山道を進むバスの中
初のSF物です。ストーリーも重視してますが書きたいのは根っからの恋愛です(ฅ'ω'ฅ)♪
ヴォン、と排気口から鼠色の煙を蒸かすバスが山間の狭い一本道を進んでいた。その道は車両2台が通れる横幅はなく、反対車線から車が来たならばどこか隅に車を寄せる必要があるような、そんな狭い道だった。
ゆっくりと進むバスの中では、7人の10代後半から20代前半程の、今時の若い女子達が騒いでいた。また、他にバスの中央から後ろを陣取っているその7人とは別に、少し離れた席に女性が1人と、彼女と通路を挟んで隣の座席に座る男性がいる。
うち女性はナチュラルブラウンの落ち着きあるロングヘアーに、大きな赤縁メガネが目立つ騒ぐ女子達とは真逆の印象を与えているのだが右手に手帳、左手に携帯を持ち、手帳と何やら睨み合いをしていた。
「……やっぱりおかしいわ。美和!あなたちゃんと宿予約したの!?」
「んんー?したよー」
「さっき宿に連絡したら予約より1日早いって言われたわよ!!」
「うっそー!?あたしちゃんと予約したよ~」
大人しそうなその赤縁メガネの女性は後ろで騒いでいた女子の1人、美和と呼ばれた女性の元へ向かうと、その外見からは想像出来ない勢いで啖呵を切った。美和は頬を膨らませながら知らない、あたしはちゃんと予約した、の一点張りで、美和の対応に彼女は深い溜め息をついた。
「美和はおっちょこちょいだからね~」
「やらかしたね、美和ぁ」
「どーすんのよぉ!」
周りの女子達はケラケラと少々下品な笑い声を上げながら美和をからかう一方で、文句も多数飛び交った。
「しょうがない、一泊分お金を追加するしかないわ。1人1万!」
メガネの縁を持ち上げながら腰に手をやり、背筋をピンと伸ばす姿は、まるで学生時代のクラス委員長を連想させる。実際彼女は学生時代委員長だったわけで、今回大学生活1年目の夏休みと言うことで中の良かった8人で田舎の蛍を見るという旅行案を取り仕切っていた。がしかし、宿の予約は美和が自主的に引き受けると言って来たため任せたのが失態だった、と内心酷く後悔をしている。
「そんな大金持ってないよ!あたしらビンボー学生ですから!」
「そーそー、そのためにこんな田舎選らんだじゃん!」
仲間達の反応は予測範囲内だったが、かといってここで引き下がる訳にも行かない。何せ1日に朝と夕方の2本しかバスが通らないような田舎だ。宿代を構えなければ野宿する羽目になってしまう。
「……流石に私も8万は払えないわ。今持ってる全財産あわせても4万が限界。…どうしましょうか、このままだと野宿よ!」
その一言でバスの中は静寂に包まれた。騒いでいた女性達もことの重大さに気づいたらしく、難しい顔をみせている。
「あぁ、ちょっといいか?嬢ちゃん達?」
本来なら公共バスにそこそこ相応しい静寂を破ったのは、第三者の声。赤縁メガネの女性と通路を挟んで隣に座っていた乗客の男だった。急に背後から届いた声に驚き、一番近かった彼女は勢い良く振り返る。立っていた男はダークグリーン髪をあちこちに跳ねさせ、全身黒尽くめの怪しい格好をしていた。
「嬢ちゃん達、仲良く旅行かぁ?イイねー若いもんは」
「なぁに?オッサン、あたしらに用?」
「オッサンは可哀想でしょ!ほら、ちょっとイケメンじゃん?」
「オッサンはひでぇなぁ。俺まだ34だよ?ま、イケメンってのは嬉しいけどな。」
「あたしらまだ19だから!」
「イケメンだけど格好が見窄らしいから残念なイケメンだね!」
如何にも怪しい男と赤縁メガネの女性を除く美和達7人は妙に話を弾めている。その光景に、彼女は眉を潜めた。何せ普通じゃない。急に話しかけてきた怪しい男と話が弾むのはおかしい。彼女は違和感を覚えずには居られなかった。
「で、結局何か用なんですか?」
「んん?あぁ、そうそう……別に盗み聞きするつもりは無かったんだが、聞こえちまってね。お金ないんだって?8万。」
「えぇー、オジサンもしかして貸してくれんの!?」
「太っ腹!!」
「あぁ、貸してやる。」
男のその一言で美和達7人は再び声を上げ始めた。“見ず知らずの男”が金を貸すと言っていることへ対する違和感はまるでないように、先程までのテンションで各々礼を言っていた。
ただ1人、赤縁メガネの彼女を除いて、だ。彼女の頭では警告音が鳴り響いている。この男は何処か変だ、と。騒ぐ友人達を見る男の目は、まるで獲物を狙う肉食獣のようだった。
「ただし、条件がある。」
皆が一斉に視線を男へ向けた。
そして男の次の言葉を待つ。
「代価を払ってもらうよ?嬢ちゃんのカラダで、な?」
男はそう言いながらニヤリと笑い、赤縁メガネの彼女を見る。
「……!」
刹那、あたりは暗闇に包まれた。




