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026 君たちいっつもイチャイチャしてんね

気づいたら10万字を超えてました。

「それじゃ、小石を転移させるのと同じ感覚で自分自身を客観的に感じた状態でエミの前に転移してみな」


 森の奥でピデアルによる指導が始まった。

 勿論エミは賢者の石を咥えた状態での参加だ。

 飴を終始加えてるキャラになりそうなエミさん。


「【即死(インスタント・デス)】みたいにエミの座標に転移してしまった場合ふたり仲良く心中なんてことないよな?」


 もしそうなら転移なんて恐ろしくて今後使えたものじゃない。

 エミは覚悟はできてますみたいな表情(かお)してますし······俺はやだよ?


「心配ご無用!転移先での生物同士······というかある程度の魔力を持つ生物同士が重なってしまった場合は抵抗(レジスト)して地点がずれるか、最初から転移が発動できんくなるからねぇ」


「転移先は重ならない根拠は?」


「お互いの魔力の干渉だねぇ。簡単に言うと魔力を持つ、例えば人間同士が同じ空間に存在するには莫大な魔力が必要となる現象とされているんだよ。その必要となる魔力がふたりの魔力と周りの魔素を魔力ができたとしても到底足りずに起こらないってところだね」


「その瞬間に魔力を注げばその現象は起こりうるのか?」


「いや、まず無理だろう。必要量は様々な見解があるがこの世界が数十個作れちまうくらいって言われてるからねぇ」


 なら安心か。心置き無く練習できるな。


「わかった。エミ、いくぞ」


 自分を、客観的に、俺は、物体、エミの、目の前に。

 後ろから一歩引いて自分自身を見ているような感覚に陥る、と同時にできるという確信に変わる。


 ほら、アクションゲームとかの主人公を後ろから見てる感じなんだよな。


「【転移】」


 ぐにゃりと視界は歪み、体全身が液体になったような不快感に襲われる。気持ち悪い。

 そんな感覚を二十秒程味わっただろうか、気付くと目の前にエミがいた。


「あ、やべ。力、入んね」


 脱力し崩れ落ちそうになるのをエミが抱いて受け止めてくれる。

 温かい。

 顔色が悪いのだろう、エミは覗き込んで「大丈夫ですか?」と聞いてきた。


 気分が優れないので正直に少し休ませてくれと頼むとエミは嬉しそうに膝枕をしてくれる。


「一発で成功するなんて、マスターは本当に化けもんだよ」


 カラカラと笑いながらピデアルは成功を祝福してくれているようだ。


「マスターの気分が優れないのは、急激にMPを消費するのに体が慣れてないからだろうねぇ。すぐ治ると思うよ」


 そういうことは先に言ってくれ。心の準備ってもんがあるんだよ。


 まぁ、可愛いエミの膝枕がご褒美に成るならMP擦切れるまで頑張れる気がしてくるし、続けることにしよう。


「エミ、また頼めるか?」


「無理はなさらないで下さいね。せめてこうして休憩しながらにして下さい。努力しているご主人様は素敵ですが、無理をなさるご主人様を見てると不安になりますので」


 やっぱりこういう真面目モードのエミには胸をときめかせてしまう。乙女か俺は。


「ありがとな。程々に頑張るよ」


 エミの許可も降りたところで、再開しますか。




 ◎◎◎ ◎◎◎ ◎◎◎ ◎◎◎ ◎◎◎ ◎◎◎ ◎◎◎




 転移ごとのMP消費は距離によって変われど2500程であり、距離に比例して不快感は大きくなるようだが回数をこなすうちになくなっていた。


 やはり人間の順応性は目を見張るものがある。


 夕暮れ時、転移後の脱力感も徐々に抜けてきて完璧にできるようになっていた。


 エミも嬉しそうだ。自分の事のように喜んでくれる。なんて可愛いんだ。


 何だかんだエミのこと大好き過ぎて帰り道ではずっと手を繋いでいちゃつく。

 キャラは変われど俺の癒しであることには変わりないからな。


 宿に帰ると早速ステータスを表示する。



<名前> タケト=マツモト

<種族> 人族

<年齢> 17

< LV >56

<HP>31480/31480

<MP>31480/31480

<攻撃力>31480

<防御力>31480

<素早さ>31480

<命中率>31480

<会心率>31480

<魔攻力>31480

<精神力>339250

 装備:下着一式、私服一式、アイテムポーチ

 所有金額:314271エン

 スキル:【全てを見通す目】【鷹の目】【顕微鏡】【聖剣術Ⅱ】【体術Ⅱ】【隠蔽】【制御リミッター】【生活魔法Ⅰ】【回復魔法Lv.Ⅲ】【火魔法Ⅰ】【水魔法Ⅱ】【雷魔法Ⅰ】【風魔法Ⅰ】【土魔法Ⅰ】【聖魔法Ⅰ】【闇魔法Ⅰ】【虚魔法Ⅰ】【性魔法Ⅱ】【空間魔法IV】【古代魔法Ⅰ】【自学自習】【超頭脳】【暴飲暴食】【超生成】【無効化Ⅰ】【咆哮】【優等生】【自在魔法】【錬金術Ⅰ】【切磋琢磨】【経験値効率上昇】【吸収】【使役】

 固有スキル:【年功序列】

 簡易設定:【自動換金 ON】



「空間魔法のレベルはIVになってる! てか水魔法と性魔法も上がったんだけど」


「それはおそらく風呂場での特訓が原因だねぇ」


「ご主人様、原因は夜伽かと」


「なるほどな」


 確固たる根拠を真顔で提示されると納得せざるおえない。

 明日には空間魔法はマスターできそうだなと思考していると「やった!」と素に戻って飛び跳ねているエミがいた。


「ご主人様! 気付いたら状態異常が解除されてましたっ!」


「おおお! ほんとか?!」


 すぐに見てみる。




<名前> エミ・リコルレット

<種族> ダークエルフ(奴隷)

<年齢> 2896

< LV >12

<HP>2600/2600

<MP>6328/69577200

<攻撃力>200

<防御力>200

<素早さ>250

<命中率>250

<会心率>120

<魔攻力>200000

<精神力>50

 装備:下着一式、私服一式

 スキル:【火魔法IV】【水魔法Ⅲ】【雷魔法Ⅱ】【風魔法IV】【初級土魔法Ⅰ】【無詠唱】【魔法強化】

 異常状態:成長抑制(解除済:残り表示時間3809秒)、魔法使用不可(解除済:残り表示時間6554秒)、魔力枯渇(解除済:残り表示時間2795秒)



「エミ、良かった! おめでとうっ!」


「全部ご主人様のおかげです」


 自分のことのように嬉しい。

 これでエミの傷は一応は消えたことになる。表面上、認識できる範囲のみの話だが。


 愛おしいエミを思わず抱き締める。嗚咽を漏らしていたが今晩はずっとこうしていたい気分だ。

 こっちにきて色々あったがこの件に関してはエールにも感謝しなくてはなるまい。


 ピデアルには俺とエミの過去は包み隠さず教えているが、空気を読んでなのかアイテムポーチに留まるつもりらしい。

 暫くしてエミが落ち着いてからぽつりぽつりと話し始めた。


「ご主人様に出会えたことが本当に幸せです。この異常状態は治らないだろうって老婆さんに言われてから一生魔法が使えないんだって思ってました。でもやっぱり魔法に憧れてたんです。パパもママも魔法使いだって聞いていたから」


 また感情の波が来たのだろうか。いつもの元気一杯のエミではなく、触れれば壊れてしまいそうなほどか弱い少女がそこにいた。


「ずっと、辛かった······ご主人様は優しいし、私を好きだって言ってくれて、ぐすっ。私はお世話になってばっかりで······なんにも役に立てなくて、うぅ」


 彼女は必死に言葉を紡いでくる。その健気な姿をこれからもずっと守ってやろうと改めて誓う。


「私のステータスは、MPが高いから、絶対にこれから強くなります。大好きなご主人様のことを守れるくらい強く。私の残りの人生で少しでも多く恩を返すことが私の幸せだから」


「可愛くて優しい俺のエミに守ってもらうより、守りたい。だから互いの背中を任せられる関係になろう。いつも側にいて安心させてくれていることに感謝してるし、利己的な理由で助けたから恩返しなんて考えなくてもいい。一緒にいることを当たり前にすればいいだけだ」


「ご主人様、でも、でも······」


 大粒の涙を零しながら言葉を続けるエミを俺は遮った。


「お馬鹿なエミはこう考えてるんだろ?役に立つことが、恩を返すことが、奴隷であることが、俺の側にいる資格なんだって」

 

「··········」


 図星だろう。申し訳なさそうに俯いてしまった。

 以前自分を卑下するなと叱責したことがあった。それは何度注意しても直らなかったけど。


 でもそこもエミのいい所なんだと思う。


「俺は怒っているんじゃない。嬉しいんだ。エミはどうにかして俺についてこようとしてくれている。好きな人にここまで求められるのなんて初めてなんだ。毎日がこんなに幸せなんだって驚くくらいの気持ちなんだ」


「わ、私も······」


「でも嫌なんだ。好きな人だからこそ求められる理由が理屈でまかり通るようなものだと。もっと根本的に簡単な純粋な気持ちで俺を求めてくれよ!」


「でも」


「理由付けなんてしなくていい。エミ、お前のことを愛してるんだ。好きって気持ちで毎日が一杯で苦しくなるほどに。だから、エミにはこれからもずっと俺に付いてきて欲しい」


 エミは迷っていた表情から一変、覚悟を決めた顔で俺に返答した。


「私は愛するタケト様にこれからもお側に置いて頂きたいです。大好きなタケト様に尽くしたい」


「その言葉が聞けて嬉しいよ。不束者ですがよろしくな」


「私の台詞(セリフ)ですよそれ。私は尽くすと決めたらとことん尽くすタイプですから覚悟してくださいねタケト様」


「······なんか怖いなそれ。それに今のエミなら裏切らないのは分かってるから、奴隷から解放してもいい。お互い思っているのに主従の関係があるのも息苦しいんじゃないか?」


 前々からエミには幸せになって欲しい、奴隷から解放して自由に生きて欲しいと思っていた。

 だけど、エミの返答は予想と反していた。


「でも私は奴隷でいられることが嬉しい。これだけは譲れません。初めて出会った日からのタケト様との私を安心させてくれる最も強い繋がりを、絆を感じるんです」


「そうか」


「タケト様······」


 じっと見つめてくる瞳に吸い寄せられるようにして、俺達は再度誓のキスを交わしたのだった。

話が進むにつれ、徐々に行動範囲を拡げていく予定です。

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