子ウサギは竜王様に甘え倒したいっ!12
「私じゃ戦えませんし、無理ですよね」
足手まとい何てもんじゃないし、それ何の罰ゲーム?って言いたい位に酷くなるのは目に見えてる。
精々逃げ回る位しか今の私には出来ないだろう。
それでもウサギの時なら小回りも利いたが、今の人の身体の大きさにまだ慣れず、体力が無いのか即疲れてしまって頻繁に欠伸が出て眠くなり、直ぐに眠ってしまう。
「例え君が戦いたいと行っても私がさせない」
…うっ。
やっぱり言われた。
分かっていたけど…
「何か、何か方法は無いんですか?」
「………可能性の1つとしてならある」
「えっ!本当ですか?ならそれを!」
後ろで私を抱き締めていた竜王様を振り返り、ふと『あれ?』と思う。先程女神が言っていたーー"だからね、早いところ『第五番目水の竜王』としての貴方がウサギちゃんに名前を付けて貰いなさい。そして貴方がウサギちゃんに名前を付けてあげるの。そうすれば貴方の『黒ノ浸蝕』の進行…"
それってつまり、私が竜王様に名前をつけるってこと?そして私に竜王様が名前を付ければ…
「竜王様、私に名前を付けて下さい」
「まだ駄目だ」
え?
「どうしてですか?」
「…私はこの世界の大精霊だ」
「はい」
「この世界では対等もしくは盟友、それか、その、番として………その、君の場合私との力の関係上対等にはなれないし、何より私との番だから名前を付けでしまうことで、君の自由な意思を奪ってしまうわけで…」
「えっと?」
やっぱり通じないと竜王様、私の肩に項垂れてしまいました。そう言われてもわかりにくいです。自由な意思?うーん?
「つまり、その」
言いにくそうにしている竜王様の方を向くと、項垂れたまま耳まで真っ赤。ってことは恥ずかしい事なのかな?
「…契約が発動してしまうから」
ん?契約?何の?
「何の契約ですか?」
あ。止まった。竜王様?
「…そ、そうか、普通は知らないよな」
ん?
何でしょうか?
竜王様何故変な態度?
「兎に角今はまだ駄目だ。せめてもう少し君が成長し、私を受け入れてくれるようになったら」
「それはつまり、竜王様の告白を受け入れると言うことですか?」
「まあ、そんなもんだ。…それに、まず最初に君が私に名をつけなくては為らない。しかも意味も籠めてになる。正直私に合わない名前だと『名付け』が成功しない」
ふぅと私の肩で竜王様が吐息を吐きながら教えてくれます。
つまり、竜王様に適合する名前でないと受け付けられないと言うことでしょうか?
「先日第二番目の姉がミトラと名付けられた。盟友と言う意味があるらしい」
「誓いをたてた友達と言うことですか?」
「…そんなものだそうだ」
チラッと背後から私の肩に頭を付けて居る竜王様を見詰める。何か思案している様な気がする。
「私に名前を付けても少しだけ進行が緩むだけだ、然程変わらん。それよりなら成長していく君を見ていたい」
私の肩で竜王様、頭を俯いたままで少しきつく抱き締めて来たけど…
「長い間君を待ってた」
「竜王様?」
「君は何時も小さくて」
「…」
「大人になった事は無かった」
はぁ、と溜め息が聞こえる。
「だからせめて私の元に居る今は、成長していく君を見せて欲しい」
「竜王様…」
「世界の崩壊が進んで行く僅かな時でいい、見せてくれ」
「…少しの間だけですよ」
「レイン」
「竜王様私の前世の名前時々呼ぶじゃないですか、ずるいです。今だって呼んで。私だって竜王様の名前を呼びたいです」
抱き締めて来る竜王様の腕に両手を乗せ、気持ちが通じるように囁く。
「心を籠めて、竜王様の名前を呼びたいんです」
好きですって。
竜王様の名前にそう心を籠めて呼びたい。
誰よりも、好き。
ーー"ファレノプシス"だよ私達の愛娘。
不意に目の前に光と闇二つの球状のモノが交差し、縺れ合うように現れた。
「第三番目と第四番目…」
「お父さんにお母さん?」




