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この世界(3):Rside

今回はルディックさん視点です。

「…で、戻って来ちまったのか。」



「申し訳在りません。」



「あぁ、別いい。気にしちゃあいないさ。嬢ちゃんが暴走するの見越してジークに頼んだんだ。アイツも俺の意図を汲んだんだろう。」



「……私だって、ユティ様のお力になりたかったですわ。」



「これから活躍出来るだろ?主治医なんだから。精神的なケアも必要だ。」



嫌々ながら任務中に貯まったいた元帥としてのデスクワークをかたしているところへ、アサギが戻ってきた。ジークと共に嬢ちゃんの対応をしていた筈だったが、どうやら追い出されたらしい。



さっき一瞬だったが、巨大な力を感じた。予想通り嬢ちゃんが暴走したらしい。判断は間違ってなかったと自分を誉めてやった。



「ルディ様は、最初からわかっていたんですね、こうなると。」 



「……まぁな。結構ムリヤリ引っ張って来たの俺だから。」



「呆れますわ。一体どんな手段を使ったのです?」



「いやぁ、金に困ってたから貸す代わりにカラダで払えって…」



「…最低ですね、ルディ様。」



ごもっともだ、と否定はしなかった。アサギは結構怖い女だからへんなところで敵に回したくはない。



「…じゃあルディ様、私は失礼します。また夜に伺いますから。ちゃんと仕事して下さいよ!」



「はいはい。」



アサギは仕事に戻ると早々に出て行った。静かになった部屋で俺はため息をつく。責任を感じるなら俺が面倒見てやるべきなんだろうが、嬢ちゃんは俺を憎んでるだろうからあまり顔を合わせるのは避けた方がいいだろう。



プラネットを共に逃げ回ってる時からかなり非難されていた。俺は軍人だから、必要ならば敵を撃つ覚悟はある。だが嬢ちゃんにはない。嬢ちゃんがいた世界で半年過ごしたから、あの世界、否、正確に言えば嬢ちゃんが住んでいたニホンと言う国が如何に平和かは身に染みている。



訳も分からず異世界に連れられ、命を脅かされれば仕方のない反応だ。



言い訳をするなら、俺は一応直接ミストへ移動出来るようにテレポートの座標を組んでいたが、嬢ちゃんの能力に阻まれプラネットに落ちてしまった。



あの時は正直焦った。



まるで仕組まれたかのようにプラネットの連中に見つかったし、始めは嬢ちゃんの引きの悪さを恨んだな。



まぁ、なってしまったものはしょうがないと思って俺は俺なりに 能力使わずに頑張って敵に応戦した。



「そーいや、何であの時撃てなかったんだ?」



敵に回り込まれた時、持っていたレーザー銃を奪って後ろから追いかけて来た奴らを始末しようとしたんだが、嬢ちゃんが殺すなと悲痛の表情を浮かべていたのを見ちまった所為で相手の急所を撃てなかった。



軍人として、一般人に左右されるようじゃ駄目だろ、と自分を嘲り笑う。



天井を仰ぎながらデスクに置いてあるコーヒーの入ったマグカップを手に取り、口に含んだ。




「私を攫った悪党のくせに、そん顔されたら文句も言えない。」



「ぶっ」



「ちょっと、汚い!ビックリしたわ。」



コーヒーを丁度飲もうという時、視界一杯に嬢ちゃんの顔が入り俺はコーヒーを吹いてしまった。つーか、びっくりしたのは俺の方だよ、と言ってやりたい。



「……何してんだこんな所まで来やがって。」



「今休憩時間。ジークさんに許可は貰ったもの。」



「“ジーク”だと?……いや、それは後だ。嬢ちゃん今精神体か?もう幽体離脱(バイロケーション)出来るようになったのか。」



「ええ。ジークさんが先ずはミストの中を自由に視れるようにって、さっき教りました。」



「飲み込みが早いな…」



幽体離脱(バイロケーション)は、確かにあまり表に顔を出さないシャーマンという立場ならマスターしておいた方がいいだろうが、さっき教わったわりに実用可能になるのが早すぎる。



嬢ちゃんがシャーマンだからなのか、元々生まれ持った潜在能力なのか。どちらにせよ、俺の見込みは大当たりだということだ。



「私、あなたに文句を言いに来たんですよ。」



「…ふーん」



「その返事はムッとくる。……でも、あなたの表情見てたら気が変わりました。」



「俺どんな顔してた?」



「教えてあげません!」



「んだよ、ケチだなぁ」



「文句を言うのは止めたけど、ちゃんと元の世界に帰すと約束してくださいよ!」



「………嬢ちゃんが真名を名乗りさえしなけりゃな。」



精神体であるため、嬢ちゃんは宙を浮きながら俺の周囲を行ったり来たりしている。正直言うと鬱陶しい。



「皆そればかりですね。何だかはぐらかされている気分…」



「嬢ちゃん、メガネ外したのか?あの赤縁似合ってたぞ。」



「あ、今話逸らしましたね!……まぁいいです。あのメガネ元々伊達なんですよ。…私、目つきが悪いから…友達にメガネかけた方が和らぐって言われて…。ちなみにメガネは能力コントロールしていたら割れちゃいました。」



「俺はメガネ掛けてないほうが好きだな。…ないほうがより美人だ。」



「…お世辞はいいです。」



「俺は女に世辞は言わないよ?」



「やらしい性格」



「何でそーなる」



嬢ちゃんは冷ややかな視線を俺に向けていた。



「そういえば、ジークさんとアサギさんって上下関係どうなってるんですか?」



思い切り話題を変えてきた。話をよっぽど逸らしたかったらしい。人のこと言えないぞ、と内心毒づいてやった。



「ジークさんは大佐、アサギさんは?」



「アサギは軍曹だよ。」



「え?でも、アサギさん…ジークさんに発言を許可しますとか、敬語使ってなかったような…」



「医者が特別なんだ。」



理由は他にもあるが、とは言わなかった。だが嘘は言ってない。他のアガルタではどうだか知らないが、ミストでは医者という役職は軍だけでなく様々な場で優位に立てる。医療に従事している者が少ないのもその要因だ。



俺がそう嬢ちゃんに説明してやると、彼女はどの世界でも医者は重宝されるんですね、と零した。



「……誰か来るな。嬢ちゃん、もう戻れ。」



「お客さんですか?」



「そうだ。俺も仕事中なんでね」



「わかりました。」



俺の言葉を信用していないのか彼女は渋々といった感じに戻って行った。誰かが来るのは事実だし、普通に部下とかなら立ち会わせても良かったが、相手が悪い。



出来ればまだ会わせたくない。



「…面倒だな」



来客を迎えるために、俺はため息をまじえながら立ち上がった。


  

話のキーをほのめかすのは難しいです(´⌒`;)

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