024 くらえ必殺っ! みたいなのがしたい
目を開けるといつものようにエミが俺をうっとりした表情でこちらを見ていた。
俺が目覚めたことに気づくと唇が触れ合うだけの短いキスをしてきた。
「えへへ、おはようございます、ご主人様」
「おはよう」
機嫌良さそうに挨拶してくるエミに愛おしさを感じて軽く抱きしめる。暫くエミを感じて離すと「あっ」とエミが名残惜しそうにこちらを見た。
何処のバカップルだとツッコまれそうなこの行為はいわゆる、おはようのキスというやつだ。
この日課はエミが提案してきたもので『愛を確かめ合いつつ一日の原動力の充電をできる非常に効率的かつ効果的な行為』だそうだ。
『別に普段からべったりくっついてきてるんだから朝からそんな気恥しいことしたくない』のが俺の意見だったのだが、断ろうとするとすると「私の愚考をどうかっ!どうかっ!」や「お考え直し下さいっ!」と目に涙を浮かべ訴えてくるエミに根負けし、渋々了解した。
これが惚れた弱みというやつだろうか。
「ステータスを確認するか」
「でも本当にあんなので上がるものなんでしょうか。今更ですが」
エミの疑問は最もだ。
昨日の特訓後直ぐに確認して上がっていなかった。すると師匠は「時間が経たないと効果はでないよ」と言ってきたので朝に確認することにしたのだ。
「確かにこんなんで上げることができたら地道に頑張っている人が可愛そすぎるしな。まぁ、何はともあれ見て見ればわかることだ」
エミも見える体制でステータスを表示する。
<名前> タケト=マツモト
<種族> 人族
<年齢> 17
< LV >56
<HP>31480/31480
<MP>31480/31480
<攻撃力>31480
<防御力>31480
<素早さ>31480
<命中率>31480
<会心率>31480
<魔攻力>31480
<精神力>339250
装備:下着一式、私服一式、アイテムポーチ
所有金額:314271エン
スキル:【全てを見通す目】【鷹の目】【顕微鏡】【聖剣術Ⅱ】【体術Ⅱ】【隠蔽】【制御】【生活魔法Ⅰ】【回復魔法Lv.Ⅲ】【火魔法Ⅰ】【水魔法Ⅰ】【雷魔法Ⅰ】【風魔法Ⅰ】【土魔法Ⅰ】【聖魔法Ⅰ】【闇魔法Ⅰ】【虚魔法Ⅰ】【性魔法Ⅱ】【空間魔法Ⅱ】【古代魔法Ⅰ】【自学自習】【超頭脳】【暴飲暴食】【超生成】【無効化Ⅰ】【咆哮】【優等生】【自在魔法】【錬金術Lv.1】【切磋琢磨】【経験値効率上昇】【吸収】【使役】
固有スキル:【年功序列】
簡易設定:【自動換金 ON】
すげぇ。マジで上がってる。しかもⅠからⅡに上がってるってことは少なくともLv.1からLv.99以上ってことになる。
「エミ、これは凄いぞ。ゴブリン狩りと並行していこうと思ったけど特訓に打ち込みたくなってきた」
早く最強の魔法使いに成りたいぜ。
師匠に頼んで『僕と契約して魔法少年になってよ!!』って行ってもらおうかな。雰囲気出んじゃん?
「この成長速度を体感してしまうとその気持ちもわかりますが続けて行うのはピデアル様も効果が薄くなると言ってましたよ?」
「そうだった、唯でさえこの速度だ。これ以上を望むのはおこがましいよな」
師匠を取り出すと元気な声が部屋に響く。
「どうだい? 上がっただろう?」
「あぁ! 凄いよ師匠。だけど何ができるようになったんだ? 成長した実感がなくて」
「定着しつつあるところ悪いけど、マスターから師匠って言われるのは微妙な気持ちになっちまう。やっぱりピデアルって呼んでおくれ。ええと、マスターの今のレベルなら小さな物体を目の届く範囲まで瞬間移動させることができるよ」
「そうか、この呼び方気に入ってたんだが。了解したよピデアル。よしやってみるか」
早速アイテムポーチから消しゴムを取り出し少し離れた机の上に乗っているところをイメージした。
瞬間、手にあった消しゴムの重さは消失し、机の上に移動していた。
「できた!」
「流石です、ご主人様」
すかさずエミが褒めてくれた。
めちゃくちゃ嬉しい。確か初めて回復魔法を使えた時もテンション上がったなぁ。
こんな現象を起こせるなんて、やっぱりファンタジーだな。
「まぁ、今日の夜からはそれの繰り返しになるから飽きても頑張るんだよ。移動させて手に戻す。この繰り返しさ。まぁ、やってみな」
ピデアルに催促されて、先程までの消しゴムの重さをイメージすると······手に戻ってきた。
「なかなかやるじゃないか!」
「ご主人様、素敵です!」
ふたりに褒められてすこぶる機嫌が良くなった。
今日は最高の朝だ。
「よし、切り替えて飯食うか。いつもみたくゴブリン狩りだな」
部屋を後にして食堂に向かった。
◎◎◎ ◎◎◎ ◎◎◎ ◎◎◎ ◎◎◎ ◎◎◎ ◎◎◎
ギルドでゴブリンの討伐依頼を受けれるだけ受けて森へやってきた。最近では近場で狩りすぎたので、少し森の奥まで行かないとゴブリンはいなくなってしまった。
森の奥にはゴブリンより強いウルフ系やオークなどもいるが慣れているゴブリンの方が殺りやすい。
俺自身のステータスの能力値を見る限りではここら一体の魔物にやられることはないだろうが、面倒なので雑魚で様々な戦い方を試している。
ピデアルは武術の知識もあるらしく俺の剣術について色々とアドバイスしてくれる。
「マスターの剣使いは基本に忠実過ぎて太刀筋が読みやすいねぇ。それだとある程度の強さ以上の相手にしか通用しないかもだねぇ」
「俺は剣を諦めて魔法に全振りした方がいいか?」
魔法剣士はかっこいいと思うが、魔法が使えて強くなれれば剣を辞めることに抵抗はない。
「魔法剣士は攻撃方法の幅が広いが剣と魔法のどちらかに絞るのもいいねぇ。でもマスターには魔法剣士がオススメしたいね。マスターには将来的には魔法で剣、槍、盾、弓なんかを属性付きで創り出しながら闘える魔法剣士になってもらいたいんだよ」
確かにピデアルの言う戦い方は臨機応変に使い分けれる。
今の時期は基礎固めをしていた方が後に有利になるってことか。
「ピデアルが鍛えてくれればあっという間に強くなれそうだし、つづけることにするよ」
背後から賢者の石を舐めながら「諦めないご主人様ならきっと最高の魔法剣士になれる······」とエミの呟きが聞こえた。
うちの子は俺のことを敬拝しすぎなのでは、と突き刺さる尊敬の眼差しを感じながら思う。
「しかし魔法剣士か」
剣術だけに頼らず状況に適した魔法も駆使して自由自在に相手を翻弄する。
誰もが憧れるだけあって簡単ではない。
それはつまり、何かに特化している技に対しては及ばなくなるということ。
ちなみに今俺が形として使えるのは、回復魔法と空間魔法くらい。
「今のレベルの空間魔法を戦闘に組み込めないかな」
回復魔法は攻撃方法として用いるのはアンデッド系の闇属性に対してだけだろう。
ならもう片方の空間魔法をどうにか使えないか。
「エミ、ちょっと試したい事があるんだ。周囲にある小石を集めてきてくれ」
エミに頼むと嬉しそうに「わかりましたっ!」と返事をして走っていってしまった。
未だ魔法が使えないために手伝いができず、辛かったのだろう。
暫くするとエミが沢山の小石を両手に積んで持ってきた。
アイテムポーチの中にある小石と合わせて50個強といったところか。
「ピデアル、アイテムポーチ······じゃなくてアイテムボックス内にある物を今日の朝の範囲で瞬間移動、転移させることは可能か?」
ピデアルに問うと、
「可能だよ。ただし、アイテムボックスは空間を歪ませている点で空間魔法を使っているんだ。それもレベルIVの空間圧縮やレベルⅤの亜空間生成なんかの応用でね」
アイテムポーチの仕組みの根幹をなしているのは空間魔法だったということか。
「アイテムボックスからものを出し入れするのは元々固定された空間魔法を介して行われている。その過程を省いた魔法の干渉は普通できないんだ。それは波長の違う魔法同士で魔力の流れが乱れたり止まったりするからさ」
なんとなく理解できる。
要は混ぜるな危険ってことだろ。
「だけどその魔法が空間魔法同士なら可能なんだよ。だけど魔力の流れが変わらないわけじゃない。ギリギリ魔法が作用する程度に乱れているんだ。だからその乱れを捻じ曲げて正しい流れとして作用させなきゃならない。簡単に言うこと今回の場合は普通の空間魔法よりも相当多くの魔力を消費するって事だね」
「それだけ分かれば十分だ。サンキューピデアル」
「さんきゅー?」
礼を言うとピデアルは困惑しているようだ。
「ありがとうって意味だよ」
そう告げるとピデアルは本の羽ばたき回数を一時的に向上させた。
照れてるのか、可愛い本め。
「まぁ、違う魔法同士を合成させて強化したり別な用途で使うことも希にありますけどね」
ピデアルの説明に付け加えたエミ。
「私もやればできるでしょ」みたいなドヤ顔をしているが、可愛い。
それから数十回アイテムポーチから小石を思う場所に転移させて感覚を覚え込む。空間座標の把握のようなものだろうか。
こんなもんかと納得し、ゴブリンを探そうとエミを呼びつけるとピデアルから新たな教えを貰った。
「マスターは 【無詠唱】があるから無駄な呪文は要らないけど、何か魔法由来の名前をつけて叫ぶとイメージと結びつきやすくて、威力も若干上がるよ」
「いいこと聞いたな」
会話が終了したところでゴブリンの群れに遭遇した。
数は2、4、6……11か。
落ち着いてゴブリンたちの位置を確認する。
「動かれると面倒だ! いくぞ【即死】」
俺が魔法を発動した瞬間、ゴブリン達は全員崩れ落ちた。
俺の魔法が初めての実践で成功した。
技の名前叫びながら戦うの実は少し憧れてたんだよね。
「アハハハハ! やったああぁぁぁぁぁ!! 成功だ!」
こうも一瞬で方が着くとは愉快痛快だ。
使った魔力は如何程か。
「ステータスオープン!」
<名前> タケト=マツモト
<種族> 人族
<年齢> 17
< LV >56
<HP>31480/31480
<MP>30012/31480
<攻撃力>31480(+200)
<防御力>31480(+300)
<素早さ>31480
<命中率>31480
<会心率>31480
<魔攻力>31480
<精神力>339250
装備:下着一式、防具一式、アイテムポーチ
所有金額:313558エン
スキル:【全てを見通す目】【鷹の目】【顕微鏡】【聖剣術Ⅰ】【体術1度】【隠蔽】【制御リミッター】【生活魔法1度】【回復魔法Lv.Ⅲ】【火魔法Ⅰ】【水魔法Ⅰ】【雷魔法Ⅰ】【風魔法Ⅰ】【土魔法Ⅰ】【聖魔法Ⅰ】【闇魔法Ⅰ】【虚魔法Ⅰ】【性魔法Ⅰ】【空間魔法Ⅲ】【古代魔法Ⅰ】【自学自習】【超頭脳】【暴飲暴食】【超生成】【無効化Ⅰ】【咆哮】【優等生】【自在魔法】【錬金術Lv.1】【切磋琢磨】【経験値効率上昇】【吸収】【使役】
固有スキル:【年功序列】
簡易設定:【自動換金 ON】
見た感じ石1個あたりMP100強消費したみたいだ。しかもレベルも上がり【空間魔法Ⅲ】になっている。
「想像以上に使える魔法じゃないか、逃げるだけじゃなく攻撃にまで使えるなんて」
新たな発見にテンションMAXの俺にエミが興奮気味に話しかけてきた。
「ご主人様! あれだけの数の敵を瞬時に倒すなんて凄いです一体どうやったんですか?!」
俺が解説してやろうと口を開くより先にピデアルが説明した。
「マスターが使用可能なのは回復魔法と空間魔法。回復魔法は攻撃魔法じゃないから空間魔法を使ったってことになる。多分アイテムボックス内の小石をゴブリン達の脳の位置に転移させ損傷を追わせることで即死させたんだろう?」
「流石ピデアル。ご明察」
褒めているが、俺が説明したかったので内心不機嫌だ。
「面白い発想だし、恐ろしく強力な戦い方を見つけたねぇ。これは死体を解剖しない限りどうやって殺したのかすらわからないだろうから相当いさ有効だねぇ」
ピデアルのお墨付きになったので機嫌は直った。
「まさかこんなに上手くいくとは思わなかったよ。3発くらい外すかと思ったけど、エミとの特訓の成果が出たみたいだ」
「そういうことなら定期的にした方がいいと思いますっ!」
「時間があったらな」
エミの目が怖かったので軽く受け流す。
「でもマスター、強敵には別の方法じゃないと脳に転移させることは叶わないよ。例えば地龍みたいに体の至る所に魔法障壁を張り巡らせたような生き物も存在するからねぇ。油断は禁物だよ」
「たしかにな、ありがとう」
こうして俺は新たな必殺技の 【即死】を習得し、大満足で街へ戻った。




