アミューズメント
喧騒の中に紛れてリズミカルな音が聞こえている。
カラフルなライトにまぎれて、彼女はいた。
画面に流れる矢印に合わせて、彼女が跳ぶ。
つやのある黒い髪が流れるように舞い、毛先が意志を持ったようにこちらを見た。
しばらくして、足がおぼつかなくなり始めた。画面のゲージがみるみる減っていく。
必死に足を動かすが、あれでは追いつけない。
あたりが少し静かになって、彼女が振り返る。
髪は乱れ、顔を輝いていた。目を潤ませながら、言う。
「も、もう一回だけ。もう一回だけやっていい?」
僕はいいよとだけ告げて、特等席へと戻った。
まだ見ていられる。安堵感にも似た感情を持ちながら、特等席へと僕は戻った。