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〜Kokoro〜 ココロ  作者: 樫吾春樹
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高校時代

 4月。私は、高校生になった。私は新しい環境に、期待と不安を抱いて、正門を通った。

 その日は、入学式をして、新しいクラスメイト達を知った。クラスには、同じ中学校出身の人が一人しかいなかった。

 このクラスで、上手くやっていけるか正直不安だった。何故なら、また昔のようにいじめられるのではないか、そう思っていた。

 入学してから、一週間が経った。

 今は体験入部といって、部活を体験することが出来る期間だった。

 私は、はじめに空手道部を見に行った。だが、もう小学校5年生以来なので、体が付いていけずにいた。

次の日は、友人の誘いで硬式テニス部に行った。先輩も優しかったので、この部活なら大丈夫と思ったのだろう。

 硬式テニス部と入部用紙に書いて、担任に提出してしまった。何故あの時は、美術部を見に行かなかったのだろうと、今思うのだった。それはきっと、ホミヤガに会いたくなかったからであろう。

 浦宮伽ホミヤガ 樰槻タラツキ。彼は、私と同じ中学の出身で、部活も同じだった。

 でも、中学時代での美術部での記憶を消したかったので、彼を避けていた。はっきり言えば、彼を記憶の中から消したかったのだ。

 私は昔、ホミヤガに惹かれていたのだ。だが、何度も思いを伝えては断られていた。それだけなら、記憶を消したいとは思はない。

 だが私は、ホミヤガに酷いことをした。だから、その事実を消し去りたかった。隠蔽したかったのだ。

 私は硬式テニス部に入部してから、毎日のように練習に打ち込んでいた。部活は、いつも遅くに終わり、両親を心配させることもあった。でも私は、部活を頑張っていた。

 もちろん、勉強面でも努力していた。部活から疲れて家に帰っても、机には最低でも1時間は向かって勉強をしていた。

 そのおかげで、そこそこの点は取れていた。中学のときは一桁に近かった英語も、赤点にはならない程度の点を取れていた。

 部活の帰り、私はある場所にいた。私は部活が早く終わるとたまに、ある人物に会うためにここに来るのだ。少し待って、その人物が来た。私が待っていた人は、今の私にとっては過去の、彼氏だった。

 その人と少しの間、会話をして過ごした。あの頃の私は、彼の事が好きだった。

 だが私は、自分でも気付かない間にホミヤガを探していた。もう、諦めたと思ったのに。

 時は流れて、夏休みになった。私は、怠け癖がついたせいで、部活に行かなくなった。先輩が引退してから、先生が厳しくなり、辛くなったので、逃げてしまった。

 そして休みが明けて、文化祭。私たちのクラスは、風船を配っていた。

 そして、私はあるクラスの出し物に入った。そこは、お化け屋敷だった。

 私は、お化け屋敷が大の苦手だった。だか友達の誘いだったので、断れなかったのだ。仕方なく友達と一緒に、入って行った。入ってみると、そこまで怖くなかったので良かった。

 そして、様々な店を回り、たくさん楽しんだのだった。

 文化祭が終わり、私は硬式テニス部から美術部へと転部した。やはり、私には運動部は向いていないのか。

 そして、その日から美術部員として、活動を始めた。活動をする部屋は、先輩方とは離れていた。先輩方が活動している部屋は、あまりにも静かで恐いので、他の一年生部員のいる所に行った。

 その部屋に行ってみると、私も含め4人しかいなかった。浦宮伽ホミヤガ 樰槻タラツキ天未内アメミウチ 琥者クジャ麻更伊マサライ 日芦ニチロ。そして、私。

 この4人しかいなかった。他の部員は、みんな幽霊部員となってた。

 初めのうちは、なかなか男子と話さないでいた。だけど、少しずつ話していった。ホミヤガとアメアメは中学から同じ部活なので、少しは話しやすかった。

 そんな風にして、毎日部活で過ごしていた。くだらない会話をしたりもした。そんな毎日が、私にとっては楽しかった。

 美術部に行き始めてから、私は彼氏と会っていた場所には行かなくなった。理由は、別れたからだ。1ヶ月ほど、連絡が取れずにいたのだった。

 そして私は、自分の曖昧さに、未熟さに気づいたからだ。だから、別れを告げた。

 そしてもう、当分は誰とも付き合わないだろうと、感じていた。

 部活中。私はたまに、ホミヤガに悲しそうな顔をさせてしまう時がある。それは会話中に、彼女の名前を出したときだ。

磯河イソカワ 利香リカ

 彼女の名前を出すと、ホミヤガは悲しい顔をする。

 そのときの私は、薄々気づいていたのだ。利香がホミヤガにとって、どんな存在であるかを。

 磯河 利香。

 彼女は、私の友人であり尊敬する人物であった。彼女とは趣味が近かったので、会話が弾んだりした。

 でも私は、あまり人間関係が深いと、やはり他人を傷つけてしまうのだ。関係の無い他人も。利香も、傷つけてしまった。何度、私は同じことを繰り返せばいいのだろうか。綺麗事かもしれないが、もう人を傷つけたくはない。そう思うのだ。

 そして、少しずつ私は人を避けるようになった。特に、男性を。

 時は流れて、12月になった。私は、様々なことで忙しくしていた。テストに読書感想画。他にもいろいろあった。そんな感じで、毎日を過ごしていた。

 そして、私の誕生日。その日は、日曜日だった。だが、友人からの誕生日メールが届いていた。嬉しかった。

 そして、テストも終わった。テストが終われば、少しは気が楽になるからだ。あとは、部活の課題。だが、それは冬休みにやればいいのだが。まあ、早めに終わらせるのも悪くない。

 そんなある日。ホミヤガがあることを口にした。

 それは、自主制作のドラマの話しだった。

 女子が参加していないので、出来ないのだった。私は参加してもいいと、ホミヤガに言った。そしたら、嬉しがっていた。とても、やりたかったのだろう。

 台本の制作は、私がやると言った。そしたら、よろしくお願いしますと言ってきた。どんな話しにするかは、メンバーと話し合わないといけないようだった。

 ドラマの台本を書くのは、楽しみだった。初めてだったので、どんな感じで出来るかは分からなかったが。

「お邪魔します。」

 今日は、ホミヤガの家で打ち合わせだった。何の打ち合わせかって。それは、ドラマについての打ち合わせだった。どのようにするかを決めないと、私の台本も始まらないから。

 ドラマに参加する、人数は案外少なかった。

 監督が一人。主役、ヒロイン。カメラ、台本。動画の編集。

 打ち合わせに来た人数は、私も入れて四人だった。

 私は、台本にヒロイン、それに編集者の役を買って出た。何故なら、パソコンを上手く使いこなせるのは私だけと言われたのだ。それに、私は小説を沢山書いているので、台本を書けると言われた。

 ヒロインは、必然的に私だった。女子が私しかいなかったからだ。

 私は、こんなんで大丈夫なのかと思った。こんな、グダグダで。

 私は家に帰り、早速台本作りに取り掛かった。

物語の方向は、恋愛と決まった。

恋愛系は、あまり得意ではなかったが、シンプルで言われたので了解した。

とりあえず、四人いるのだからみんな参加させてしまおう。

そう思って、登場人物を考えていた。

出てきた役は、主人公である藤沼フジヌマ

ヒロインの、柳瀬ヤナセ

主人公の友人の、柏崎カシワザキ

そして先生である、斎藤サイトウ

 この四人が出てきた。そして、台本の中では一番の問題が出てきた。

 それは、情景が文章としてかけないこと。全て台詞だけだから。そのことには、いつも頭を悩ませていた。

 あることを言われるまでは。

 3学期の始業式が終わってから、数日後。監督からいきなり、私の考えていた恋愛系のドラマを却下されてしまった。詳しい理由は、聞かされなかった。私はそのことを聞き、数日間は落ち込んでいた。とても、楽しく書いていた台本だったから余計に辛かった。

 そして、私はドラマを降りた。もうやらないと決めたのだった。

 ドラマには、私は絶対に私情は入れたくはなかった。なのに、あっさりと却下されたので頭に血が上ってしまった。

 そして、監督と喧嘩をしてしまった。ドラマは、結局は打ち切りに。私は最後に、監督にこう吐き捨てた。

「どうせ私の気持ちなんて、監督には分からないでしょうね。二度とあなたには、文を書きませんから。」

私は二度と、そのこと以来会ってはいない。

 私は、たまに監督とメールをしていた。ドラマの件は、もう済んだのだ。そしてあるとき、メールでこう言われた。

「ホミヤガは、中学のときの部活にいた部員がまだ諦められていないからね。」

そう言われた。

 監督は私が、ホミヤガに好意を持っていると知っていたのだ。そして、私の考えていたことは確信になった。

 ホミヤガは利香ことが、好きだと。

 私は、ホミヤガにメールした。前の彼氏と復縁するかもしれないという今となっては嘘の報告と、彼の心境を聞くために。

 私は最初、遠まわしに利香のことを聞いていたが、ホミヤガはとんでもなく天然で、結局は私が疲れて直球で聞いたのだった。

 そしたら案の定、ホミヤガは利香のことが好きだった。私は、落ち込んだ。分かりきっていたはずの、結果だったのに。私はこう伝えたが、後の記憶があまり無い。

「気にしないで。私なんかじゃ、ダメだってことぐらい分かってた。でも、少しぐらい助けられたかな。助けられたなら、それでいい。私はいつも、助けてもらってばかりだから。」

こう伝えたのだった。

 このあとはもう、覚えていない。多分、泣いたのだろう。ホミヤガを想って。

 2月の入ったばかりのこと。私は部活の帰りに、ホミヤガと文具店に行っていた。私が文具店に用事と言ったら、「僕も行こうと思ってた。」と言われたので、一緒に来たのだ。私は、原稿用紙。ホミヤガは、漫画に使う材料を買っていた。

 そして帰り際に私は、手紙を渡した。今までの私の思いを綴った、手紙だった。ある言葉に思いをこめて。

 午後9時を回ったとき、携帯が鳴った。送信者は、ホミヤガだった。きっと、慌てたのだろうと私は思い、受信ボックスを開きメールを見た。するとそこには、私の思いもしないことが書いてあった。

「ありがとう。これからも、影で支えていくよ。影は前を向いても、後ろを向いても同じ方向に伸びる。僕は影にしか立つことは出来ないけど、たとえ向かい合わせじゃなくても、後ろから背中を押すことは出来るかもしれない。僕が出来るのは、そのぐらいです。ごめん。あと、英語は分かんない。」

と書いてあった。私は、こう返信した。

「I wish you good luck.は「私は、あなたの幸運を願っています。」だよ。きっとそうなってね。」

心からの願いだった。

「ありがとう。僕も思っています。」

ホミヤガからの返信だった。

 このやり取りをしているとき、私はこう思っていた。ホミヤガも成長したな。精神的に。そう思った。

 それは、過去に遡ることだった。

 ホミヤガは、私が手紙やメールで「さよなら」と書くとき、心配してメールや電話をするのだ。きっと、私が消えると考えるからだったのだろう。でも今回の、メールはそういったものではなかった。むしろ、応援しているかのようだった。

 そう私は、感じた。昔は、あんなに天然だった奴が今は、少し人のことを分かったきたんだなと。そう思った。

 手紙の件以降、私とホミヤガは周りから見れば、何も変わらなく過ごしていた。だが、私の中では少しずつだが、ホミヤガとの思い出をしまっていた。あの手紙には、私のけじめと覚悟も書いた。ホミヤガへの想いを、封印するという覚悟を。

 そう決めたものの、やっぱり時間が必要だった。気持ちを落ち着かせないと、何も始まらないのだから。でも、それはとても難しいものだった。何故なら、毎日のように部活で顔を合わせるのだから。

 しばらくの間は、ホミヤガに対する気持ちと、それを否定する気持ちが自分の中で格闘していた。だが周りは、バレンタインの色に染まりつつあった。

 そう、来週はもうバレンタインデーなのだ。女の子たちは、はしゃいでいた。私は、そんな子達が羨ましかった。

 自分で、彼氏はいらないと決めたのに、彼氏がいる人を見るとついそう思ってしまう。私の恋なんて、叶わないのだから余計に、羨ましいのだろう。

 そう思いながら、変わらぬ日々を過ごしていた。その中でも、やはりいつの間にか、ホミヤガのいるクラスの方向を見てしまう自分がいる。

 ホミヤガの心は、私には無いと知っていながらも、彼を探してしまう。往生際が悪い。そう思うのだった。

 結局は、バレンタインを作ることにした。チョコレートを溶かして、型に流しいれた簡単な方法で作った。

 渡す当日になり、私は先にクラスの友人に配っていた。放課後になり、私は部室に行った。まだ、誰も来ていなかった。そんな時、三人が来た。

「そうだ、アメアメ。」

「ん。」

「はい、バレンタイン。遅れてごめんね。」

「ありがとう。」

「マサさんにも、どうぞ。」

「どうも。」

「僕には。」

「誰が、ホミヤガにあげるかよ。」

「ガーン。」

「なんてね。あるよ、はい。」

「ありがとう。ハルキ」

 そんな会話が、美術室の中に響いていた。

 楽しい会話も終わりの時が来ていた。もう帰らなければならない時間が来ていた。

「そろそろ、帰ろうか。」

 そして、私達四人は美術室をあとにした。

 楽しい日々がこれからも続くと、一緒に笑っていられると私は思っていた。


「今日から、二年生だ。楽しみだな。」

 私は二年生に進級し、部活でも、先輩になる。まあ、後輩が入部してくれればの話だけど。

「確か、ホミヤガと同じクラスだったような。」

 クラス分けは、一年生が終わるときに教えてもらったのだった。

「さてと、行こう。」

 そして、私は人込みの中に消えて行った。

「高校時代」終了

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