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宇宙人ってホントにいる…の? ―2030年、人類降伏と地球政府の選択―  作者: 羅刹夜叉


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10/30

象徴の死

名古屋壊滅という緊急事態の中、福岡へ向かうための交通手段をあれこれと

検討していた矢先、また驚くべきニュースが報じられた。


合衆国大統領が拳銃で自ら命を絶ったと報じられた。自殺現場は大統領執務室らしい。


朝のテレビニュースは、どのチャンネルでもこのニュースでもちきりだった。


私はふとあの合衆国大統領のスピーチ、地球の各国政府が

「未知の星の住民」――確か彼はこういう言い方をしていた――の軍門に下る、

と宣言したあのスピーチを思い出していた。


スピーチが始まる前の重々しいクラシック曲、あれはバッハの

「コラール前奏曲――我、汝を呼ぶ、主イエス・キリストよ」だった。

昔、図書館のライブラリで閲覧したアンドレイ・タルコフスキィ監督の

SF映画「惑星ソラリス」で出会った曲で、とても印象的だったのでよく覚えている。


今までの大統領職の激務に加えて、オーバーアークとの交渉という重圧に

耐えかねての自殺だろうか?


それとも、当初オーバーアークとの対決を呼び掛けた結果、地球上の五大都市の

核攻撃被害――しかも、よりによって自分の故郷であるフィラデルフィアの市民たちを

巻き込んでしまったという、自責の念に堪えられなかったのか?


どのテレビチャンネルのニュースでも、決まってそのクラシック曲が流れていた。


ふと、あの大統領スピーチの際、マイクの前で熱弁をふるう大統領の背後に、

後ろ手を組んで立つ黒づくめの男たちのことを思い出した。

まるで大統領を護衛するかのように、背後に左右一人ずつ……。


* * *


結局、福岡へはカーフェリーによる海路を選んだ。


往路は、24時前に横須賀港発、翌日の夜21時に新門司港着。

復路は、24時に新門司港発、翌日22時前に横須賀港着。

……ということで往路・復路ともまる一日かかる計算だった。おまけに、

新門司港に到着してから小倉あたりのホテルに一泊する必要もあった。


現代社会のスピード感を考えると、著しく効率が悪い。


しかし、日本海側経由で在来線や高速バスを乗り継いでの迂回ルートと比較して、

現地での疲労度等を勘案すると、これがベストであるように思えた。


また、私の自宅のある横浜から横須賀までの移動、新門司港から学会会場のある

福岡までの移動……これらの移動にはマイカーが最も合理的であると考え、

その使用についても交渉してみた。


マイカー利用となるとフェリーによる自動車航送も必要となる。人ひとり

移動するのに比べ、さらに超過料金が経費として嵩む。

またマイカーとなると交通事故のリスクもある。これらを理由に事務方、

特に総務・経理の連中は渋っていたが、とにかく緊急事態であることと、

従来線もほとんどダイヤ通りに運行されていない危うさを理由に説得した。


その結果、以下の条件で承認を得ることができた。


往路・復路での船上でのオンライン業務を定常どおり行うこと。

自動車の任意保険の上限額を無制限に変更しておくこと。

新門司港から福岡市内までのマイカー移動については出張として認めるが、

それ以外の地域への移動は出張として認めないこと。


船上でのオンライン業務については、誰にも邪魔されずにPCに詰め込んだ

論文や文献に集中できるので、むしろ私としては大歓迎であった。

もともと有給休暇を使う覚悟だったので、研究所の太っ腹には感謝だった。

私が加入している任意保険についてもすでに無制限になっているので支障はない。

現地でのマイカー移動についても、他に立ち寄るところなどないので問題はなかった。


こうして、私は愛車とともにフェリーで福岡入りすることとなった。

合衆国大統領という存在は、地球人社会における

「最後の象徴」だったのかもしれません。

その象徴が消えたあとも、篠原は日常の延長として学会へ向かいます。

大きな悲劇と小さな日常が、奇妙に同時進行していきます。

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