2.5 不機嫌なウサギ22
「ひゃ、あ、あーんまーまぁ~」と言いつつ御機嫌で笑って居る赤ちゃんを竜王様が抱っこしつつ、私はお夕飯中です。
時々赤ちゃんに「あーん」してご飯を食べさせて居るのだけど、イヤイヤされてしまって困惑中。
この子あんまり食べないのかな?と思いきや、竜王様曰く「最初のうちは数回しか口にしないから、欲しがる時だけでいい」とのこと。地の精霊さんだから、始めのうちは大地から栄養を得るのであまり必要では無いんだって。でも今の火の精霊さんであるフローさんは物凄い大食いで、マルティンさんの手までかじる勢いで食べてたらしいから様子を見ながらなのだとか。
固体差ってやつなのかな?
そうそうこの赤ちゃん、やっぱりと言うか何と言うか、【おへそ】がありませんでした。元々大精霊と言うと、母胎から誕生しない為におへそは無いと絵本で得た知識でオムツを替える時に確認したのだけど、ほんと~に何も無かった。
そう言えば竜王様も無かったよ…う…………な?
…うん、今度ミトラさんに聞いてみよう。
竜王様に聞くのは少し間を開けてからにしようっと。そうじゃないとお風呂の件思い出しちゃうからね。
ちょっと避けたいかな。
***
「竜王様、赤ちゃん抱っこしますよ?」
竜王様ごはん食べられ無いでしょ?と言うと、「いや、先にレインが食べてから」と譲らない。
むぅ。
こうなると譲らないからな~…竜王様って意外と頑固な所があるし。仕方無い、先に食べちゃおう。もぐっと小魚のフライを口にすると、「あーあーー!あーんっ」と土の精霊の赤ちゃんが口を大きく開けてきた。
「え?食べるの?フライだけど大丈夫なの?」
ずっと口を開けて「あーんっ」と言ってる赤ちゃんの顔色を伺うと、
「レイン、衣をとって少しだけあげてみて。多分この子は食べるから」
と竜王様に言われ、衣と小骨をナイフとフォークで(汚くなっちゃったのはゴメン!)頑張って取って、
「はい、あーん」
とあげると、嬉しそうにハムハムと口をモグモグしながらたべて(この赤ちゃん、既に乳歯が生え揃ってて吃驚した)、また「あーんっ」って口を開いた。
「おかわりかな?」
「ふむ、この赤子は魚が好きなのかもな」
その後もせっせと小骨を取りつつ上げてると、横でマミュウさんがスッと来て、小魚の小骨と衣を全て綺麗に取り除き、私が赤ちゃんに食べやすい様に整えてくれた。
「マミュウさん有り難う」
御礼を言うとマミュウさんはニッコリと微笑み、後ろに下がる。
は~…凄いなぁ、プロだぁって思って居たら、キーラちゃんがキラキラした目でみてる。
マミュウ先輩流石ですって。
先輩かぁ、何かいいな。
等と思いつつも赤ちゃんに餌付けじゃなかったごはんをあげてると、少し慌てた様にマルティンさんが食堂に入って来た。
「御主人様、先日の件で…」
「緊急か?」
「それほどでもありません」
「…ふむ、ここで話してもいい範囲で頼む」
「はい」
赤ちゃんがどうやらお腹が一杯になったらしく、イヤイヤと首を振り始めたので口の回りを拭うと、マルティンさんの方を向く赤ちゃん。
…お話聞いてるのかな?時々首を傾げたりしてマルティンさんに「う!」と言ったりしてる。
「大統領から国中に『土の精霊が誕生した』と発表がありました。明日から一週間城下街と首都は祭り騒ぎとなります。更に今夜と最終日は花火が上がるようですよ?」
此処からだと綺麗に見えますよ、特に屋上はおすすめします。御嬢様とデート如何ですか?ってマルティンさーん…
チラリと竜王様を見るとニッコリ微笑まれた。
う、うん。…私から誘ってみようかなぁ?
「それと御主人様、先日迄調査に向かわせて居た一族の者達が帰って来ました。やはり南方の端の島国に、魔物の独自の国があるようです。魔人と、もしかしたら魔王の可能性があります」
いずれもまだ幼い気配ですが、今後不味い様なら摘み取るべきかと思われます。勿論敵対しないなら距離的に放置の方向でも大丈夫でしょうが、如何しますか?って何かちょっと物騒な話がっ!
「めっ!」
って赤ちゃん?
マルティンさんに急に手を伸ばして振って、「めーっ!」って?
「だ、そうだマルティン」
くつくつと笑い出す竜王様に私とマルティンさんは二人で「?」となり、私は私で小首を傾げます。
「この赤子が駄目だと言ってる」
んーと?赤ちゃんが?
「御主人様?この子が大丈夫だと言ってるのですか?」
「恐らく。勿論直接見に行かねばならないだろうが、それにその魔王気になるな」
またくつくつと笑い出した竜王様にいつの間にか来たのか、先程までベルちゃんだった黒猫さんはアドニス様になった様で、
「まだ魔王前でないか?感知しないけど」
「かもな。でも見過ごせないだろ?」
「まーなぁ、敵対する魔王は全て葬ったか月に送っちまったしな」
…ぶ。物騒なお話再びっ!ってこの人達だとそうでも無いのかな?とても赤ちゃんが居る前で話す言葉とは思えないけど。
「レイン」
「はい?」
「近いうちに見習い達と共に城下町へ行こうか。祭みたいだろ?」
「いいんですか!?」
「竜ちゃん、お嬢ちゃん大丈夫なのか?」
「どの道南にはこの地の精霊を連れて行かないと不味いだろうし、訓練を兼ねてかな。それに赤子をあやすのは一番懐いてるレインがいいだろ?」
そんなこんなで渋るアドニス様も行くと言うことで、私!古城からやっと外に出れるらしいですっ!わぁあーーい!
「その前にレインは貨幣価値と数字と計算、それと魔法だな、覚えられるだけ詰め込もうな?」
「はいぃ…」
鬼ぃっ!って叫びたくなったのは秘密です…。
赤ちゃんの名前、何にしよう…(^^;
尚、竜王の顔の紅葉は食堂に入る前に治療し、消したようです。紅葉があるままでマルティンに見付かると、二人で不毛な眼下の接近戦が始まる確率が…。
ゲップの件がおかしいので削除。
大精霊は基本乳児用のミルクは接種しない。早々から固体を接種している模様と言うことで。




