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番外編 ヒネモスはかく語りき。

 マルティン様が帰って来ましたが、私ヒネモスの業務は変動しませんでした。

 マルティン様が帰宅した当初気落ちしていた様ですが、翌日早朝には山の様な書類を持ち出し、


「こことここ、計算ミスです。それと此方は再検討で」


 と、私の机の上には山が…。

 天井に付いてません?


「此方は竜王様に再度検討して貰って下さい。その際には此方の書類を一緒に提出して下さい。先に目を通して貰うように一言お願いしますね」


 ふぉぉお…

 山が、山が二つ…。


「それと此方の書類は、ここの業者にヒネモス、貴方試されてますね?よく話し合って下さい。原価より値段が違ってますから」


 あぅ…

 山、3つ…


「ヒネモスさ~ん………ひぇ」


 あ。

 御嬢様が部屋に入った途端、山積みの書類にドン引きしてます。

 一緒に来たキーラ迄「えええっ」って顔。


「御嬢様、私暫く竜王様とヒネモスとで仕事に籠りますので、竜王様を御借りしても宜しいですか?」


「うん。あ、はい」


 コクコクと首降り人形の如く頷く御嬢様。それを唖然と見詰めるキーラ。お、開いた扉の向こうにいたリアムが口を開けて書類を見上げてるよ…。


「時間が掛かりそうですし、リアムすいませんがエイミーを呼んできて下さい。出来たらアンジーも(取っ捕まえて)お願いします」


「はいっ」


 おおう、リアム早足で行ったな。

 と言うか、何故アンジーは取っ捕まえてってきこえて来たのだろう?


「御嬢様」


 ぴゃって御嬢様の口から何時もの謎言語が。何故か緊張してません?


「はいっ!」


「竜王様を連れて来てくれませんか?私だと逃げそうで」


 マルティン様そこで苦笑する辺り、竜王様前科あるンデスネ~。

 確かにこの山積みされた書類を見たら逃げたくなりますよね。うん、ワカリマス。


「はいっ!行ってきます!」


 パタパタと早歩きで去って行く御嬢様は、恐らく四階の御主人様の部屋に迄行ったのだろう。キーラも慌てて追い掛けて行ったみたいだ。


「さてと」


 ん?マルティン様の雰囲気が何処か冷たい様な……

 き、気のせい?


「ふ、ふふふ。カシージャス商会いい度胸ですね。私が不在中に我が商会を乗っ取る気だった様に思われますね…クククク」


 ビュォォォッと、ツンドラ地帯に居たっけ!?と言う幻覚を覚えさせる様な冷気がっ!

 地下に永久凍土なんてある場所に等行ったこと無いけど!

 寒い!寒いよっ!


「ヒネモス」


「ハイッ!」


 ビシッとつい敬礼!!!!!


「カシージャス商会は私の商会にヤラカシテ居る様ですね」


「はい、色々と取引相手に噂をばら蒔き始めて居るのではと。証言と証拠も幾つか上がって来て居ます。他にも他国にも妙な噂やらばら蒔いて居る様ですね。勿論根も歯もない根拠の無いモノなので誰も信じて無い様ですが」


「クラウディア、いえ、クラウは何か言って来てますか?」


「その件について後程御伺いすると連絡が来てます」


「ふふ、成る程」


 と、マルティン様の口許の犬歯が覗く。

 目まで魔力を帯びて、って怖…


「マルティンさーん竜王様えっと、レノ連れて来ましたー!」


 御嬢様の腕に掴まれて居る竜王様は、部屋にはいった途端、


「マルティンに喧嘩売ったアホが居るのか」


 悟った様な目をして顔色が死んでました。

 いっそ憐れなモノだなとの言葉を漏らして居ると言うことは、過去何度かあるのですね?

 おっと、マルティン様が御嬢様に「レノとは?」と聞いてます。そう言えばまだ話して無かった様で、竜王様が「私につけてくれた渾名だ」と微笑んで居ます。

 う~ん何だか羨ましい。

 私も渾名欲しいな、名前が名前だから終日って言われて終わるかも知れないけど。


 コッソリ御嬢様に「渾名って私にも着けて貰えます?」と言ってみたら、「んん、ん~…ひーちゃん?ネモ?モス?」と。

 下から「バーガーみたい」と言う声がするから視線を下に向けたら、いつの間にか黒猫のアドニス様が鎮座していた。


「それじゃあバーガー?」


「分かりにくいからネモでよくね?」


「船長ですか?」


「よく知ってるねって、前に俺が寝られない嬢ちゃんに枕元で話したっけか」


「うん、ネモ船長!」


 …変な事になってるし。


 アドニス様ああ見えて子供好きだから、御嬢様が最初この城に来た当初、寝付けずに居た時に色々お話とかしていたと聞いた時があったけど、どうやらそのお話の中に出て来たキャラクターにネモって言う人が居たらしい。



「む?こやつ、レインに接触を謀ろうと画策しとるな」


 その言葉に一瞬私のこと!?と慌てたが、振り向いた先に居る一枚の書類に目を光らす竜王様。

 どうやら違う様だ。

 ほっとして様子を伺っているけど、その書類は機械的に書かれて居る様にしか思えないのだが…。


「ええ、ですからカシージャス商会は危険です。オリアナ」


 ハッ!と急に影から現れる美人メイドさん。

 知ってても結構驚くよ、これ。


「この書類を持ってカデンツァを呼んできて貰えますか?提出された荷物に恐らく仕掛けが施されて居るでしょう。時間差で仕掛けが発動される恐れがありますので、触れない様に。魔術で探って貰って下さい。見付けたら知らせて下さいね」


「はっ」


 了解した途端またしても影へと消えた美人さん。

 チクショウ、あれで人妻なんだよな…。


「御嬢様は一応何かあるといけませんから、暫くは御主人様の側にお願いしますね?」


「はいっ!」


 キリッと頷く御嬢様。

 そして何故か竜王様の書類を横から覗き、「読めない…」と一言。そりゃ無理だ。他国の言葉だし、まだ御嬢様習って無い筈。もしかして手伝えるかなと思ったのかな?ウンウン唸ってるし。

 ザジさん曰く、御嬢様かなり飲み込みが良いみたいだけど…。お?「んんんん~精霊さんが欲しい、かな?後読めない…」と唸ってる。

 それ、正解。


 リアムが連れて来たメイドのエイミーさん(アンジーがエイミーさんに引き摺られて居るのは何故?)が御嬢様に「どうぞ」と、絵本と手芸道具一式を手渡して居る。

 流石だ。

 受け取った御嬢様はお礼を言って、早速嬉しそうにニコニコしながら手芸道具を広げてピースを繋げ始めて居る。

 パッチワークですね、これは。


「すまないな」


 竜王様が御嬢様の横で書類に目を通しながら謝り始めます。


「大丈夫です」


「この埋め合わせはちゃんとするから」


「今してるじゃないですか」


「いや、先日の襲撃でレインが作ってたパッチワークや刺繍が幾つかダメになったので、布地や糸を今日一緒に買いに行くって約束したろ?」


「布地や糸はクラウさんに頼んでますから大丈夫です。本来服の着れ端があれば出来ますし。それに、これってデートですよね?一緒に買いに行くのも今一緒に居るも同じですよ」


 ニコッと微笑む御嬢様。

 わ~竜王様お顔が真っ赤…


 何か、何か、負けたっ!


 書類に目を通すつもりで下を向いたら、アドニス様が「元気出せ」って肉球でぷにっと私の足をつついてくれた。



 その同情がとっても痛いんですけど…


 仕事が終わったら久し振りに街に飲みに行くかなって愚痴を溢したら、アドニス様が「奢ってやるよ」と。

 愚痴らせて貰います。

 覚悟して下さいねっ!


この後に件の商会は大打撃を受けてそう。


ウサギは何故ヒネモスの所に来たかと言うと、竜王と買い物に行くけど良いかと許可を取りに来た所に巻き込まれました。


おきに召しましたら…


作者のモチベーション維持の為、ブックマーク及び評価をどうか宜しくお願い致します

m(__)m


マルティン小話は御休み致します。

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