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2.5 不機嫌なウサギ9

 竜王様の事はマルティンさんにお願いし(と言っても私が居ても何も出来ないのですが~…)、音がしない様にドアを閉めて竜王様の御部屋を後にし、何故か『うさちゃんの部屋を見たいのじゃ~っきっとかわいやのぅ』と言って付いてきたミトラさんと共に私の部屋に入ります。


『可愛いらしい部屋じゃの~♪ふぉっ!ウサギのヌイグルミじゃっ!』


 あっと言う間に琥珀色のウサギに抱き付き、『はぁうっ!ふかふか~堪らぬのじゃ~♪』とゴロゴロ擦りよってます。

 あの、そのヌイグルミ竜王様からの贈り物だから大事にしてね、あんまりスリスリしないでね、私の宝物だからね?とはその様子を見て居たら言えず………

 ヌイグルミ抱っこしたい。

 ぐっと我慢し、御部屋に入った辺りでお茶の支度をしてくれたマミュウさんからカップを受け取る為、ソファーに座ります。

 途端に、にゃーごーっと黒猫のベルちゃんが足元に来てくれました。あれ、アドニス様は?何時もならこの時間帯はアドニス様に中身がなって居るのに今日は違うのかな?


「ベルちゃん、今日はずっとベルちゃんですか?」


 うにゃーんと一声鳴き、スリスリ足に擦り寄って来るので抱っこをすると、


『うぬ、ぬ、ぬぅ…羨まし、ベルめ、妾と替わってたも!』


 ヌイグルミをそっとソファーに置き、ミトラさんがビュンッと言う音を立てて飛んで来た途端、ぺちんっと…


『おのれベルぅぅうっ!酷いのじゃぁあ!』


 ベルちゃんの尻尾に叩き落とされたミトラさんが床で『可愛いにゃんこにゃんにぺちんっと!でもかわいやのぅ!でもぺちんっと!はっ!もしやこれは可愛いは正義の試練っ!?でも痛いのじゃがぁ~!』と転がってました。

 ううん、竜王様の御兄弟って変わってる人多いですよね……





 ***





 マルティンさんと竜王様の許可が降りたと言うことで、始めての古城の敷地内ですが、【お庭】に来ました!

 とは言っても玄関のすぐ横なんですが。勿論すぐ横と言っても広い。でも、お外です!しかもお日様を外で見るのは久し振りです!は~…新鮮な空気、気持ちいい。陽射しも暖かい、ついついもうウサギじゃないのにお鼻がヒクヒクしちゃいます。きっとウサギ耳があったら御機嫌で耳を立ててしまいそうです!

 そして綺麗なピンクや白い薔薇等が沢山咲き誇ってて、周囲に小さな精霊さんがちょこちょこと飛んで居ます。


「ミトラさまぁ~」


「ひゃーうさちゃんが居る!」


 と、周囲を飛んで居て可愛いです。ザジ先生がちょっと苦笑してるけど、何故かな?と思って居たら、


「ミトラ様でしょう?彼等をここに入れたのは」


『うむ、警護じゃ。うさちゃんを狙ってるアホぅが居るのじゃ。じゃからウチから少し、癖があるが腕のいいのを連れて来たのじゃ』


「癖ってひっど~いっ」って言う声が聞こえて来ましたが、ミトラさんが『癖の無い者などおらんじゃろ?』と言うと「確かに!」って言う声。そ、そう言うものなの?

 ええと、ひーふーみー…ん~8人?位の精霊さんが飛び交って居て、蝶々の羽根やら蜻蛉やら、鳥の様な赤や青や黄色の奇抜な色彩の妙な羽根を持った子達が大きく羽根を広げ、


「1号!ラスタ警備係がんばる~っ」


「2号!アレイスタ!警備は任せて、うさちゃん御勉強頑張って」


「3号~ゼロ、ふぁいとぉ~いっぱ~つ!」


「4号っす!ウイルっ見廻りしまっす!」


「五号でーす!ルーナは頑張る!けーびやるぅ!」


「6号。ヴァレリ!女の子です!恋人熱烈歓迎募集中!んで、任せて!」


「なーなーごー!エルマンノ~しゅわっちっ!」


「8、号、ガレ、じょわっ!」


 何か違う感じの声が聞こえたけど、多分了解って事かな?と言うか、エルマンノさんとガレさん、何で昆虫みたいな顔の白いお面頭の横につけてるの?


「うわ、凄い数の精霊…」


 警備に来たイーサンさんが吃驚して精霊さんを見てます。横に居たアンバーさんも驚いて居ましたが、「可愛い」と呟いてます。

 何でも普通は1~3匹が稀に居るけどそれ以上は中々居ないのだとか。それでもこの国だと他所の国よりも遥かに多く、目撃出来るのだとか。

 それ言ったら先日の襲撃の最はもっと多かったのだけどと思ったら、ミトラさんが『精霊女王の妾が呼ぶからの、それにこの古城は竜王の拠点だからの、妾達精霊にとって居心地の良い場所じゃから普通から周囲によく居るのじゃ』と教えてくれました。ちなみに普通は結界があって中々入って来れないのだけど、今回はミトラさんが精鋭を8匹程連れて来て、警護に当てて居るとの事。

『竜王がアレだからの』だそうです。


「確かに凄い数の精霊ですが御嬢様、授業を始めますよ」


「はい!」


 まず手始めにと、予めザジ先生は私がまだ文字の読み書きが不得手と聞いて居たらしく、持ってきて居た本とノートは開かなくて良いですよといい、お庭に設えた椅子とテーブルに座ってザジ先生のお話から始まりました。


「いいですか、まず簡単に…」


 この世界の人や動物の身体には個人差や与えられた力により差はあるけど、どんな人や動物にも多少なりにも魔力があると言う事。そして、ザジ先生曰く私には竜王様と第一番目の太古の精霊、通称精霊王の加護が与えられて居ると言うこと。また左腕にある女神様の腕輪にも加護があるらしいです。


「腕輪の加護はよくわかりませんが、きっと御嬢様にとっていい物なのだと思います」


 と、ザジ先生が言ってました。

 う、うん。この腕輪のせいでいい物なのかどうかは兎も角、結構大変な目に合ってると言う宣言は出来ると思う。少なくともこの腕輪をしなかったら、理性の箍が外れた竜王様に襲われてキ、キスしてなかったろうし…思い出したら急に顔が真っ赤になってしまいました。ザジ先生が「御嬢様?」と不思議そうにしてましたけど、あの、覗かないで下さい~~っ!心配なのは分かりますけどっ!あ、マミュウさんがスッと音も立てずに私とザジ先生の前にハーブティーを置いてくれました。

 助かりましたマミュウさん!

 流石です!

 アップルミントのハーブティーかな?これ好き。

 爽やかな匂いに林檎の香りがほんのりとして、口に含むとミントの刺激が口に広がってサッパリする。

 わあっ、オットーのお手製のクッキーだ!マミュウさんが目の前に置いてくれました。それを一口…はにゃん~蜂蜜レモンクッキーだぁーっこれも好き!相変わらず美味しいなぁ、何時か作り方教えて貰えないかな?旨く出来たら竜王様に食べて欲しいなぁ…

 御茶を飲んでクッキーを食べて、幸せ~って頬が緩みまくって、気が付いたらザジ先生がクスクス笑ってました。

 あれぇ?


「御嬢様は可愛いですね」


『そうであろう?妾のお気に入りじゃ』


 フフフフフと笑うミトラさんは兎も角、何でザジ先生まで微笑ましくしてるんでしょ?


『おおそうじゃ、マルティンにも聞いてると思うがの、うさちゃんは妾の弟、竜王の恋人じゃから気をつけるんじゃぞ?』


 ぶっ

 御茶を少し吹いてしまいましたっ!

 ってこ、恋人って…


『なんじゃ違う言うのかの?あんなに愚弟である竜王が、人目も憚らず迫って好き好き攻撃しとるのじゃが…我が弟、以外と不憫な奴だったのじゃな…』


「ち、違っ…違わない?あ、えと、そのっ」


 ワタワタしてるとミトラさんが、


『むぅ、違うと言うのかの?ではうさちゃんは誰が好きなのじゃ?』


「ええっ?」


『他に居るのかの?まさかマルティン?』


 ブーーーッ

 って、背後に居たマミュウさんが珍しく吹き出してます。って違うから!私マルティンさんは好きには好きだけど、何か違うから!

 するとコホンッと言う咳払いをザジ先生がし、


「ミトラ様、授業中ですので女子会は終わってからお願い致します。それとあまり御嬢様をからかわない様にお願い致します」


 か、からかわれてたのかぁ、そ、そうだよね。

 で、でも竜王様の恋人…かぁ。私違うよね?番ですし。似たようなものなのかな?ええと、出来たらその、なりたい、なぁ…


「御嬢様、赤面してる所申し訳ありませんが、授業続けますね。マミュウさんも大丈夫ですか?」


 と、言われたのでマミュウさんを見ると真っ赤ッか。何で?どうしてお顔赤いの?するとミトラさんから小さな声で、


『むぅ、マルティンめ。マミュウに手を出しておったのじゃな…』


 と聞こえ、益々マミュウさんが赤面して小さくなって居りました。

 …何があったのでしょうか?何時か機会があったら教えてくれないかな。


 それから少しの間授業と言うお話をし、最後にザジ先生から提案がありました。


「御嬢様は攻撃系の魔法は向かない様ですね。少し手を触れてもいいですか?適性検査をしますので」


 恐らく普通の魔法では小さな威力しか出せないだろうけど、少し調べて適性を探るとの事で右手を出しました。

 そのすぐ側にミトラさんが飛んで来て、


『調べなくとも解るのじゃ、うさちゃんは草木の作用と召喚じゃの』


「そうなのですか?」


 ザジ先生が驚いてます。


『うさちゃんは愚弟のせいで我等に近いからの。それとザジよ、迂闊にうさちゃんに触れるのは、うさちゃんが許しても妾が赦さぬぞ。御主の命の為じゃ』


 と、クイクイと人差し指でとある方向を指差しているのでそちらを見ると……


『流石愚弟、アホぅじゃ』


 竜王様、窓越しから物凄い殺気が籠った目で見詰めてます。

 もう起きて大丈夫なのかなぁ。

 身体に障らないかな。


『うさちゃん、あの愚弟ほっとくと彼処から離れぬ。何か声を掛けてやってくれんかの?』


 離れって、竜王様…。あ、こっちじっと見てますね。うーん声、声、ねぇ。何をいいましょうか?悩んで窓辺に居る竜王様を見詰めたまま、こてんっと小首を傾げたら窓から急に離れて行きました。


『あやつ絶対悶えとるのじゃ、スケベやからの。ほれ、窓辺にマルティンが飽きれた顔をしておる。アホぅじゃ』


 うーん、そうなんでしょうか?

 首傾げただけなんだけどなぁ。



ウサギは授業なので、ウサギのヌイグルミを持って行きたかったけど、汚したく無いからと我慢しました。

作者としてはヌイグルミをむぎゅ~として欲しかった(笑)。

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