2.5 命の石
周囲に渦を幾つか作っていた水が無くなり、つい先程迄大きなシャボン玉の様な空気の層に包まれていた筈なのに今は何もなくなっており、唯一の跡の様に足元に水溜まりだけが残って居る。
そして足元から少し離れた場所には大小様々な蜘蛛の死体が散乱し、皆窒息死したらしい。とは言え蜘蛛を見ても水に濡れているだけで、死因が解るわけでは無いが。
「露程というわけでも無いがな」
どうでもいいと言う感じで話す竜王の、今は子供サイズ…番相手と同じ位の年齢にまで身長を合わせた竜王は、少し切れ長の瞳を閉ざし次いで開く。
すると今までの色、魔石とおなじ色彩から別の色が宿っていた。
「黄金色?」
「グリンウッドに流してた魔力を止めたからな。一時的に本来の色に戻った。…彼女に気に入られるといいが」
彼女は前に魔石に似た色が綺麗だと言っていた。でも今の彼女はこの色を見たことは無い。この世界が出来たばかりで、生まれたての頃の以前の記憶があれば別だが。
これ位で嫌われたり気味悪がられたりはしないだろうけれど、彼女の性格から……
絶対に、面白がられる。
元に戻って!とか魔石色になって!とか。無茶を承知で言い出しそうで困る。惚れた弱味もあるのだが、その無茶を叶えてやりたくなる自分自身に呆れる。それと同時に見た目の年相応に子供っぽい所がまた可愛らしいのだよな、等と思って居ると、
『所詮私には敵わぬ輩か、ふふ。…すまぬ精霊女王。だが約束は守ったぞ』
生きて居たのかと少し驚きつつ、その生命力に驚く。
蜘蛛女…アルケニーは自身を引き摺りながら前に出て、竜王を視界に納めて目を細める。まるで幼子を愛しく思う母の様に。
「我が姉と知り合いか?」
『昔の事だ…私と我が子が悪さをしてた時にな。懲らしめられたぞ?』
クスクスと昔の事を思い出したのか、楽しそうに笑いーー…
「私が朽ちたらわが子達は制御出来ぬ。その事ばかりもうここ数年は悩んでおったがの。昔は違ったがのじゃが…徐々にこの場に居る我が子達は闇に染まってしもうた。私の魔力で何とか抑えておったが…だが幸いな事に危惧しておった最悪のシナリオは起きぬようじゃの。良かった。良かった。これで精霊王の面子は、私の聖獣としての務めは終えられる」
アルケニーは1度口を閉じ、目を瞑って、目の前で逝った子達に静かに黙祷を捧げた。
「生まれたての下の子だけは今だ染まって居らぬ。もし、もし…エルフに囚われたその子が闇に染まって居らずまともならば、精霊女王に下の子を届けてくれぬかの?きっと精霊女王と精霊王の助けになるじゃろうて…」
アルケニーは其処まで話すとズブリッと己れの心臓を自身の手で抉り出し、その心臓の中から直径10センチ程の宝石、既にカットされ磨き抜かれたピジョンブラッドのルビーの様な物を取り出し、竜王の前に置いた。
「これを我が子に…いや、違うの。竜王の番のが役に立つじゃろ。迷惑料じゃ。さて、皆待たせたの…」
最後の方は消え入りそうな小さな掠れた声でいい、アルケニーは口許に笑みを浮かべた。
「ルビー?」
フローがその石を覗き込み、アルケニーに問うが返答はもう無かった。
***
余りにも多い死体の為、中にあると思われる魔石等を諦め(ベルは何度も振り替えって取りに行きたそうにしていた)一行は城に急いで向かう。
「聖獣だったのか…」
モンスター(魔物)だと思って居たのか聖獣と聞き、フローは驚く。
実際グリンウッドにてアニタと共に過ごす迄、幼い時を覗き、フローはこの大陸のアチコチをフラフラと、特に意味も無く旅をして過ごして居た。
理由等は本当に何も無かった。
ただ何故この世界に代替わりとして産まれたのか、また以前の代替わりする他の精霊達は何をして、何を考えて過ごして居たのか知りたかった。
その為に痕跡があると言う国に渡り、また別の国に渡り、砂漠を越えて湖を眺め、各地の人々や獣達を見て廻ったが、1度も聖獣等見たことも会ったことも無かった。
だが今みたいなモンスターだと思って居たモノが、実は聖獣なのかも知れない。
もっとも聖獣と言うより聖蟲な様な気がするが。
フローは初めて知った事に驚いていたが、竜王は知っていたのかフローの驚きを他所にドンドンと進んで行く。
今はワームの様なモンスターが掘ったと思われる穴を、竜王は背に竜の時の羽根を生やして飛び、フローは竜王に擬態した黒猫のベルの背中に乗って上へ上へと飛んで行く。
「兄貴、さっきの石ってルビーだよな?」
ルビーにしては嫌に大きく、またルビーの中に核の様なモノがあった。
「いや、アレは"命の石"だ」
おきに召しましたら…
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m(__)m
↓おまけのマルティンの小話はこの下です↓
そのじゅう。
設置が終わり、塗装やら何やらで使用するのは三日後にしてくれとパウルの説明を聞いていたら、
「お?なんだアレ?燃やしていいのか?」
「フローさんダメです!あれは皆で遊ぶの!」
プクッと頬を膨らませ、フロー様に御嬢様が文句を言っております。嗚呼、でもあれは確実にヤバイかな。
フロー様、御嬢様を時折からかいたくてあの様に言うのですけど、その度に御嬢様に怒られますからね。
そしてフロー様堪え性等皆無ですからね。あのままだと絶対に手を出し…
「ぎゃあああっ」
あ。やっぱり。
フロー様、御嬢様のプクッと膨らませた頬を絶対につつくと思いましたが、やはりやりましたか。しかも御嬢様の両頬に手を掛けて。
そして側に居た御主人の嫉妬によって電撃を喰らったと。
勿論御嬢様に影響が無い様に結界を敷いている辺り、御主人様の御嬢様への過保護っぷりは相変わらずですね。
安定の(?)一幕デス。
「ほんと、ここに来ると伝説の大精霊のイメージ崩壊するよな」
「俺退屈しなくて好きですよ」
パウルとグリッドが外でノホホンと告げ、クロウはじっと見詰めながら、
「大精霊と愉快な仲間達」
とポツリと漏らしておりました。
その愉快な仲間達に私、入って居ないデショウネ?




