天才科学者(2):Yside
「ここがエヴァンジェリンさんの研究所ですか?」
「自慢するといい、一般市民おろか軍人や官僚達だって滅多に足を踏み入れることは出来ないよ。」
「そんな所に入ってもいいんですか!?」
「いいのいいの。僕が招いたんだから。」
エヴァンジェリンさんに案内されながらシティの歓楽街を抜けたところに、大層立派な白一色の建物があった。途中歓楽街の至る所に目を移されたけれど、この建物を見れば全て忘れてしまいそうな程に、迫力がある。
一番目につくのは建物の後ろに建つ細い筒状の塔だ。ミストの空まで続いている。
「何をしている。行くぞ」
「あ、はい」
塔を追って空を見上げていると、エヴァンジェリンさんに急かされて私は彼に続いた。
入り口となっているゲートはエヴァンジェリンさんが持っていたカードーキーで開いた。そこから、この研究所に入れる人が限られるというのは嘘じゃなさそうだと判った。研究所の持ち主であるエヴァンジェリンさんがカードーキーを使うくらいだから、そうだろう。
でも1つ、気になることがある。エヴァンジェリンさんはルディックさんのようにテレポートを使っていた。私が居たあの部屋から直接ここへ来ることは出来ないのだろうか。可能なら、誰でも入れてしまう。
「あの、エヴァ「お帰りなさいませ、エヴァンジェリン様。予定よりもお早いお戻りですね。」
不思議に思ったことを聞こうとしたら、誰かに遮られた。
エヴァンジェリンさんの真後ろに居た私から見えなかったので、私は少し体をズラした。
「僕だって人間だからね、多少のズレは出るよ。困るようならスケジュールの調整をして。」
「畏まりました。そちらの方はデータにあったお客様ですね。何か用意なさいますか?」
「構わない。僕と彼女は研究室にいるから、何かあれば言ってくれ。」
「了解しました。」
エヴァンジェリンさんと会話をしていたのは、彼と同じように、スーツに白衣を着た女性だった。会話の内容からして彼の助手さんかと思って訪ねてみた。
「今の方は、助手さんですか?」
「あぁ、No.23のこと?彼女は機械人形さ。」
「オートマタ?」
「ん?君の世界には機械人形は居なかったの?」
「ええっ、あの人ロボットですか!?」
返されたのが聞き慣れない言葉で私が困っていると、なんとエヴァンジェリンさんが機械人形と言った。つまり、さっきの人はロボットだということだろうか。前々から思っていたけれど、この世界の文明は随分発達していた。超能力もそうだが、空飛ぶ車もある。それに加えあれ程精密なロボットまでいるなら、感嘆させられる。
「ロボットとはまた古い言い回しをするね。君の世界は技術が遅れてるのかな。」
「確かに、こちらの世界と比べると随分遅れてますよ?電話もテレビもパソコンも、まだ立体3D化してませんし…自動車だって空は飛びません。ロボット工学も発達しつつはありますけど、あんなに精密なものはありません。あ、でももうじき民間で宇宙旅行が出来るようになるなんて話はありますよ!」
「ウチュウ?何だい?それは…」
「この世界に宇宙ないんですか?」
「初めて耳にした言葉だよ。うん、やっぱり異世界人の話は興味深いね。」
研究室へ向かう途中は質問のオンパレードだった。宇宙について根掘り葉掘り聞かれた。初めの内は答えれたけれど、その内専門的なことを聞かれ始めると私は音を上げた。何しろ私は文系だ。ニュースから得られる情報しか解らない。
専門的なのとは解らないとエヴァンジェリンさんに正直に言えば、学習が足りないと言われる始末。
しゅん、と残念がる彼を見たらなんだか居たたまれなくなった。
「僕が君を招いたのは異世界の研究に役立つと思ってね!」
「そうだったんですか?…それにしても、異世界の研究をするなんて変わってますね。」
「よく言われるよ。」
彼曰く、研究を始めた頃は大変だったらしい。何せ異世界が存在するという立証がまだされておらず、支援金も出なかったんだとか。彼の研究が認められたのは僅か10年前の事だったそうだ。
エヴァンジェリンさんのことを人の話も真面目に聞かない科学者程度に思っていたけれど、話を聞いて 少し彼を見直した。
だってもし彼が異世界の研究をしていなければ、私の存在だって危うかった筈だ。
だから、心の中できちんとお礼を言った。
「ここが僕の研究室だよ。」
「お邪魔します。……ん?あれ?…これって、招き猫?」
研究室に足を踏み入れると、部屋の中央に懐かしいものを発見した。元々身近にはなかったけど、故郷の物を目にするとやはり懐かしさを感じてしまう。
「おぉっ!やっぱりコレは君の世界のものだったのか!?僕が今まで発見した世界は2つあってね、うち1つは研究もスムーズだったんだがコレの世界は全く進まない。もしかして、と思ったんたが…いやぁ、僕は運がいい!」
等身大の大きな招き猫をバンバン叩きながら熱弁するエヴァンジェリンさんを見て、私はついつい笑ってしまった。
等身大の招き猫なんて、私から見ても珍しい。そんな招き猫1つでこんなにテンションを上げるなんて、とからかいたくなった。
ここ数週間ずっと招き猫を調べてたと言われた時には、お腹を抱えて笑ってしまった。
「そんなに笑わないでくれ。」
「だって、招き猫に数週間も割いたなんて…初めて聞きましたよ!」
「…なんだか恥ずかしくなって来たよ。」
「恥じることないですよ?時間を掛けて研究するのが、研究職というものです!…あ、これはエヴァンジェリンさんの受け売りですよ~?」
「!……全く、調子が狂うな…」
照れるように頬を掻くエヴァンジェリンさんにの姿に私はまた笑った。
少し会話文が多い気がしますが、許して下さい~.˚‧º·(ฅ> д <ฅ)‧º·˚.




