餌、…餌?
□■□注意□■□
この話は今までのノンビリした雰囲気は崩壊、スピンオフ先に関わった話しが出てきますが、特に気にしなくても大丈夫です。
スピンオフ先はスルーしても単独で読めるように努めて行きますのでご安心下さい。
(ちょっと読むと安心かもしれませんが、各自の判断に任せます(汗;))
?
あ、いや、えーと…
私は混乱してた。
私は餌だよね?
竜さんの前で肢体投げ出して、お腹出して。
ううんと、それからーー?
ちょっと、いや、あのそのっ、かなーり失敗して粗相をしちゃって。移動して湖で洗われて、で。
ーー…
怪我した足にタオルが巻き付いて、それから。
それからーー…
犬歯のお兄さん、何故泣きそうな顔して居るの?
何故私の脚擦ってるの?
脚、おかしくなってる。
変な方向に曲がってる。
もう跳べないね、私の脚。
ほんとの餌になっちゃうね、私。
知ってるの。こんなになっちゃうとね、私達草食獣は肉食獣からもう逃げられないの。ごはんになっちゃうんだよ。
それでね、ええと、つちにかえるの。
ほねはのこるかな?
おとうとはみてくれるかしら?
ここ、けっこうおくちだからむりかな?
おとうと。おとうと。
わたしのかわいいおとうと。
おかあさんがおっきなもんすたーにたべられちゃって。
おとうさんは、わたしたちをかばって…
それからずっとふたりで、いっしょだった。
なかまたちもいたけど、きょうだいはわたしたちだけ。
だいすきだよ、わたしのかわいいおとうと。
あなたはながいきしてね。
アタマがくらくらする。
あついなぁ……
『久しぶりだの、水の』
『ふむ、怪我から来る熱なのじゃ』
声が聞こえる。
知らない人の声。
『怪我はこれでよい、あとは熱が下がるまでゆっくり休ませるのじゃ』
女の子みたいなキーが高い声。
鈴が鳴るような可愛い声。
いいな、羨ましい。
ちょっと目を開けると、可愛らしい薄緑色の上着を羽織って、白色のドレスを着てる。
あ、羽根。
蝶々?わぁ…凄く綺麗。羨ましい。
金色の輪分が煌めいて、幻想的。
ちょっとドワーフさんより小さい人だけと、次生まれ変われるなら人の形がいいな。
それでね、ええと…
弟を探したい。
生まれ変わってたら私、今より小さいかな?
ふふ、また弟より小さくなるかな?
でもね、伝えたい。
大好きだよって。
だって最後テイムされちゃって伝えられなかったから。
うん、でもわかってるって思う。
あの子は頭がいいから、私が言わなくてもちゃんと私が弟を大事に思ってることわかってる。
でもまた「お姉ちゃん」って言って欲しいなぁ……
嗚呼でも、出来たら。
好きな人が欲しい、な…
ふふ、このお兄さんみたいにおっきくて格好良くて、大きな手の人がいい。
ウサギの手じゃ守りたくても守れなかったから……
「ぴ、ぷ…」
『ふふふ、よく寝ておるの。おまけに姉弟そっくりじゃ』
つんつんと桃色の鼻をつつくと「水の」が凄い形相で睨んで来る。こやつ、産まれた時から相変わらず威嚇が激しいのじゃが、ま、わらわには効かぬ。それはこやつにも解っとるしの。
わらわは産まれてから『順位的には』二番目で、「水の」は五番目。
力の順位が違う。
『面妖じゃの?のう水の。これで最古の番はほぼ、この子らの種族ぞ』
「邪神の奴、最弱に移したか」
『厭らしいアヤツならではじゃな。ほんに厭らしい』
「光と闇は見付かったか?」
『奴等は警戒心が強いからの、わらわでも数千年会ってはおらんのじゃ。まあでも、糸口は見付かったかも知れぬのじゃ』
「む?」
『追々わかるじゃろ。それより、貴族ウサギはこの子のみかの?』
「探したが他は見なかった」
『ふむ。それにしてもこのグリンウッドの東の国寄りは酷く土地が窶れて来たのじゃな。そろそろ御主の役目は終わりかの?』
やつれ?
ふいっと周囲を見ると、土だけで何もない。
草が何もない。
…ああ、土地が枯れているのね…
「もう、何も産み出さなくなってしまった」
『ならば良かろう、主の役目は終わりぞ?もうこの土地に縛り付けられはせぬ。好きに生きよ』
威厳に満ちた声が聞こえる。
神様みたい、不思議な声ね。
「東の和の国の戦争が始まるのか?」
『わらわには預かり知らぬこと。…とは、言えぬのかも知れんのじゃな、困ったことに。わらわの盟友が関わるかも知れぬし、この子の弟が関わるかも知れぬのじゃ』
ーーえ?
餌、吃驚っ




