第二回
「とは言っても、今日は家の事情で
学校には来れないらしいから、正確
には明日から、この教室で授業を共
にする仲間だ。みんな!仲良くして
やってくれ!」
◇
「ねぇ、若菜ぁ。明日来る転校生っ
て、どんな子だろうね。気にならな
い?」
てっぺんに大きな苺が乗ったパフェ
を口にしながら、杏南は言った。
学校帰りに、いつもの駅前のカフェ
でパフェを食べるのは、高校生にな
ってから私と杏南、2人だけの楽しみ
である。
「あぁ〜そうだね。女の子って言っ
てたしね。いい感じの子だといい
ね」
この時の私は、まだそんな甘い考え
で、転校生の話をしていた。
あとになって、その事を後悔する事
になるとも知らずに…。
to眞壁 杏南
その日は、いつもより早く教室に着
いていた。
「お、あたし1番だ♪」
いつも絶対1番に来ていて、真ん中近
くの席で本を読んでいた永瀬君の姿
が、今朝に限って見当たらないの
だ。
「珍しいなぁ」
確か今日からだったはずだ。このク
ラスに転校生が来るのは。
一体どんな子だろう。早くその時間
がこないかな。
気づいたら、あれから30分もこうし
ていた。周囲にも続々と騒がしさが
出来始め、あたしの前の席も、椅子
が引かれる。
「おはよ杏南!今日も元気かい?」
親友の町田 若菜が、朝早くには大き
過ぎるテンションで挨拶をしてく
る。
「おはよー若菜。今日もまたいつに
なくうるさいよ?」
「あっあ〜ごめんごめん。ついね」
「もー」
「よしお前ら席に着けー、HR始める
ぞー」
「でたよあの話長いせんせー」
「何それw」
「じゃあまず、今日からこのクラス
で一緒に授業を受ける、転校生を紹介
する。入って来ていいぞー」
「お!いよいよだね。楽しみにして
たもんねー杏南」
「うん!」
ドアが静かに、音を立てた。