表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
144/256

閑話 精霊と面倒ごと 4

『まぁそんなわけでの、ちゃんと見送って来たのじゃ』


 マミュウが旅立ってから約二ヶ月後。


 黒猫のアドニスが先行して教えてから数週間後。


 マルティンとアドニスにミトラが城に帰って来た。

 とは言え、マミュウは帰って来ていない。

 アビス(奈落)に入るには単独、独りで行かないと行けないのだそうだ。



「一族入りしたか」


「…はい」


 何処と無く影が差した表情のマルティンに、竜王は元気出せと言わんばかりに肩に手を置く。


 本来ならアビスから帰還した最に出迎えたかったマルティンは、アビスの案内役に「此処に留まるのを禁じる。帰還せよ」と命じられ、袖を引かれる思いをしながらも致し方無く帰って来た。


「出来ればあのまま待って居たかった。マミュウはまだ一族入りしたばかりで、一族として一番年若いのに」


 そんなマルティンの様子を見ていたウサギは、マルティンの容姿にアレ?と思う。旅立つ前よりも、今の容姿は更に若返っていて、どうみても十代後半か二十代前半の様に見えるのだ。


「マルティンさんの御肌ピチピチ?」


「…ええ、まあ」


 竜王に「こら」と言われてそうだったと思い出す。

 マルティンは血を吸うと若返る吸血鬼の始祖。



 ーーつまり、残酷な事をマミュウはマルティンにして貰ったのだ。



「…御免なさい」


「いいえ。気にしないで下さい御嬢様」


 そう言ってマルティンは皆に挨拶した後、部屋を辞した。



『こればかりは仕方無いの』



 ミトラの呟きに、ウサギは何とも言えない気持ちになった。








 


「此処にいたのか、探したぞ」


 竜王が城中を探したが見付け出す事が出来なかったウサギは、ポツンと中庭のベンチの上に座って居た。

 とは言え召喚獣のカー君も居たし、ジャッカロープのくーちゃんやアルミラージのみーちゃん等は二人仲良くはむはむと中庭の草を食べていた。そんな様子をウットリと見ながらもウサギの側にキーラは側に控えて居たし、リアムもきちんと護衛をしていた。

 ただちょっとウサギがぼんやりしていた為に、竜王が呼んでる声が聞こえなかっただけだ。


「どうした、こんな所に居て」


「ちょっと考え事してました」


「マルティンのことか」


「はい。私もあの様に出来るのかなって」


「ん?」


「もし、です」


 チラリと背後に居るキーラ達をみやり、敢えてもしと比喩する。

 キーラ達は知らないのだ。

 竜王が【黒ノ浸蝕】に侵されて居ることを。


「もし、竜王様が、レノが残りの寿命が少ないなら。私はマルティンさんに頼むのかなって」


「そうか」


 話して居る間に横に座った竜王は、ウサギの頭に手を置いて優しく撫でる。

 慈しむ様な優しい手付き。

 柔らかな感触を楽しんで居た竜王は、ふとその手を止め、


「私なら頼まないかな」


 チラリとウサギは竜王の顔を見る。

 複雑な表情を浮かべて居る様は、グリンウッドの抗争以来黄金色に輝く瞳の色が雲って見えた。


「私みたいな奴は君に会えないと病むからな」


 クスッと自虐気味に笑む。


「今残って居る太古の大精霊は、基本病んでるしな」


 座って頭を撫でて居たと思ったら、いつの間にかウサギの膝に頭を預けて竜王は勝手に膝枕をし始める。


「悪いが膝を借りる。少し寝かせてくれ」


「え、あ、はい」


 そのまま目を閉じた竜王の(びょう)を見詰め、穏やかに風が頬を霞めて行く。





 もう君を手離したく無い。






 そう聞こえた気がして竜王に目線を落としてみたが、穏やかな吐息をたてて居るだけであった。


おきに召しましたら…


作者のモチベーション維持の為、ブックマーク及び評価をどうか宜しくお願い致します

m(__)m


↓久し振りのおまけのマルティンの小話はこの下です↓

そのじゅうなな。



ミトラ様が遊びに来てから、玄関横の庭に御嬢様達は移動した様です。どうして"移動した様です"と書くかと言うと、私も暇ではありません。執事長と言う仕事がありますし、各種帳簿も管理と記載をしなくてはなりません。

悲壮感漂わせた顔をした御主人様を無理矢理引っ張り、問答無用で書類に埋もれさせて置きます。辛そうな吐息の後に切り替えたのか書類に挑む様は凛々しいのですがね、何故御嬢様の絵姿を横に立て掛けて置くのでしょうか。

時折絵姿を見て、それから書類に目を落としております。

これ、確実に身が入ってませんね。

それでもペースを崩さず仕事を片付けて行くのは有り難いです。以前ならグリンウッドの森に棲んでいた為、時折戻って来た時に問答無用で書類を片付けさせて頂きましたが、それ以外は全て私が代行として片付けておりましたので助かります。

ふととある気配がして背後を振り返ると、ドアの付近から気配。おや?ある程度書類を片付けてから御主人様に目線で示す。

途端、顔に笑みを浮かべましたね。

「おいで」

ドアが小さく開き、コソッと言う感じで御嬢様のお顔が覗いております。

「…や」

おや、まだ御機嫌斜めなのですかね?パタンッとドアが閉まり、廊下に居た気配が階下に降りて行きます。

チラリと御主人様を見ると少し吐息を掃き、

「嫌われては居ない様だが難しいな」

昼日中(ひるひなか)節操なく手を出そうとするからですよ」

「正論過ぎて反論できない」

「自覚あるなら治して下さい」

「…難しい」

その後、御嬢様が可愛い過ぎて時折魅せる色気に我慢出来ないと、切々と訴えられました。


勿論ワザと辛辣な毒舌でカエシテオキマシタガ何か?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ