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プロローグ④ 魔王少女の再旅立ち

前回のあらすじ:聖霊様の力は勇者パーティーを完封するくらい別格でした

「リース、もう起きてもいいわよ」


 突然何かが切り替わったかのように体の実感が戻ってきたが、不思議と痛みはなかった。まだ知覚鈍麻の術が効いているのだろうか?


「傷が……」

『ああ、聖剣の傷だけに結構深かったよ。出血を抑えるよう表面は直せても中はまだグズグズ。それにしてももう少し食べないと駄目よ? 胸もぺったんこ、あばらが浮き出しそうなガリガリで、術で傷を隠しても直りが悪すぎるわ』

「……気を付けるつもり」

『発育の悪い女の子はモテないゾ。世の中の男はみんなおっぱいに弱いんだから。こんなこと精霊の間でも常識よ――だから私は光の精霊は嫌いなわけだけど……』

「精霊も案外俗なのね。ついでに貴女も私のこと言えないってことは良く分かった」

『謝らないともう力貸してやらない』

「ごめんなさい」


 というか、なんでリースはずっと前からの知り合いのように精霊なんていう超常の存在と平気で話しているんだろう。なんか凄く距離が近いし、それこそ彼女の言った隣人くらい近いが、本当にずっと隣にいたのだろうか?

 隣にいると言えば、フォンも1年くらい前にリースにそんな約束してくれたっけ? 勇者にパーティーから出ていけと明言された時点で、国に掛けられた契約の呪いも解けたわけだし本当にそれに縋ってみてもいいかな?


『私たち精霊はいつだって貴女達をすぐ傍で見ているわ。まあヒトという種族は滅多にこっちを向いてはくれないけどね』

「さらっと心を読まないで――というかそれが読めたならもしかしてフォンの顔も」

『ああ、あの黒髪のイケメンがフォンっていうの? ちょっと美化掛かりすぎてない? 私あの子にも憑いてるし、良い男だと思うけどそこまで絶世の美男子ではな——』

「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

見るなああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


 荒野のど真ん中で近隣の魔獣たちさえ脱兎のごとく逃げ出すような咆哮を上げたが、姿の見えない闇の精霊はそれでもケラケラ笑っていた。リースが念写したフォンの姿絵を抱きしめてベッドの上でゴロンゴロンしたり、ちゅーしようとしたりとかそんな人の黒歴史全部を見ておいて笑っているとは人が悪いにもほどがある!


『そりゃあ私は人じゃないからね。思った以上に可愛くて、そのドロドロとした感情はとっても美味だったよ。鳥肌が立つくらいだ』

「肌なんてないくせに」

『まあそう言わないでよ。さて、これからどうするの?』

「とりあえずこのまま野晒しにしたら勇者たちが追い剥ぎにあっちゃうから埋めるわ」

『こいつらの貴重品はどうするつもり?』

「別に私は何も欲しくないからこのまま置いていくわ。取り返しに来られても面倒」

『無欲ね。そういう時は要らなくても一番高価な物を頂いていくものよ?』

「勇者の聖剣なんてあっても使い道ないし、まとめて埋めることにするわ。大地よ、我が願いに応えて隠し宿をお貸しください――地下壕アンダーグラウンドシェルター


 大地の精霊の力を借りた簡易的な避難場所作りの土術で勇者たちをとりあえず隠しておいた。半日は目覚めないだろう眠りのさ中で、追い剥ぎや夜盗に狙われたらおそらく勇者の聖剣も持って行かれる顛末が予想出来てしまうからだ。


『・-・』

「闇の精霊さん何言ってるか聞こえないです。もうちょっと近くで話してください」

『どうやらリースが昏い恋や諦観にまみえている時、私を求めた時にしか私の声は聞こえないらしいわね。そして他の属性の精霊の力を引き出しているときは、私は弾き出されてしまうと』

「なら好都合です。いつも誰もいないところで話してたら頭のおかしい人です」

『対人コミュニケーションダメダメな癖に精霊に対しては強気だね。そんな両極端なコミュニケーション能力で彼 にはどんな風に接するつもりだい?』

「そんなこと、精霊さんには関係ないじゃないですか!」

『いやいや、私は君の思慕と恋路の行方を捧げものとして待っているのだから、気になるのは当然だろう。で、行くんでしょ? 居場所も目星付いてるんでしょ? 私そこまで読み取れたからね?』

「俗な精霊ですね。少し離れててください」

『分かったよ。さあ飛ぼうかリー――』


 闇の精霊は何か言いたそうだったが、風の精霊の遺物と言われる箒にまたがり空中に乗り出すと、その声は聞こえなくなった。風術の魔力生成が闇の精霊を弾き出したあたり、どうやら彼女が言ったことは本当らしい。

 とりあえず目指すは中央のミトラード王国の冒険者ギルド。おそらくは今も彼が所属し、戦う者として研鑽を積んでいる場所だ。確証はないけど、リースにはそれが分かった。


次回から主人公登場です

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