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黒い翼
―――ここはどこ?
声が聞こえる。
数人の声。
真っ暗で何も見えない。
ひとりが怒鳴る声が聞こえた。
誰かを殴るような音。
怖い。
恐い。
―――だれか……。
「こっちだ」
耳元で誰かがささやいた。
視界がゆっくりと、鮮明になってくる。
「早く。ここは危ない」
―――誰?
頭の中が真っ白で、何も考えることができない。
それなのに。
それなのに、視界と音声はやけに鮮明に、脳に命令を送りつけていた。
大きくて真っ黒な翼を持った、その人物を。
耳に残る、その声を。
顔はやっぱりよく見えなかったけど。
やけにはっきりと覚えていた。闇を溶かしたような黒い翼と、そして少し低かったけど、凛としていてとてもよく透る声が聞こえたこと。
彼だったら、自分を連れ出してくれるかな。
なんとなくそう思った。
眠い。
どうしようもなく眠い。
このまま睡魔に身をゆだねたら、きっと気持ちがいいだろうな。
視界がゆっくりと闇に落ちていく。




