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宇宙人ってホントにいる…の? ―2030年、人類降伏と地球政府の選択―  作者: 羅刹夜叉


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スロットマシン

「篠原君もそっち側に行っちゃうんだね……」


真理子がぽつりと言った。

手には、玄関の郵便受けから持ってきた私の採用通知。

研究所への就職が決まった、あの春先の朝のことだ。


内定が決まり、事前説明会や研修に追われるうちに、

真理子は私の部屋を去っていった。


長い間、胸の奥深くに沈み込んでいた苦い記憶が、

学園祭での展示の話をきっかけに、鮮明に蘇ったのだ。


もし今ここに真理子がいたら、一体どう判断するだろうか。

あの頃は、自分の良心に従って活動を続けるか、

それを捨てて就職するかの二択だった。


今回は、自分の良心に従いながら、しかも就職まで手に入るかもしれない。

――一挙両得だ。

そう考えれば、これ以上ない好機とも言えた。


だが、この一見うまい話の裏側には、協力者として、

この先ずっと監視側に目をつけられる危険が潜んでいる。

たとえそれが、第三者としてのモニタリング作業に留まるとしても――


――ここは引くべきだ。頭の中のサイレンが、けたたましく鳴っている。


研究職という立場にさえこだわらなければ、関口のように

別の道を進むこともできる。

当座の蓄えはあるので、アルバイトで糊口をしのぐこともできる。

生まれ故郷に戻って、まったく別の道を選ぶことだって……


「両立できるのに、やっぱり逃げちゃうんだ……」


――真理子なら、きっとそう言うだろうな。

そんな皮肉な想像に、思わず苦笑が浮かんだ。


「あっ、そうだ……」


内藤が思い出したように言った。


「あなたの研究所に、加藤さんという方、いらっしゃいましたよね」


「加藤……ああ、名古屋壊滅の直後に豊橋に戻った、あの加藤ですか……」


あの日の朝、思いつめた顔をして私に挨拶をし、

研究所を去っていった加藤のことを思い出した。


しかしなぜ、内藤が加藤のことを――


「そうです、その加藤さんです。

確か、研究所であなたの後輩――いや、部下だった方ですよね」


「ええ、そうでした。加藤がどうかしましたか……」


「なんでも今、地元でフードデリバリーサービスをやっているようですよ」


――彼も食べるために、懸命にアルバイトをしているのだろう。

それは、内藤の提案を断った先にある自分の姿を見せられたようでもあった。


内藤が意味ありげに笑って言葉を継いだ。


「近場を走り回るには、都合のいい仕事ですからね」


ふと、「近場は手交で」という内藤の言葉を思い出した。

まさか――加藤も内藤に「現地採用」されたということか……


――改めて考えてみれば、

内藤の依頼は表向き、何の変哲もないものだ。

世界中の投稿サイトをクロールし、統計的に解析して、

その結果を報告するだけだ。


仕事の紹介者に対する業務報告と考えれば、何も不自然なことではない。


それに、今日こうして内藤と会ってしまった以上、私はもう

無関係な人間ではいられないのかもしれない。

そうだとしたら、断ることにどれほどの意味があるのか。


――だが、それは一線を越えることにはならないのか。


こんな堂々巡りをしているうちに、めまいがして、

私は思わず内藤を見上げた。

内藤の後ろの壁の模様が、奇妙に歪んで見えた。


――あの壁のストライプ模様、あんなに曲がりくねっていただろうか。

こんなときに愚にもつかないことを考えている。


ドア越しに聞こえるレストランのBGMが、

やけに反響してくぐもって聞こえる。


頭の中でスロットマシンが回っている。

小窓には「OK」と「NG」のサインが交互にちらついていた。


――あぁ、目が回りそうだ。はやくこの回転を止めなくては……


「OK」と「NG」、どちらを口にしようとしているのか、

声を出すその瞬間まで、自分でもわからない。


「内藤さん、お話はよくわかりました……」


内藤は「ようやく決まりましたか」と言いたげな表情で、

無言のまま私を見た。


喉から手が出るほど望んでいた研究職。

その代わりに求められるのは、彼らへの間接的な協力でした。


これまで無難な人生を歩んできた篠原に、果たして火中の栗を拾うような決断ができるのか。


次回、いよいよ最終回です。

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