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037 流石うちの子だわ

久々の戦闘シーンな気がします。

 話し合いの翌日、早速ランク上げの為に三人で早朝からギルドを訪れる。


 最近は色々あってクエストもサボりがちだったし、体の動かし方の勘なども早く取り戻したい。


 早速受付で良さそうな依頼を受付嬢に質問する。


「パーティーランク上げに良さげなクエストってありますか?」


「ランク上げですか? それでしたらやはり討伐系の依頼をこなしていくのが近道になります。それにある程度のクエストをこなしておられる『F』の皆様でしたらゴブリン以外の、そうですね。こちらのウルフの討伐などいかがでしょうか?」


 すっと依頼の紙を差し出してくる受付嬢。まぁ、ギルド勤めの人がいうのだからわざわざ他のを探そうとは思わない。


「エミとアリスはこれでいいか?」


「もちろんよ」


「異論はありません」


「ではこちらにサインを」


 促されるままにサインを書いて、目的地であるいつもの森へと向かう――前に少し気になったことを聞いてみる。


「最近、鋼鉄のダイヤモンドってパーティーを見ないんですが、どうかしたんですか?」


「最初に絡まれていた人たちですね。彼らは今王都にいますよ。ランクアップの為の試験を受けに行っているんです」


 と言うことは、あんな雑魚キャラ感出しといてAランクになって帰ってくるかもしれないってことか。

 それに王都って。なんか先を越された感じして嫌だな。


「何故わざわざ王都でランクアップの試験を受けるのでしょうか?」


「それは単純にAランクになるには王都で実施される試験を受ける必要があるからですよ」


「そうでしたか。ありがとうございます」


 最近、最初に絡まれたあいつらのことを見なくなったからてっきりどっかでのたれ死んでるかもと思ったが、思ったよりも真面目に活動しているんだな。


「よし二人とも、ウルフ退治に行こうか」


「はい!」「はーい!」


 全員の確認を取ったところでいざ出発。


 森へ足を進めながら駄弁っていると、目的地近くの辺りで武器の新調の話になる。


「アタシ達はまだEランクだから大丈夫と思うけど、Cランクまでには装備は一式買い替えた方がいいと思うわ。アタシは基本紙さえあれば大丈夫だけど」


 アリスの提案はもっともだ。


 俺の装備はこの異世界に来てすぐに買った安物ばかり。このままではいずれ限界がくるだろう。


「エミは杖なんて買ってみるか?」


「買って頂くのはありがたいですが、同時に申し訳なさもあります」


「何言ってんのよ。その分マスターの為に役立てば良いだけでしょ。変なとこ気にしすぎなのよエミは」


 アリスがポンとエミの肩を叩く。


 アリスのそういう所は、エミにも俺にも良い働きを及ぼしてくれるんだろうな。


 エミも「そうですね! そうですよね!」と明るくやる気になっている。


「ありがとな」


 俺はアリスに耳打ちをした。アリスは振り返って少し顔を赤くしながらボソッと「別に大したことはしてないわ」なんて言ってきた。


 エミにも良い友達のような関係ができて、なんだか親が子供を見ているようなほんわかした気持ちになりましたとさ。




 ◎◎◎ ◎◎◎ ◎◎◎ ◎◎◎ ◎◎◎ ◎◎◎ ◎◎◎ ◎◎◎




「アリス、そっちに行ったぞ!」


「任せて、マスター」


 アリスはお札の様な紙を数枚、地面に叩きつけた。

 瞬間、アリスの目の前に大きな穴が生成される。


「ガゥ?! ガアアァウ‼︎」


 標的をアリスに定めた惨めなウルフ二匹はまんまとその穴へと落ちる。

 流石にあれは回避できないわな。


「まだ終わりじゃないわよ?」


 自慢げな笑みを浮かべながらお札を空中へと放るアリス。

 刹那その札は五つの大きな氷柱へと変化する。


「アタシのことを見た目だけで弱いって決めつけた能無しワンコに鉄槌よ」


 ドドドドドォン!!


 氷柱は穴へ一直線。アリスは絶命の声を上げたウルフを気にせずに、エミへと注意を促す。


「エミの方に一匹行ったわよ!」


「任せて下さい!」


 俺を挟んでアリスの反対に位置するエミに一匹のウルフがすごいスピードで接近するのが見えた。


 ウルフはエミの手前にある岩を登ると、跳躍して上から突っ込んでいく。


 大丈夫か?


 俺も万一に備えて雷魔法の発動の準備をする。

 最悪ウルフぐらいなら【雷撃(ライトニング・アロウ)】で貫通させることができる。


 お得意の【即死(インスタント・デス)】は動いてるモノが標的だと流石に正確には放てない。


 そんな俺の不安も意味はなく、エミは無慈悲に得意とする炎魔法を放つ。


「【煉獄(ヘルファイア)】」


 僅かに離れているにも関わらず熱気がこちらまで伝わる。空飛ぶウルフの跡は無く、微かに焦げ臭い匂いだけが残った。


「ご主人様、やりました!」


 先程の真剣味溢れる表情から一変、飛び跳ねて喜びながらこちらに手を振ってくる。


「お、おう。よくやったなエミ」


「はい! ありがとうございます!」


 エミの戦い方に関しては死体の回収ができないのが残念だが、よく反応できている。


 ここまでで三十五匹程のウルフを、探索時間も含めて一時間で屠るという驚異のスピードでこなしている。


 クエストの依頼は三匹じゃなかったか?


 死体を回収して、ひと段落ついた。さっきまでウルフの群れに遭遇していたから息をつく暇もなかった。


「ふぅ、マスターお疲れ様」


「ご主人様、お疲れ様です」


「ああ、お疲れ様」


「そろそろ依頼は達成したんじゃない?」


 いや、とっくの昔に達成してるよ?


 なんか二人がどんどん森の奥に進んじゃうし、数過ぎてもすぐウルフ見つけちゃうし、ノリノリで倒しちゃうからいうタイミング逃してたんだよ。


「ご主人様、どうされました? 浮かばない顔をされていますが」


「具合でも悪いの?」


 いや、別にそういうんじゃ無いんだけどさ。だって二人ともめちゃくちゃウルフ寄ってきてたじゃん? 俺には寄ってこないじゃん? 注意する事くらいしかできないじゃん?


 何が言いたいのかと言うと――


「俺の出番なさ過ぎませんか?」


 そうなんです。僕だけ役立たずなんです。

 途中からもう申し訳なくって心痛かったよ。


 ウルフもウルフで俺も狙ってよ!

 ターゲットのバランス悪いんだよ!

 あれか、女の子だからか。女の子がええんか!


「ご主人様は的確に指示をしてくださっていました。そのおかげで戦いやすかったですよ。それにウルフが何故か私たちばかり狙うので……」


「こんな大変クエストやるだけ疲れるんだからいいじゃない。マスターはもっと上のランクになってから本気出せば良いのよ! それまではアタシ達が雑用でもしてるって思っておけばいいわ」


「そう言われてもなぁ。俺もちょっとは戦いたかったんだよ……」


 まぁ、Eランクのクエストなんて大した経験値も貰えないし、アリスの言うように割り切れれば単純なんだろうけど。


「まぁ、今回は諦めて帰ろう。次は俺も戦うからな」


「流石マスター。切り替えが早いわね」


「ご主人様には安全でいて欲しいですが、そう言われるのであれば従います」


 もうちょっと俺に助けを求める場面とかあっても良いのにな。

 それはそれで危険だから嫌だけど。


「俺もお前達を守られる様にしておきたいんだよ」


「「……」」


 え、急に黙るのやめてよ。めっちゃ恥ずかしいですやん。

 また黒歴史生み出しちゃったの俺。


 よく見ると二人とも顔が赤い様な。


 なんだ照れてるのか。可愛いなぁ。

 さっきまでの不機嫌な俺はもういない。二人の可愛さに夢中でご機嫌なのだ。


 俺ってやっぱり単純だよね。


「よし、今日は十分討伐したし、ギルドに報告しに帰って明日のクエストまで決めてしまおうか」


 こうしてランク上げの為の、クエスト三昧の日々が始まったのだった。

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