兵器開発
「いかがですか、将軍。こちらが我々が開発した新型兵器です」
開発部主任が言った。陸軍兵器局の一室には、重苦しい空気が張り詰めていた。室内に並ぶ開発中の兵器や試作品が放つ冷たい金属の光。それらから死の匂いが漂っているためか。
「ううむ……」
将軍は低く唸った。主任は説明を続ける。
「名はX-001。最新型のAIを搭載し、驚異的な戦闘能力を誇るロボット兵器です。二足歩行ながら、休みなく走行が可能で、その最高速度は陸上選手を大きく上回ります。また、鉤爪を使って壁を難なく登ることができるほか、装甲は戦車の砲撃に耐え得る強度を持ち、生体センサーも完備しており――」
「ま、待ってくれ」将軍が手を上げて主任の言葉を制した。「肝心なことを聞きたいんだが」
「ええ、どうぞ」
「このロボット一体を製造するのに、いくらかかるんだ?」
「だいたいこのくらいですね」
主任は滑らかな動きで紙に金額を書き、将軍に差し出した。
「将軍? どうされましたか? 口を開けたまま黙って……」
「こ、これ一体の製造だけで、我々の年間予算が吹っ飛ぶじゃないか!」
将軍は目を剥いて叫んだ。さらに、メンテナンス費や修理費がかかることを考えると、到底承認できない金額だった。
「ええ、では、もっと安価なものをご覧いただきましょう」
主任は落ち着いた調子で言うと、隣の机から小さなケースを取り出した。
「ほう、さすがだ。ははは、取り乱してしまったよ。それで、それは? 注射器か?」
「ええ、性行為後の女性に使用することで、受精卵の分裂を促し、多胎妊娠を意図的に引き起こす薬です」
「つまり……双子や三つ子を生ませるということか? しかし、それがどう、あ……」
「私の試算では、ロボット兵士を製造するより、人間兵士を増産するほうが圧倒的にコストパフォーマンスが高いのです。人間兵士は安価で柔軟性に優れており、最適解かと」
「しかし、うーん、なんというか、それでは本末転倒では……」
「何か問題でも? 私は常に、あなた方の要求に最適な解決策を提供しているつもりですが」
「あ、いや、文句があるわけではないんだ。引き続き、我が国のために尽力してくれ。D-113、君の開発には莫大な予算が投じられているのだからな……」