子ウサギは竜王様に甘え倒したいっ!21
翌朝早朝。朝御飯を食べた後、マミュウさん監修で初めて古城のキッチンの隅の方を御借りして、チョコレートを湯煎で溶かして苺やバナナ等の果物に付けて冷まし、ラッピングを頑張って習いながら飾りつけ、竜王様用のチョコレートを作りました。
どうせならと少し多目に作ってアドニス様(奥さんの分もです)夫妻の分と、マルティンさんとマミュウさん用のチョコレートも作り、まず最初にマミュウさんにプレゼントしたら、マミュウさんがお礼を言った後に「アドニス様とマルティン様の分は私がお渡ししますから、御嬢様は御主人様に渡しにいきましょうね」って。そうじゃないと竜王様嫉妬するからって。
…そうなのかな?
渡す時にどうせならと少しおめかしし、可愛い白いワンピースと少しだけ色がつくリップを塗ってお仕事の休憩中に渡しに行ったら、
「マルティン、この後の仕事明日に持ち越せないか?」
と言ってマルティンさん困らせていましたけど、何だかマルティンさん笑ってました。
何でかな?って思ってたら、
「御主人様のこの様な我が儘等、産まれてから数千年ありませんでしたから」
何だかマルティンさん、昔を思い出したのか遠い目をして懐かしんでいるみたいだけど、良いのかなぁ?
でもマミュウさんが紅茶を入れながら竜王様を…あれ?睨んでる?
「御嬢様に【昨夜】みたいな事したら…ワカッテマスヨネ?」
マミュウさん、アドニス様に聞きましたよ?って言ったら竜王様肩がびくって。いつの間にか足元にアドニス様も来ていて、竜王様睨んでる?
「竜ちゃん、本能に忠実過ぎると嬢ちゃん成長するまで隔離スルケド?」
「止めてくれ…」
まぁ竜ちゃんと嬢ちゃん離ればなれなんてやったら世界崩壊させるだろうから出来ないけど、とか何とかアドニス様がぶつぶつ言ってたけど、崩壊は無いと思う。暴れるとかはしそうだけど(主に私がね!)。
何かアドニス様、「それでなくても竜ちゃん光源氏計画実行中だしなぁ」ってゲンナリしてたけど、それって何でしょね?
***
「はい、あーん」
「レイン、ちょっと…」
さっき作って来た、チョコレートを付けた苺を竜王様の口元に持って行ってます。
でもなかなか口を開けてくれない。
ぷく~と頬を膨らませ、「む~」と言って睨みつけ、
「竜王様何時も私に食べさせるじゃないですか。だからたまには私もやりたいんですっ」って言った後に「耳、サワリマスヨ?」って脅してみたら、
「た、食べます」
「えへへ~んじゃ、はい、あーん」
竜王様の口にチョコレートがついた方の苺を入れます。大きい苺だったから一口だと無理だろうなと思っていたら、案外平気だったみたいで竜王様ってば私の指までパクり。
ビックリしてたら、
「美味しい」
って。
嬉しいなぁって思ってニッコリ微笑んだら、「もう一個欲しい」と言うからまた「あーん」ってしてあげたら、今度は躊躇なく口に入れて、
「ぴにゃっ!」
今度は私の指をわざと見せ付ける様にペロリ。
慌てて手を引っ込めたら、小さな声で「レイン可愛いっ」って聞こえたけど、竜王様、竜王様、後ろ、うしろ。アドニス様とマミュウさんが仁王立ちしてます………
「竜ちゃん「御主人様」ホドホドに」
「…はい」
***
『今日はまた、随分と甘えてたのぅ?』
「そうね」
クスクス笑っている姉上達、ザアファラーンとミトラはザアファラーンの膝の上に乗っているアドニスに聞き、先程の私とレインとの事を話題にしている。正直居づらい。ちなみにレインはマミュウを先生にし、別室にて読み書きの勉強中だ。
その際、チョコレートのお礼として買っておいたウサギのヌイグルミをプレゼントしたら(部屋にリボンだけ付けて置いていたから、プレゼントするのバレバレだったろうな。失敗したな)、喜んで二つとも抱えて行ったと思ったら少ししたら戻って来て、赤い目の方のウサギを私に渡し(ヌイグルミのウサギの首にハンカチが巻かれて居るのは何故だろうか)、「私の代わりに竜王様の側に置いてて下さいね」と。
可愛すぎる!!
『それにしてものう、御主』
「何ですか」
身長が40㎝しかないミトラ姉上の為に特別製のカップ(人形用に見えるが)にマルティンがハーブティを淹れる。今日は確かアップルミントの葉のハーブティだったな、林檎の様な甘い香りが漂う。
…レインも飲むだろうか。
『…始終御機嫌なのじゃな』
ニマニマと笑われ苦笑する。
「産まれた時以来だったもので」
『何がじゃ?』
「…秘密です」
『む?まあ、御主が嬉しそうだから良いがの』
と言って不思議そうにしているミトラ姉上の横には柔らかく笑むザアファラーン姉上。…恐らくザアファラーン姉上は知ってるな。
嗚呼、マルティンもか。
ずっと昔。
この世界が出来たばかりの頃の…
邪神が改悪していると知らなかった頃の、優しい思い出。
ザアファラーン姉上と第一と第三と第四とマルティンと…小さな彼女が居た昔の思い出。
皆で苺を初めて一緒に食べた、それだけの思い出。
翌日ザアファラーン姉上と私とマルティン以外、この世界から消え失せてしまったのだが…
「御主人様、二杯目は御嬢様をお呼びしましょうか。先程料理長が苺のケーキを焼きました。皆さんで御茶にしましょう」
「頼む」
もう失わない。
二度と手離さない。
全ての害悪から君を守ってみせるよ。
だから君はもう少し、甘えてくれないかな?
「竜王様ぁ、文字書けるようになりました!」
何て、報告してきて抱き着いて来て。
少し文字が右肩上がりだけど。
うまく出来たねって言ってキスしようとしたらすり抜けられ、「ケーキあるんですか!」何て言ってさっさと椅子に座り、切り分けられた苺のケーキを見て目をキラキラして。
うん、色気より先に食い気かな?
可愛いけど、もう少し甘えてくれないかなぁ。
嗚呼そんなに旨そうに苺を食べて。
………嫉妬しそうだ。
やっとバレンタイン終了!
ウサギが甘えると言うより、竜王が甘えて欲しくて仕方がなかったと言うオチでした。
そして、少しだけ過去の諸々やらエルフやら。
ちなみにこの話は二章目の後の話となります。
色々二章目と話が被りそうで危なかったょ………




