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砂の中の黄金  作者: 木村太郎
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本当の自分

くたくたの身体で帰宅し、布団の中にもぐっては考えることがある。


何の長所も無く、どの分野でも1番が取れない自分が、今から頑張って

他人を追い越せるのかどうか。


既に、自分よりも優れた人が、はるかな高みから、とうてい追いつけない速さで

更なる高みを目指して上っているではないか。


自分も頑張ろう。


湧き上がるそんな感情も、生まれては消え、消えては生まれる。

日々変化する、自分の情熱に幻滅しては、その中のひとつに何か

本物は無いものかと、砂の中から黄金を探す。


その作業に疲れては、手を止め、休む理由を探し、そんな自分に

自信をなくし始める。



「お前は、たいしたこと無い、普通の人間だ。」

「歴史に名を残せず、普通に飲まれる運命を背負った、風景の一部だ。」



だが、私の中にいるもう一人の自分が反論する。


お前に何が解る。

まだ、道は途中だ。この場所はまだ通過点にすぎない。


いつかいつかきっと。


この苦しい日々を必要であったと信じて笑える日がきっと来る。


その日を夢見て、私は止めていた手をまた動かし始める。

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