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―Ⅰ―「その、始まる前の出来事」

 

 

 凡そ500年前…正確には485年と9ヶ月前。

 世界は人族と亜人族、そして魔物とで三つ巴の戦いで過ちを犯し1度亡びかけた。


 いつの世も、戦いの理由は単純だ――

 

 魔物は、ただ単純に本能の赴くまま生きる為に。


 亜人族は多種多様に居り、獣の特徴を持つ獣人種やエルフ・ドワーフを始めとした妖精種、自然を起源とした精霊種たちは自分や仲間そして家族を守り、また拐われ隷属させられ戦いの道具とされた種族の解放を胸に。


 人族は自国の拡大、果ては世界を自分達の物とせんが為に同族で在ろうとも国が違えば敵とし滅ぼし、自分達が傷付かない様に亜人族たちを捕らえ戦わせ、資源を貪る為に魔物を駆逐していく。


 そんな三つ巴の戦いは、最初から膠着状態だった。

 争いは汚泥の底無し沼の如く、代を重ねても続く。

 それに痺れを切らしたのは、他でもない人族だった。

 

 人族は禁忌を犯し、それによって編み出した魔法を行使したのだ。

 

 その魔法とは、三百もの亜人を生け贄とした異界からの召喚。

 

 そしてその異界召喚魔法は、あろうことか成功してしまった。

 確かに代を重ねる程に長く続いた争いに終止符を打つことは出来た。

 しかし、それは人類滅亡の一歩手前にまで追いやる事で、だった。


 ――が、それも異界召喚魔法を行い、成功してしまった時点で起きるべくして起きた事だろう。

 自分達の住む世界を知らず、夜空に輝く物の正体も知らない。

 星を星と認識出来ていないで、それら全てを自分達の都合の良い“神”として崇めていた者が“異界”から何かを召喚するなど――


 結果として呼び出されたモノは、三体居た。

 それぞれが多少の時間差で現れたが、それも1時間しない誤差であった。


 まず最初に現れたのは、痩せ細った野犬だった。

 野犬は極度の飢餓で警戒も疎かに、ただ目の前に現れた人を食べるという本能だけで襲い掛かり、呆気なく斬り捨てられた。

 

 召喚した方は、それに落胆し再度生け贄の準備をと亜人狩りの用意を始めたところで、再び召喚陣が光り輝き召喚者達は歓喜した。

 それが、滅びを(もたら)すモノだと知らずに。


 そして姿を現した“ソレ”は、狂喜に満ちた顔を隠そうともしない悪魔だった。

 召喚した者達は、成功したという事実のみだけで更に歓喜し、王は自ら引導を渡すかのように悪魔に命令を下した。


――我の為に、この世界を手に入れよ!我こそが世界を統一するに相応しい者だと思い知らしめよ!――


 事前に打ち合わせた通り、魔法使い達は王の命令と同時に召喚したモノへと隷属魔法を掛けていた。

 悪魔は召喚されてから王の命令を耳にし隷属魔法を掛けられている間、終始無言で口角を上げ笑みを浮かべているだけだった。

 その様子に、隷属は上手くいったと勘違いした王と魔法使い達も皆笑みを浮かべ、これから始まる統一世界を夢想する。

 

 だが、それも悪魔が初めて言葉を発した次の瞬間には崩れ去った。


「ヒャハ!何かに引っ張られて牢から出たと思ったら、随分と活きの良い食事(・・・・)が用意されてるとかウレシイねぇ!」


 悪魔はそう言うのと同時に手近に居た王や騎士たち十人に向かって飛び掛かり、瞬きも許さぬ早さで殺し頭から全身に血を浴び恍惚の表情で顔に滴る血を舌なめずりをして口に含みながら次の獲物をどれにするか、まるで吟味するように周囲を見渡した。


◇◆◇


 こうして、悪魔は僅か1時間足らずで世界の人口と魔物の数を合わせ約六割強と驚異的な数値にて死滅させた。


「これが、介入決定時及び介入準備中の概要報告です。更に詳しい内容は書類に纏め追って提出します。また、今回の悪魔脱走の件は互いに不問とするとの決定が下され、そして現在睡眠中の介入した残りの召喚された人物に対しては調整封印を施し、このままそちらの世界にて生を全うさせ、死後此方で回収し輪廻の正常化をするので一切の接触を厳禁とする、との事です」

「分かりました…御手数をお掛けします…」

「気負わなく大丈夫ですよ、あの御方も通られた道ですし謹慎もたった500年ですので、ちょっとした休暇だと思っておけば良いかと。…では、私はこれで」


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