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030 昔ある所に······

唐突な説明会。

 ピデアルがアリスと仲睦まじく話し始めた。しかもピデアルに至っては敬語である。その光景は想像もしていないもので驚いてしまう。


「え、ちょっと待って! なんでそんなに会話できちゃってるの?! 着いていけてないんですけど」


「そうです! ピデアルもイカサマ魔術で【絶対忠誠】を得るような愚者に馴れ馴れしくしないで下さい。貴方の価値が下がります!」


 やはりエミはアリスに反発精神を持っているようだ。まぁ仕方ない事だとは思うけど。


「エミ、そんなこと言わないでおくれ。アリス様はアタシの創造主であらせられるお方だよ。正確にはアリス様の一部分を切り離しているのがアタシなんだけどねぇ」


「「??」」


 理解出来てない俺達にアリスがこほん、とわざとらしい咳払いをする。


「その件は我が説明するとしよう。このピデアルという知的魔道具(インテリジェンス・マジックアイテム)は我の頭の一部分を切り離して創り出したものだ。とはいえ、物理的に脳を切り離した訳では無い······これは多分説明しても理解できんだろうから割愛させて貰う。簡単に纏めると、ピデアルは我にとっての『貯金箱』の役割を担う魔道具といったところか」


『貯金箱』とはどのような意味だ?

 お金でも貯めて自分のモノにするつもりだったのか、いや、他人の願いを叶えることが可能な位だ。金銭欲などは無さそうだが。


「まぁ、『貯金箱』の意味はわからんだろうから説明するとしよう」


 おれとエミの『貯金箱』と聞いた時の戸惑いが顔に出ていたのだろう。アリスはフフンと鼻で笑うと再び咳払いを一つ······どうやらまたまた話に熱が入ったのか。長くなりそうだ。


「事の発端である昔話から始めようか」


「うわぁ、校長先生のお話を聞く全校集会の雰囲気を思い出すわ」


 アリスの話は脱線が多く、とんでもない時間話し続ける。ベッドで寝そべりながら聞かされたら寝れる自信がある。もうコロッと寝れる。


「こうちょーせんせーですか?それもご主人様の故郷に纏わる何かなんですか?」


「ああ、今度話してあげるね」


「おい主ら話を聞け」


 そんなこんなでアリスによる長話は幕を開けた。





 余りに長いのでなるべく簡潔に纏めることにする。


 そもそもこの知の宮殿を合わせた七つの宮殿がある。七つの宮殿はある目的のために作られた。それが『世界の均衡を保つ』ことだ。


 世界的な大飢饉が発生し、魔族と人族が争っていた紛争時代――


 かつての御伽噺にも綴られているように勇者が魔王を滅ぼし、世界は平和になった。


 しかし、平和が続けば続くほどかつての勇者と魔王の退治していた時代――つまり人族対魔族の戦時中――を体験した人々はいつこの平和が崩れるかが不安で仕方なかったという。


 そこで不死身とまで言われた魔王の復活を懸念して設置されたのが七つの宮殿。


 当時存在した六人の賢者達と一人の大賢者が再びこの世界が危機に晒される事態になると察知した場合、対抗する為の機能盛り沢山の宮殿を人数分創り上げ、そしてその時が来るまで自らを封印した。


 ただ宮殿のことを知る人間は極僅かに留めていたらしい。何故なら宮殿自体を破壊されてしまえば抵抗も何も無いから。


 しかし、誰もが知らないのでは宮殿が意味を成さない。宮殿は選ばれし者がそれぞれ担当の賢者または大賢者に指導を受けながら操作することで機能するからだ。


 よって宮殿のことを才ある者に知らせる策としてとある条件下で宮殿のことを知らせる使用にした。


 その策というのが『宮殿をクリアする』というわけだ。何でも叶う褒美はおまけだそうだ。


 仮にクリアできなくても記憶を消去するため忘れられる。

 これが脅威に立ち向かうために用意された、才ある者のみを厳選する策になる。


『宮殿をクリア』することができないようなものに宮殿の存在意義を教えると、自分の欲のために利用して逆に脅威となり得る。


『宮殿をクリア』することができる者は思慮深く、必ず世界の平和のために力を貸してくれる。


 その様な考えの元この策は立案されたらしい。そうとは限らないと思うけど。



 宮殿が創られて長い時が流れ予測していた魔王がの復活が現実となった。

 宮殿に選ばれし七名は各々の賢者ないし大賢者と共に迎え撃とうとしたのだか、此処で予想外のことが起きる。


 宮殿をクリアできる者が一向に現れない。そして極めつけは魔王が何もしてこない。


 どうやら魔族はその時までに独自の農業法の開発に成功。酪農の効率化にも着手して莫大な食料を常備できるまでになっていた。


 つまり、戦争の根本的理由であった食料不足が解決して、争う理由が無くなり平和は維持された。


 そうして、呆気なく宮殿は御役御免となった。


 そして今に至る――何とも言えない締めくくりになるがこういう流れらしい。


 此処でアリスがピデアルのことを『貯金箱』と比喩する理由だが、正確には『知識の貯金箱』だろう。


 元来宮殿を創る際賢者達はどれほどの年月を眠ったまま過ごすか検討もつかなかった。そのため、窮地を退けた暁に宮殿から出られることを条件に自らを封印した。


 封印は条件が厳しいほど威力がまし、安全も確保される。


 換言すれば『復活した魔王を倒さない限り永遠に外には出られない』ことを条件に強力な力を宮殿に宿したことになる。


 その条件で封印をすると決まった日にアリスは自らの分身である知的魔道具(インテリジェンス・マジックアイテム)のピデアルを創り出した。


 ピデアルには決して壊されないためにアリス自身の魔力のほぼ全てを預けた。


 そしてピデアルを自分の眠っている間世に放ち、様々な知識や様子を記録させ、再び回収した時に得られなかったであろう膨大な量の情報を我がものにするために。


 そうして、出られたからにはいつかピデアルを回収して魔力も元に戻し万全な状態に戻りたいと思ったアリスは、脅威を退けることなく宮殿から開放された。


 それも奴隷になって。


 俺が望みでアリスを仲間に加えるために奴隷にさせたから。そしてその方法で解放できるなんてことも設計時に思いつきもせず対策は取られて無い。

 所謂裏道ルートでアリスという人物を手に入れたというわけだ。


 そんな奴隷アリスの主人はこれまた偶然、回収する筈のピデアルを既に所有している俺だったというわけらしい。


 ごちゃごちゃな説明だがまぁそういうことだ。





「――と、まぁこういうこだ。理解できたか?」


 アリスはフフンと鼻を鳴らす。


「まぁなんというか凄いな」


「ご主人様はそこまで見越してピデアルを回収したのですね」


 ピデアルは回収したわけでなく宿の前の住人から貰っただけなんですけど。ていうか貴方も現場にいましたよね?

 なんか最近エミが俺のことを何でもできるスーパーマンの様に崇拝してる気がしてる。怖いんですけど。


「アリス様、アタシに教えてくれた設計通りならここは時間が止まっていて肉体の疲労もなく尚且つ魔力の途切れない最高の修行場所だと思うんですけど?」


「そうだ。しかも我は奴隷であり、奴隷の所有権は主人に譲渡される。つまり宮殿は主らのいや(あるじ)のものとなる。好きに使えるぞ」


 え? この広い宮殿俺の物なんすか。


「じゃぁアリス様。アリス様に戻る前にコイツらをビシビシ扱きたいんですけどいいですか? あ、もちろんアタシが戻ってもアリス様が指導してくれるんですよね?」


「当たり前だ。弟子の教え子は師の教え子。外に出てからも我が責任もって育てよう。それに記憶は我のものとなる故に、今までの訓練法に即した形で続けれるであろう」


 なんかふたりで勝手に話進めてるけど俺らどうなっちゃうの? 不安しかないんだけど。

 ふとエミを見ると


「今までの形式ならいいですね······ご主人様と今まで通り······ふふふ」


 焦点の定まらない虚ろな目をしてなにかブツブツ呟いている。


「なんかすげぇ疲れたわ」


 俺はこの後さらに疲れることになるのだが、今の俺はそれを知る由もない。

この内容(宮殿について)は先の方で詳しく出てくる予定なので、少し端折って説明してます。

ネタバレ、ダメ、絶対。

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