エンハンサー
side.ウサギ
「むむむ、大人の余裕」
「ミウったらもう、意地悪しないの」
キーラちゃんがあからさまにホッとした顔で胸に手を置いて居て、イーサンが去って行ったドアの方を向いて居る。
キーラちゃん、イーサンの事好きなんだなぁ。想い合っていていいな、素敵だなって心底そう思う。
レノの場合だと直ぐ威嚇するか、ちょっと場を掻き回して変な空気にしちゃうから。…そう言う風に庇ってくれるのもちょっと格好いいなって思っちゃうんだけど。
でもね、威圧は時と場合によっては良くないものだよね。
そう言えばフローお兄ちゃんだとどうなるんだろ?騒がしくなるのかな?この間私に「お兄ちゃんって呼んでな、ウサギ頼むっ!」っていきなり言って来て吃驚したけど、今まで「兄貴」とか呼ばれた事はあるけど「お兄ちゃん」って呼ばれた事無いから頼むっ!って言われたんだよね。
その際レノに「無理強いするな」って窘められてたけど。
今はお昼寝してるアニタちゃんにも呼ばれた事無いのかなぁ?フローお兄ちゃんは六番目てアニタちゃん七番目だからアニタちゃんが妹になるのだけど、出逢った時ってアニタちゃんのが年上だったから呼ばれなかったのかも?
「だーってさー、今日も外出禁止だよ?飽きちゃうよ~」
学園に入学してからついこの間まで、ミウは毎日街に繰り出して駆け巡って遊んで居たからこの城の中での生活は窮屈らしい。
「おまけにマルティン様、私迄ウサギの通学用の馬車に乗せちゃうしぃ。買い食い出来ない~」
ミウが恨めしい顔をして此方を見詰めて来るけど、目は笑ってるね?何となく解るよ。愚痴りたいだけだよね。
…私だって愚痴りたいもん。
「えーと、お父さんが御免ね」
「良いの良いの、ウサギもマルティン様の過保護状態の被害者なんだから。ってか、愚痴っちゃってごめん!でもさー愚痴りたくなるわぁ、マルティン様通学用の馬車の馬がユニコーンの亜種って異常だろう…」
うん、それ同意する。
一見すると分からないけど、よく見ると真っ白なお馬さんの額に五センチも無い位の小さな角がある。最初わからなくて何か付いてるのかな?と思って御者をしていたヒネモスさんに聞いてみたら、
「御嬢様この馬達はユニコーンの亜種ですよ」
って極々普通に、何でも無いように言われたんでてっきりソレは普通なの?と思ったけど、一緒に乗ってたミウの方を振り向き、驚愕のあまりポカンと口を開けて固まった表情をしているのを確認。
…あ、これ違う。と、一般とは違うと理解した。
「あの亜種よく見ないと分からないけどさ、知ってる人が見れば目玉飛び出る位高価だからね。政治家とか何処かの良いとこの坊っちゃん嬢ちゃん位しか…あ~確かにウサギは御嬢様か」
お蔭で知ってる人から見れば目立って仕方無いので城から学園、学園から城へと通じる搬入口や出入り口の往復しかして居らず、ほぼ外に出られない。
おまけに馬車自体も華美では無いが丁寧な職人の作りの為、どんな人が乗ってるのかと時折だが街の人が振り向く始末。
「えー」
「えーじゃないよ。亜種のユニコーンは害悪や邪なモノを阻害させる魔力を帯びてるから迂闊なのは手出し出来ないからある意味良い護衛だけど。それにグリフォンよりはマシだしね」
「グリフォン?」
「噂の国王さん方の馬車がソレらしいよ?護衛がいらない位強くて、二車線通路の片側一杯の大きさで、身長も高いって。今日隣のクラスで噂してるの聞いちゃった」
「へー」
ミウってこう言う所が凄いよね。私隣のクラスとか何時も素通りで何を話してるか解らないもの。
今も街に行けたら速攻で見に行くのに~!って。行動的だなあ、私だと話を聞いたらそれで終わっちゃうのに。
そう言えば隣のクラスって何科なんだろ?
「ねえミウ、隣のクラスって何科なの?」
「まだ話して無かったっけ。私達のクラスは特殊科だってのは分かってるよね」
「サマナー・精霊使い・テイマーそれとミウみたいに変化する人が居るんだよね」
「そそ。で、今私が言ったクラスは魔法の特殊科だねぇ」
「魔法の特殊科?」
「身体能力とか、えーとなんて言ったっけ。支援特化とか回復とか、魔法攻撃は一切出来ない代わりにエンチャント特化したクラス。エンハンサーって言うんだっけ?」
「エンハンサー…」
「うん。支援特化だからさ、色々あるんだよね」
「?」
「その内ウサギも見ると思うけど、魔法特化クラスこの場合攻撃魔法特化、つまり魔法使いとかの事だけど、そのクラスと仲が悪いのよね」
「どうして?」
「私が入学した時には既に仲良くは無かったみたいなんだよね。でも魔法特化クラスは一寸ね、一部自身の事を特別だと勘違いしてるアホが居るんだよね」
「勘違い?」
「そそ。魔法、つまり攻撃魔法だけどそれが出来るからって自身の事を特別だと勘違いしてる世間知らずのアホの子」
呆れた様に言うミウにウサギは小首を傾げ、
「ミウはその子と何かあったの?」
「うん。「オットー様の子供の癖に」って突っ掛かって来たからね。盛大に涙流して地面で転げるまで脇擽ってやった。過呼吸気味になってたぜ~♪」
プッとウサギは笑い出す。
ミウの事だ、きっと情け容赦等せずに意地になって擽ってやったのだろう。
「そのお蔭で私には嫌味とか出来ないみたいね、私の顔を見たら即座に擽る仕草をすると血相変えて逃げてくもん」
ヨワムチめ。
等と言うミウは口を尖らせて「オットーお父さんだけじゃないもん、カメリアお母さんとの子だもん」と文句を言っている。
「兎に角ソイツがウサギに絡んで来たら私を呼んでね!即座に懲らしめてヤル」
クックックッと笑いながら手をワキワキし出す様子にウサギは苦笑し、頼もしいなと思いつつ、
「多分大丈夫だと思うよ」
「そう?」
「うん。カー君達が張り切っちゃいそうだしね」
「それ威圧制裁…御愁傷様…」
少し前、ウサギが転入した最にクラスの男子がウサギの気を引きたいのか突っ掛かって来た時があるのたが、その際カー君の怒りを買い、カンカンに怒ったカー君によって威圧を喰らってしまい…
号泣しながら見事なジャンピング土下座を披露した。
その後クラスで『迅速な対応カー君マジ優秀』とミウが称え、場は収まったが翌日その子は休んでしまった。
ミウは恐らくマルティンが何かしたのでは無いかと思っている。
休んだ次の日からその子の性格が今までの様に強気で我儘から真逆になり、素直で大人しくなってしまったからだ。
勿論多少はカー君のせいかも知れないが、真相は謎である。
今はオヤツを食べ終わり、顔を可愛らしくコシコシと洗っているカー君達を見ると、「なーにー?何か用事?」とキョトンとしている姿はとても愛らしい。だが、その性格はとても獰猛だ。
「カー君達ウサギを守ってね?」
「「「ピキュ!」」」
任せて!と言う風にドンッと自身の胸を片手で叩き、カー君達はどや顔を披露するのであった。
今回タイトル思い付かなくて適当だったり…
ゲフンゴフン。
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