餌、なんなの?
何故牙のお兄さん来たの?と問おうとしたら、またまた視界が遮られました。
今度は真っ白。
ん?あれ?何でかな?嗅いだことあるような匂い。
……あれ?
何で私、顔が熱くなるんだろう?
嬉しくなるような、少し恥ずかしくなるような、そんな匂い。
何故なのかな?
「それ着てろ」
って聞こえたけど、お洋服なのかな?
えーと、ゴソゴソと頭を出すと、牙のお兄さんと緑色のお洋服を着た男の子がお互いに物凄い剣幕で睨み合ってます。
おまけに牙のお兄さん、男の子の襟首付かんでて、男の子の首が絞まってて苦しそう。
「あの」
牙のお兄さん、何故そんなに怒っているの?
緑色のお洋服の男の子も、何故そんなに睨んでいるの?
「僕は彼女が気に入った」
途端に息も出来ない程の怒気が周囲に広がり、部屋中の壁がビリビリと変な音を立てる。
「御嬢様!」
部屋中に敷き詰められた蓮華草の花を掻き分け、猫耳の御姉さんが私を庇う様に抱き締める。その際にお兄さんに渡されたお洋服を御姉さんが着せてくれた。
これ、さっきまで牙のお兄さんが着ていた白い上着だ…
かなり大きくて、ワンピースみたいに引き摺る。
袖を捲ってみると、其処から仄かにお兄さんの匂いがする。
襟からも。ううん、私の全身からだ。
何だか恥ずかしい…
天井からパラパラと砂が落ちてきて怖い。
少し震えると、猫耳の御姉さんが「大丈夫ですか」と聞いて来る。でもね、私より大丈夫じゃ無い人がいるよ?
ドアの前で白髪が混ざったおじさんがずっと何か唱えている。
あれは何かの呪文?
顔色が凄く悪い。真っ青。
大丈夫かしら…
「彼女はお前のではない」
低い声。
でも何故?
…私、嬉しい…の、かな?
こんなに怒気を放って居るのに、凄く怖い顔をして睨んでいるのに、何故なのかな?
………側に行きたい。
さっきはあんなに怖かったのに、何故?
牙のお兄さんあんなに怒っているのに、何故?そんなに泣きそうなの?
「ふん、どうせ彼女の同意なしに勝手に連れて来たんだろ?」
「…っ!」
嗚呼また、ビリビリと空気が唸る。
ドアの前にいるおじさん、大丈夫?益々真っ青だよ?
「彼女は私の番だっ」
「だから何?そんなの僕には関係ない」
「ッ!」
ドッと部屋中の花々が飛び散り、渦を巻く。
その渦に対抗するように、空気中に大量の水が表れ、同じく渦を巻き花々が掻き消える。
「それ以上邪魔をするなら妖精王に言うぞ」
「ふふ、それで僕を牽制出来るとでも?」
「ぬ!」
「それにまだ彼は妖精王ではないよ」
ふふんっと緑色のお洋服を着た男の子は牙のお兄さんが掴んでいた腕から逃れ、
「また遊びに来るよ、可愛い御嬢さん」
といってーーー
「きゃあ!?」
私の額にキスをした。
「てめぇ!」
「あっはっはっ!竜王!僕は負けないよ!」
そう言って、次の瞬間にはあの緑色のお洋服を着た男の子は居なくなってました。
えと、え、えええ?
今のは?
なんなの?
餌、えーと?んん?んー?




