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あるアパートの一室  作者: 黒楓
2/5

涙だけは流せない

デパ地下で買って来る“料亭のお弁当”を

コップ酒を片手に食べ散らかし

カレはタバコに火を点けた


灰皿は置いてあるのに

灰は決まって

お気に入りの小鉢へ


嘲笑の混じった煙を

カレは満足そうに

吐き出した


ポテチや雑誌や空き缶で

とっ散らかった絨毯の上


片付ける私を尻目に

カレはネコ柄ケースのiPa〇で

盛大な音量の()()()()を見る


「頼むから止めて!お隣に聞こえるから!!」と懇願する私には

握り潰した空き箱の応酬!


「気遣いが分からねぇクソバカとは

ヤル気失せた!!」


面倒臭そうに立ち上がるカレに

ホッとした顔を見せてしまったら


目の前を“星”が飛び交って

私は絨毯を血に染めた


髪を摑まれ引き摺られ

メイクされたベッドへスローイン


壊れたゼンマイじかけは

不器用にむかれたゆで卵となり


ベルトがカチャカチャいう音を


ただ聞いていた




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