鉄と肉塊前線
この作品は私が初めて作る作品ですので表現が拙いかもしれませんが勘弁してや
第一章:鉄と酒
軍隊は「小銃は命より重い。命を捨てても銃を守れ」と教え込んだ。
だが今、私の手にあるそれは、さっきまで隣で笑い合っていた戦友の、どこの部位かも分からない赤黒い肉塊がボルトキャリアに挟まり、作動を完全に停止させていた。
飛び散った脂と血が機関部にこびりつき、レシーバーを引いてもびくともしない。
私は彼の形見とも言える死体から、引きちぎるようにしてその鉄の塊を奪い取った。
腰のスキットルをむしり取り、密造の粗悪なウォッカを機関部へ一気に注ぐ。
激しいアルコールの臭いが血の生臭さを焼き払い、肉の脂が泡を立てて溶け落ちていく。ジャムを起こしていたボルトが、ガチリと冷たい金属音を立てて再び噛み合った。
戦友の死は、悲しみではない。単なる「排莢不良」として、私の手の中にあった。
第二章:衛星のシミ
酒臭い小銃を受け継いだ5人組の戦いは、泥泥とした塹壕の中で続いていた。
「落ちたぞ!」
誰かが叫んだ。頭上を不気味に舞っていた敵の偵察ドローンが、集中銃撃を浴びて黒煙を吹き、墜落していく。
張り詰めていた空気が一瞬だけ緩み、男たちの顔に安堵の笑みが浮かんだ。
「やった、これで位置は割られない――」
その歓喜を、乾いた金属音が切り裂いた。
次の瞬間、分隊で最も大柄な男の拳が、不自然な形に弾け飛んだ。敵の狙撃兵が大口径弾を撃ち込んだのだ。肉と骨がザクロのように割れ、男が悲鳴を上げる間もなく、弾丸は彼の肩に背負われた個人携帯用対戦車砲の弾頭を直撃した。
至近距離での小爆発。火薬の爆風は、大柄な男の肉体を内側から木っ端微塵に解体した。
凄まじい爆圧が去った後、私の世界は粘り気のある赤に染まっていた。
熱い。顔にべっとりと張り付いたのは、彼の脂と、引きちぎられた赤黒い筋肉の繊維だ。
呼吸をしようと口を開けた瞬間、カチリと硬いものが前歯に当たった。吐き出し、泥に落ちたそれを見つめる。大柄な彼の、金歯の被せ物がある奥歯だった。
視線を下に落とすと、戦闘服の太ももからポケットにかけて、うねるような肉塊が乗っかっている。破裂した胃袋から溢れ出た未消化の配給食が、強烈な胃酸の臭いを放ちながら、ドロドロと装備の隙間に流れ込んでいく。
ズボンのカーゴポケットの蓋の上では、押し潰された「目玉」が、どっちを向いているかも分からない硝子体を光らせて私を凝視していた。
「おい、弾をよこせ!」
誰かが獣のような声を上げて飛びついた。それが引き金だった。
彼だったものの腰のベルトには、未使用の銃弾が30発入ったマガジンが3つ。要するに90発が入っている。残された男たちが、その「命」へ一斉に群がった。
マガジンを引きちぎるために、彼のまだ温かい太ももをブーツの底で思い切り踏みつける。グチャリと、肉と骨が潰れる鈍い感触。
誰もそれを咎めない。彼を人間扱いしない。
さっきまで笑い合っていた男の尊厳を、単なる「弾薬箱」として踏み潰すのに、さほど時間はかからなかった。
その時だった。
再びドローンが襲来したことに、私たちは気づかなかった。
衝撃波が塹壕を圧搾し、私たちの肉体は爆炎の中で均等に解体された。
後で聞いた話によると、その日、遥か上空を周回していた軍事衛星の高解像度写真には、灰色のクレーターのなかに、不自然に広がる巨大な「赤黒いシミ」が写っていたという。
それが、生きたいと願い、仲間を裏切って弾を奪い合った4人分の肉や内臓の残骸であることに、画面を見つめる本国のオペレーターの誰も気づくことはなかった。
第三章:湯豆腐の記憶
その凄惨な全滅の知らせが、後方の補充兵テントに届いた時、彼はまだ泣いていた。
数日前、地元の駅で泣き叫ぶ母親の腕から、憲兵たちによって無理やり引き離された時の、母親の硬い指の感触がまだ皮膚に残っている。
「おい、新兵。立て。第3分隊の穴を埋める。遺品回収だ」
前線に到着した私の目に飛び込んできたのは、誰が誰なのか判別できないほどぐちゃぐちゃになった肉と内臓の塊だった。
私は何度も吐きそうになった。鼻をつく強烈な腐敗臭、目に飛び込んでくる肉片、出来立ての内容物の刺激臭が、涙が出るほど目を刺した。
一刻も早く戻りたかった。肉を見たくなくなったのは言わなくてもわかるだろうが、何より私が恐れていたのは、先輩方を見にくい肉塊にした、あのドローンであった。
気づくと私は倒れていた。
力が入らない。ドローンかと思ったが、その場合即死なはずだ。痛みも感じない。見た感じ怪我をしている様子もない。
しかしなんだろう、この違和感は……動悸と過呼吸が止まらない。
息が苦しくなってきた頃、同期の兵士が私を発見した。
どうやら私は、恐怖のあまり、あの場から逃げていたようだった。
私は……死んだ。
死因は過労死と栄養失調。母の顔をもう一度見ることなく。
最後に食べた母の食事は湯豆腐だ……どうせならもっといいものが食べたかったと言っても、もう遅いだろう。
死人に口はないのだから……。
第四章:ポトフとペンダント
私は中衛部隊に所属していた。
最前線より安全なので、ここでは温かいポトフも食べることができる。
そんな日の昼だ。私は今日も戦友と世間話で盛り上がっていた。世間話と言っても、競馬とかスポーツとかのしょうもないことである。
そこで子供の話になった。小さい子供はよく似ているものである。ドジなのである。
そんなことで笑いながら、私はポトフを口に流し込み、咀嚼する。
何か変だ。硬い。
吐き出してみると、それは彼のペンダントだった。
地面を向いていた目線をなんとか上げると、そこには蜂の巣のような穴が空いた戦友が倒れていた。
ポトフをよく見ると、彼の肉片すら入り込んでいた。私は彼を食べてしまったのだ。
「あ”ぁ……!!」
脳の回路が焼き切れた。私は無意識のうちに小銃を握っていた。
我に返った時には、もう仲間を3人殺していた。
しかし、私は生き延びなくてはならない。
私には生まれたての息子がいる。先月生まれたばかりでまだハイハイすらままならない。
私の帰りを待つ妻を1人にするわけにはいかない。例え1人になったとしても、必ず、稼いで帰らなくては。息子とゲーム、スポーツをすることを夢見て。
「あ”ぁ、わだじはがえる、がえらなげれば……むずごに……がおむげでぎない」
私はとにかく走った。生き延びたいはずなのに、意志とは反して前線へ走っていた。
そこには肉塊が……蠢いているものもある。
微かに筋肉と筋肉の間に見える目は、私と似た目をしていた。彼にも子供がいたのだろう。
私は……罪を犯した。塹壕の中にいた兵士たちを、外にいた兵士たちを……侮辱するようなことをしてしまったのだ。
手を汚した私にできることは、彼を苦しみから解放することだけであった。
……どうやら私は死んだらしい。
いや、死んだ後もうめいて動いていたとか、マシンガンでやられたらしい。
ただ、息子に顔は見せれた。
もう悔いは……悔いは……。
最終章:大戦争
「我が軍の損害は死亡10、行方不明50、身元不明2000。進軍距離は5kmです」
部下が読み上げる報告を、長官は表情一つ変えずに聞き流す。
ぐちゃぐちゃになって誰だか分からなくなった彼らは、すべて「身元不明」という数字の奥へと隠蔽され、たった5キロメートルの前進という記号に形を変えて処理された。
意外と楽しかったわAIと作るんも悪ないなあ 最後まで読んでくれてありがとうね! いつかどっかで会えたらええね




