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2.5 メリュジーヌ

今回は短めです。


最初の数行6/21改稿。

少しだけ変わっております。

 城の玄関を出て既に明るくなっている上空を見上げ、結界に群がるイナゴの魔物達が黒く蠢く様は不気味としか言いようが無い。


 気持ちが悪い。


 正直な所その様な感想しか持てないイナゴの魔物達は、体色を黒に染め上げて結界を喰い破らんと猛威をふるう。

 仕切りに背中にある羽根を動かす音や、ガチガチといった音を周囲に響かせる。


 何故エイミーが外の害虫、もといイナゴの魔物退治に駆り出されたかと言うと、エイミーの種族に関係している。

 エイミーはウサギには隠して居る(つもり)が、本来の姿は上半身は人間で下半身が蛇のメリュジーヌ族。そのメリュジーヌ族には種族特有の小動物等に有効なスキルがある。勿論そのスキルは昆虫類にも有効であり、昆虫の魔物にも同じく適用出来る。

 個人差がありスキルの強弱はあるが、本来の姿に戻れば昆虫類の魔物等敵では無い。

 そしてそのスキルはメリュジーヌであるエイミーに取って、本来の姿に戻っていれば言葉を話すのと同じく簡単である。


 《止まれ》


 白く長い、最後の蛇の尻尾の部分は細くなっており、エイミーはこの先端部分が特に嫌いだった。その嫌いな細い尻尾を振るい、元の姿に戻ったエイミーは言葉を紡ぐ。

 その言葉を聞いた全てのイナゴは停止し、エイミーは確認を終えると今度は別の言葉を紡ぐ。


 《互いに喰い合え》


 共食いを示唆し、古城の玄関にとぐろを捲くエイミーは普段よりも高い等身を生かし、イナゴの魔物に命令を掛ける。

 すると一斉にイナゴ達は何の躊躇も無く互いに襲い合い、貪り喰い始める。まるで知性の欠片も無いかのように、与えられた命令に忠実に従う。その命令は最後の一匹になるまで《絶対に》覆る事は無い。


 好きでは無い。

 目の前の行為はメリュジーヌ族当人達でさえ、このスキルは好きでは無い。種族特有ではあるが絶大過ぎる力は身を滅ぼすと、幼い時から大人が子供に教訓を交えて教えて行く。


 緊急時以外と、自分達や他の者達の命を繋ぐ行為(狩りの事)以外、決して使ってはならない。


 メリュジーヌの子供はどの子も全てその様に教えられ、命を粗末にする行為は決してしない。そして、メリュジーヌ族が住む村からは滅多な事が無ければ出る事は無い。


 エイミーは目の前の共食いから目を反らし、先程から此方を見詰めて来る男を振り返って見返す。

 ほんのりと口角を上げて、侮られ無い様に。

 この姿を見ても動じない、大統領に挑む様に。


「そっちは済んだようだな」


「ええ」


 虫に対して何かしらの手段を取ろうとしたのであろう大統領に不敵に笑う。


「此方は任せて。だから貴方は貴方の仕事を御願いね」


「わかった」


 大統領の横で何やら「カッコイイ」やら「美しい」やら、小さく呟いて居る補佐官を視線の端に入れ微笑む。

 その男の頭を大統領は小突き、踵を返して戦場に向かう。



 御免なさいね、パウル。



 風にたゆたう言葉に、パウルは振り向かなかった。



何処までも雰囲気かどっかイッチャウ補佐官。

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