圧倒的
その差は歴然だった。
どうあがいても、これは埋まらないものを感じる。
手野武装警備の演習観戦武官として、とある国から派遣されている。
相手は全世界の国軍の頂点の米軍だ。
それも陸海空の3軍に海兵隊も入っている。
なのに、米軍が相当押されているように見える。
今回の演習は、白軍と紅軍の2つに分かれて行われることになっている。
年1回、だいたい9月ぐらいにある恒例の実弾演習だ。
実弾ということもあって、本格的な戦闘ができる。
実戦と違うのは、フルフェイスヘルメットや、装薬量を減らした弾を使っているなど、少なくとも互いに死なないようにしているということだろう。
あとは、当てる場所も決められてはいるが、実際故意ではなければどこに当てても問題はないという暗黙のルールがある。
コイントスによって白軍、紅軍が決まると、2日かけてそれぞれの陣地が決まる。
今年はアメリカ本土のアメリカ陸軍基地で初めて行われることとなって、海の見立ての湖や山、草原、砂漠がある。
ここを縦横無尽に進み続けることができるということだ。
総指揮官は米軍は大将格、手野武装警備は元帥同格の武装社長が務めることとなった。
地元なら、負けはしないだろうというのが米軍の目論見だったのだろう。
演習は初日に観戦武官にその全ての状況が報告される。
条件を実戦に近づけるためとして、初日から終了まで、米軍と手野武装警備の一切の公式な接触はない。
ただし、降伏勧告、降伏通知、非常事態宣言に基づく演習の中止といった通知を行い、一時中断することは認められる。
降伏したらその時点で終わり。
中止ならば12時間ごとに中止期間が設定されて、その間の一切の戦闘は不可となる。
3日目に白軍、紅軍が一斉に動き出す。
ここで使われるものは実物ということもあって、ミリオタには観戦チケットが闇で転売されることもある。
抽選倍率は約500倍、それも1席十万円はするが、用意されていた450席は1分かからずに完売した。
なお、観戦場所は民間人ということで、設置される国際センターで一般取材陣と同じように見るだけだ。
特別取材陣や観戦武官はさらに近く、指揮しているすぐそばまで近づくことができる。
そしてなにより、伝説の武装社長の本格的な指揮を執る光景を目の当たりにすることができるのが特権と言えるだろう。
「……ではそのように。衛星繋げ、敵の進む方向が知りたい」
「はっ」
武装社長の発言で、兵がどんどんと動いていく。
各部隊を率いる部隊長や、その下で働いている司令部員らが、武将社長の言葉を待つことなく、忙しそうにしていた。
「空襲を仕掛けるぞ、空は大丈夫か」
「はい、いつでも可能です」
特別に滑走路から敷いた空軍部隊は、命令されてから3分後には出発していた。
「遅いな、2分で済ませるように」
「わかりました」
「うちらはお客さんだ。だが、客人だからと言って、大人しくしていなければならないということもない。はじめから全力でしないと、相手に失礼だからな」
武装社長の意向もあって、まったくもって話にならないような戦力差で、一斉に襲い掛かった。
湖には持ってこれた小型戦艦を3隻並べ、それから上陸作戦用の艦砲射撃を開始。
上空からは爆撃隊による絨毯爆撃を敢行。
地上で相手が右往左往している間に突撃。
そもそも爆撃や艦砲射撃をしている間に突撃をかけるという無茶な動きをしているように見える。
ただ、隊列が乱れたのもその通りで、作戦としては成功なのだろう。
米軍も物量作戦で押していこうとしているようだが、それもどこからか見ているのか、ピンポイントで攻撃を受けて止まっていく。
「降伏勧告を」
武装社長が9割がたを行動不能に追いやったうえで宣言する。
軍使が立てられ、すぐに米軍総指揮官のもとへと向かう。
1時間後、降伏を受け入れることを回答した。
演習後、酒宴が催されることになっていた。
立食パーティの形式のその場で、武装社長と話をすることができ、あの作戦について質問する機会を得た。
「突撃することがすべてといった形に見えましたが」
「それがすべて、とは思っていませんよ。ただ、相手は物量で攻めてくることが、まず前提となる。そのうえでの頭脳です。ならば、その物量を生かせるような状況でないうちにたたかなければならないのですよ」
「それが、あの作戦だった、ということですか」
「ええ、まさに」
それで、確かに勝った。
ただ、次は勝てないだろう。
そういった一発勝負の作戦を駆使して、武装社長は戦後の長きにわたって手野武装警備を維持し続けてきた武装社長の手腕はさすがの一言に尽きる。
「いい演習を見させていただきました」
「こちらも、そのように言っていただけてうれしく思います」
ニコッと微笑んでいる武装社長は、確かに力がある。
それがはっきりと理解することができた観戦だった。




