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12月26日。

作者: 花澤文化

 クリスマス。

 元はといえば日本の行事ではなくて、宗教とかそういうのが絡んだものだと聞いたことがある。詳しいことは知らないが、いつの間にか日本に広がっていたような気がする。

 そもそも俺が生まれた頃にはすでにそのクリスマスというものが定着していて、楽しみな行事の内の1つだった。サンタクロースからプレゼントをもらえる一大イベント。

 現在、大学生になった俺だけど、もうサンタクロースからプレゼントはもらえないけれどそれでもどこかわくわくした気持ちが残っている。カップルだなんだということも大事ではあるのかもしれないが、そんなこととは無関係に楽しみな人が絶対にいる。彼女なんかいないけど、それでもいるやつらに対して嫉妬する気持ちよりこのクリスマスというイベント楽しむ気持ちの方が大きかった。

 ツリーの飾りつけ、クリスマスパーティー用に飾り付けた部屋、ケーキ、豪華な食事、そして申し訳程度のお酒。これさえあればどんな人間でも楽しめるような気がする。

 誰でもいいから人を集めて、騒いで、疲れて、寝る。そんないつもの飲み会のような日々だけれどクリスマスというだけでなんだか少しだけ違う、新鮮なもののように思える。

 俺は部屋を見わたす。

 ごちゃごちゃだ。一言で表すとごちゃごちゃ。飲み物が入っていたペットボトルや瓶は床に乱雑に投げ捨てられていて、食べ終わった後の食器もほとんどどのまんま。まだ食べ残しだってある。お菓子の袋はあけられたままできっとしけっているものだってあるだろう。

 そんなクリスマスから1日たった12月26日。俺の目の前に広がっているのはただただ、恐ろしい現実だけだった。

「・・・・・マジかよ」

 集まっていた人間はもういない。ここが俺の部屋だということもあるのだろうが、無責任にもう帰りやがった。朝方俺を起こさずに部屋を出たのは起こしたら悪いということよりも起こしたら片付けを手伝わされるということからだったに違いない。

 眠い頭を無理やり起こして寝る前にある程度は食器なども洗ったつもりだったのだが・・・。よほど眠く酔っ払っていたのかどうにもそこらへんの記憶が曖昧だ。

 しかし記憶がどうあれ目の前に広がっているこの光景こそ現実。これが現実なのだから間違っているのは俺の方なのだろう。

「・・・・・」

 これだ。

 この感じなのだ。この感じが嫌なのだ。祭りの後の寂しさというかなんというか、夢の中にいたかのようなこの感じ。これだけは何度味わってもなれる事が無い。

 クリスマス、夏祭り、学園祭などなど。楽しんだ日の次の日は無慈悲に俺を襲う。

 文句を言っていてもしょうがないのだが、どこから手をつけていいかも分からないような状況だ。今日も実は大学がある。集まっていたやつらは1講からだったのだが、俺は2講からなので後1時間ぐらい時間がある。この惨状をなんとかするには短すぎる時間だが、何もしないよりはマシだと判断。

 俺は床にあるゴミを拾うことから始めた。

 ゴミを仕分けする。ここらへんを雑にするつもりはない。時間がなかろうがごみの分別は大事だ。どうせ講義始まるまでには間に合わないし。講義終わりにすぐ帰って来て掃除して、それからバイトいって・・・と頭の中にあるスケジュールを組み立てていく。

 案外やる事が多い。果たしてバイトまでに終わるのかどうか。冬休み明けにはテストがあるわけだし、その勉強もしなければいけない。でもこの惨状じゃ勉強はできないし、優先すべきは掃除か。

 ピンポーン。

 チャイムだ。大方昨日集まったやつらだろう。忘れ物でもしたか、それともこれを手伝いにきたか。

 ドアを開けるとそこにはそのメンバーの1人である同学年の女子がいた。

「メリークリスマース。というわけで、ノートみーせて」

「掃除終わったらな」

「はい?ってうわー・・・なにこれ汚い」

「お前らが1日かけて汚くしたものだ。これが終わるまでは残念だがノートも見せる事が出来ない」

「じゃあ、終わったら連絡してー。そのとき来るよ」

 そういう女子を俺は無理やり手伝わせる。

「な、なんで・・・すごいめんどくさい・・・」

 と言いつつも手伝ってくれる。こうして人員は2人になった。2人になって・・・そして4人になった。またもや押しかけて来たのだ、昨日のやつらが。

「なんで俺らが手伝いを・・・」

「そこを不思議に思うとは斬新だな」

 ぶつくさ文句を言いながら作業をしていく。というかお前ら1講さぼっただろ。

 しかし4人もいながら一切手がつけられていないところがあった。それは部屋の飾りつけとツリーだ。時計を見ると後30分はある。このペースならもしかしたら2講前に終わるかもしれないと思ったのだが・・・。

「やっぱ、これはずすのはきついな・・・」

 現実。

 ただの平日。そこに戻る事への恐怖。しかし俺はとめることなくその飾り付けをびりびりと破いた。そしてゴミ箱に投げ捨てる。

「もうクリスマスは終わったぞ」

 その言葉に同意してくれたのか次々と飾りを棄てて行き、ツリーを片付ける。

 クリスマスが終わっても大みそかがある、それが終ったらお正月。特別番組だらけになってしまうけど、それはそれでいいものだ。

 月日の流れに逆らうことなんてできない。だからその流れに身を任せて、楽しみを次々と見つけて行かなければならないんだ。

 再び俺は片付けへと戻った。

なんでこんな話を書いたのか自分でも分かりませんが、一応行事ごとの短編になります。クリスマス真っ最中になぜ終わった後の話を書いたのか。


本当ならクリスマス期間だけの5話ぐらいの話を書きたかったのですが、そうすると他の連載してる小説が止まってしまいそうだったので。


ですがもうそろそろ1作品終わりそうなので簡単なものをちょいちょい書きたいですね、お正月とかに。


ではまた次回。

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