
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寝る前に風呂に浸かりながら、これからの計画を立てようと現状の確認をする。
勿論、アリスは俺の上でエミは向かい合う形で湯船に浸かっている。
「まさかギルマスが居ないからって試験免除されるなんてな。思ったよりも早くランク上がれたな」
「ご主人様の奴隷ですからこれくらい当然です」
「このアタシにかかればこんなの朝飯前だわ」
二人ともなんでそんなに自信満々なんだよ。
ポジティブ思考なのはいいことだけど。
「実は私達の倒していたゴブリンやウルフの中にハイ・ゴブリンやハイ・ウルフが混ざっていたらしくて、ランクに必要な条件が早めに揃ったらしいんですよ」
「あー、なんかそんなこと言ってたわね。正直ぼっとして聞いてなかったわ」
アリスよ、笑いながら誤魔化すなよ。そういうことを俺に伝えて欲しいんだぞ。可愛いから許すけど。
「アリスには後でお説教な」
「マ、マスター……ごめんなさいってば」
少し涙目のアリス。許すけど説教しないとは言ってないもんね。
「ところで、そろそろ武器の新調しに行こうか」
具体的には明日かな。それでCランクのクエストを複数受けてみて王都に向かう準備かな。
「そうですね。いつ頃行きましょうか」
「クエストで金も溜まったし明日辺りでいいか?」
二人とも特に異論はなさそうだな。
「それに近いうちに王都に向けて出発しようと思うからその準備も始めたい。二人とも手伝い頼むぞ」
「わかりました。王都でデートなんてしたいです!」
「王都なんて久しぶりね。どんな風になっているのか楽しみだわ」
楽しみにしてくれているなら何よりだ。
それに俺も久し振りに、クラスメイトに会うことになるかもしれない。
これは憶測だが、クラスメイトは既にグループを作って活動しているんじゃないかと思う。
ほとんど赤の他人のようなものだが、数人は世話になった人もいる。
助けになれることがあるなら、手を貸してやりたいしな。
何はともあれ行ってみないことには始まらない。
俺たちが今すべき目の前の事から片付けなくちゃな。
「よし、そろそろ上がろうか」
そういえば、最近毎日忙しくて可愛がってやれてないな。
落ち着いたらたっぷりと可愛がってやらなきゃいけない。
そんな事を思いながら就寝の準備をするのであった。
後十話くらいで二章に入ると思います。
多分強キャラでます。




