人類、究極の選択
今までの人類史の中で、征服されて幸せを維持できた民族や国家があっただろうか。
大半は、傀儡政権が征服者と被征服者の間に立ち、後者を奴隷化し抑圧してきた。
いったん抑圧されてしまえば、それを覆すのは容易ではない。
宇宙人とて同じだ――いや、地球人以上に貪欲で残忍な存在かもしれない。
我々人類はまさに「この日のために」多くの犠牲を払い、
強力な兵器を開発してきたのだ。
合衆国大統領のスピーチが終わった。
「我々は戦うべきだ。」
その声は、国連の場で圧倒的多数を占めた。
少数ながら「交渉による平和的解決を模索しては」という問いかけもあった。
しかし、地球とは全く異質の知的生命体、しかも我々人類の奴隷化の意図を
明確に示している存在を前に、平和的解決があり得るのか
――その問いは、瞬く間に押しつぶされた。
こうして、地球上のあらゆる国が協力し合い、未知の敵と「断固戦う」
という決議が採択された。
そして──国連決議の翌日。
戦いを最も強く主張していた4つの国、合衆国、日本、オーストラリア、イギリス。
その5つの都市――ロサンゼルス、フィラデルフィア、名古屋、メルボルン、
そしてロンドンが、ほとんど同時に「消滅」した。
半径二十キロにわたる巨大なクレーターと化して――
「合衆国に二発……それも、なぜフィラデルフィアなんだ?」
ペンシルバニア州フィラデルフィア――それは現職大統領が生まれ育った街だった。
皮肉なことに、この州は過去にスリーマイル島の原発事故という核の記憶を抱えている。
軍事施設にいた目撃者たちは、共通してこう証言した。
「最初に、街の中心部から鋭い閃光が放たれた。
次の瞬間、耳をつんざくような轟音。
そして風速百メートルに達する爆風が外周へ向けて吹き荒れた。
そしてその後には巨大な「きのこ雲」が立ち上っていた」
被害を受けた都市の中心部からは、異常なレベルの放射線が検出された。
広島、長崎に続く、人類史上三度目……しかも今回は、五都市同時の核攻撃である。
では――
いったい誰のしわざなのか?
奇妙なことがあった。当時のレーダー記録には、ミサイルなど飛翔体の軌跡は
一切残っていなかった。
あらかじめ巧妙に「仕掛けられていた」のか?
世界中のメディアは一斉に叫んだ。
「宇宙人の攻撃だ!」
「これはみせしめの核攻撃に違いない!」
「宇宙人はすでに都市内部に潜入している!」
人々は震え上がり、「次の攻撃」という恐怖は、瞬く間に世界を覆い尽くした。
国連決議の翌日、五つの都市が姿を消しました。
この瞬間、人類の「選択」は別の意味を帯び始めます。
けれど私はまだ、その本当の意味を知る由も
ありませんでした。




