来
そろそろ新章の支度をば
第一番目原始の精霊 またの名を精霊王
ーー不在
第二番目原始の風の精霊 精霊女王 ミトラ
ーーファンダム在住(前グリンウッド)
第三番目原始の光の精霊
ーー消息不明
第四番目原始の闇の精霊
ーー消息不明
第五番目原始の水の精霊 竜王
ーーウイングダス(前グリンウッド)
第六番目 火の精霊 フロー
ーーグリンウッド
第七番目 土(地)の精霊 アニタ
ーーグリンウッド(亡)
第八番目 木の精霊
ーー代替わり後不明
第九番目 識 種族不明
ーー不明
第十番目 時 種族不明
ーー不明
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第十一番目 来 不明 (隠蔽)
ーーあるのかどうか不明。
「何だ?最後の「来」ってのは」
机に乗せられた調査報告書を読んでいたこの国の第36代目大統領、パウル・ハイデッガーは眉を潜める。
部屋に居る者は自身を含めて影の様に立って居る者のみ。
その者が恭しく礼をした後、
「初代の時から記載されておりますが、よく分からないのです」
「分からないってよぉ…」
ガリガリとパウルは自身の頭を掻き、「ぬぉ、竜王来てるじゃねーか」と呟く。
掻いた頭から自身の獣耳ーー…虎耳を掻き、不機嫌そうに虎柄の尻尾が唸る。
「第五番目はこっちの国柄有名だからわかるけどよ、何なんだ?太古?」
「太古は産まれ落ちてから死ぬこともない、不老不死と言われていますね。実際はよくわかりませんが」
「は~つまり神ってことか」
「いえ、精霊ですね。大精霊とも言いますね」
「ふーむ、それじゃ第六番目からは太古って付かないのは?」
「不老不死では無いからです。代替わりするらしいですよ」
「ってーと七番目の(亡)ってのは」
「先日認識出来なくなったようです」
「へぇ…」
つまり死んだと。
寿命なのか何なのかわからないが、
「やけにグリンウッドに精霊ってのは居るんだな?」
「大自然ですからね、精霊にとって居やすいのでしょう。現に第五番目の古城は断崖絶壁の自然の要塞として有名ですが、同時に自然界の妖精達が大量に居ますし。それだけ精霊達が居る場所は豊かな土地になりますしね」
だからこそ、和の国が狙って居るのだが。
「自然、ねぇ。…和の国の調査はどうなった?」
「ほぼ壊滅的ですね。昔はあんなに豊かな土地だったのに、今は妖精さえ寄り付かない土地になっております」
「…外交は?」
「良くないですね。隙あらばっと言う雰囲気が隠す気もなく漏れて居ますよ」
「やべえなそれは」
「ええ」
「戦争する国はなんつったかな」
「斉の国ですね。和の国の隣の小国です」
「は~やだねぇ…」
「どうしますか?」
「ふむ、和の国の食料提供停止と国交停止、資金も停止だな。抗議は放棄しろ、どうせ構ってもろくな事にならん。あとは…難民は引き受けろ。ほっといても竜王が引き取るだろうしな」
「御意」
「そうだ、近いうちに竜王に会いに行く。日時の調整頼む」
返事の代わりに礼をして去って行く部下を見詰め、パウルは懐から巻き煙草を取り出す。
火をつけ、紫煙を上げる、
「一年ぶりかな、あー不味い…」
そう言いつつ、プカプカと上手そうに吸う。
襟に回しているネクタイを剥ぎ取り、窓辺に行儀悪く乗り上げ座る。
「この国もどうなるかねぇ」
"誰も人は居ない"室内に訪ねると、『知りませんよ』と声が掛かってくる。
「ま、どうにかなるわな」
そうですね、とまた声がする。
誰も人は居ないのに。
ククッとパウルは笑い、室内に目を向ける。
「全く、結界でもしかねーとなぁ。この国は恩恵が強すぎらぁ」
キラキラ煌めく室内にいる妖精に笑い、その妖精もパウルに笑いかける。
困ったもんだと呟きつつ、その妖精の笑顔に苦笑をしつつーー




