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邪馬台国の女王がロボットに乗って戦う話  作者: けろよん
第二章

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第11話 出撃コスモセイバー

 展望室では一向に止まない戦闘に星河が痺れを切らしていた。マイクを下ろす彼女の姿に夜見と光実も演奏の手を止めてしまう。


「どうして戦いが終わらないのですか! 私がこんなに愛を訴えて歌っているというのに!」

「星河様、エイリアンには耳が無いのでは?」

「宇宙では音は伝わらないと聞きます。ここからは届かないのかもしれません」

「それね!」


 夜見と光実の意見に一定の納得を覚えると、星河はマイクをしまって颯爽と歩き出した。彼女に付き従う夜見と光実も楽器を鞄にしまうと急いでその後を追っていった。




 星河達がやってきたのはコスモセイバーの鎮座する格納庫だった。辺りには数人の軍人達がいたが、星河達は気にせず歩いていく。

 彼女がパイロットだと知っている周りも止めることはしなかった。戦闘は優勢だしある程度の安全を確保できた上でテストを行うのだと思っていた。ただの一人を除いては。

 目当ての戦闘機の前までやってくると、そこでは仮面の男が乗り込もうとしているところだった。

 彼女たちが来たことに気が付くと阿室赦亜少佐は余裕の笑みを見せて振り返った。


「何をしに来たのかな? お嬢さん。ここは君のような民間人の子供が来るところではないよ。素直に艦長のところで待っていなさい」

「どいてください、私が乗ります」

「ハハ、馬鹿なことを言うものではない。君には実戦の経験があるまい? 訓練もなくたかがゲームでハイスコアを出したぐらいで己惚れるものではグべアアア!」


 無駄話を叩く少佐の頬に夜見のギターのフルスイングが炸裂した。クイーンの光に気を取られていた彼は陰から迫るものに全く気が付いていなかった。子供と侮り、手加減無しの本気の一撃を受けたせいもある。

 ギターは粉砕されたがこんな事はライブをやっていればままある事だ。夜見は壊れたギターをそっと引いた。

 だが、少佐もさすがは鍛えた軍人だ。派手に吹っ飛ばされながらも何とか震えながら起き上がった。


「子供だと甘やかしていれば付けあがる! 親父にも殴られたことがないのによくもやってくれたな! 社会にも出た事がない小娘どもが! 何がハイスコアだ、30倍だ! そんな物が全てではないとこの私が証明、ぎゃあアアア!」


 さらに何か言っている少佐に光実のスタンガンが叩き込まれた。彼は今度こそ昏倒した。


「邪魔者は処しました」

「星河様、どうぞ」

「ええ」


 二人に道を切り開いてもらい、星河はコクピットに乗り込んだ。戦闘機に乗るのは初めてだったが、操縦席はゲームと全く変わらないものだった。


「これなら分かるわ。待ってなさい、エイリアン!」


 星河は出撃していく。クイーンの出立を夜見と光実は手を振って見送った。




 宇宙で戦いが行われている。戦艦が砲撃を行い慎介達のロボットが戦っているその戦場に白銀の稲光が走った。星河の操縦するコスモセイバーだ。


「こっちを向きなさい、エイリアン!」


 操縦桿のトリガーを引いてボタンを押す。狙いは定めていない。ミサイルの群れはただ辺り一帯に無造作に飛んでいき、周囲のエイリアン達の気を引いた。

 敵は撃墜できていないが、これが星河の狙った通りの結果だ。


「もう無視はできないでしょう? さあ、今こそ私の歌を響かせてあげましょう」


 星河は操縦桿から片手を離すとマイクを手に歌を歌い始める。それはただの歌ではなかった。


「愛を知らないかわいそうなエイリアン達、私達の愛を伝えてあげるわ。宇宙でも愛は届くのよ」


 それは愛のメッセージソングだった。その歌声に慎介達も戦いの手を止めて見守った。


「私達はあなた達を愛しているわ」


 歌は闇に響き渡る。星河は歌い続ける。


「私達はお互いを愛する事ができるわ。ともに手を取り合い、愛を与えあっていきましょう」


 歌は闇に響き渡る。星河の歌声は届いたのか。一瞬エイリアン軍の攻撃の手が止まった。


「私達と一緒に愛を育んでいきましょう」


 歌は戦場に響き渡った。だが、敵の攻撃はすぐに再開された。迫る攻撃を慎介は回避し、衝撃が戦闘機の端をかすめた。星河は屈辱に身を震わせた。


「私がこんなに愛を歌ってやっているのに、どうして!!」


 周囲の全てをロックオン。


「私の歌を聞けえええ!! 愚民ども!!」


 それからの殲滅は早かった。慎介達が気が付くと戦闘は終わっていた。エイリアンは地球付近から完全に殲滅された。しばらくは平和が続くだろう。

 戦いを最後まで見届けた博士は感心しながら艦長に話しかけた。


「良い物を見せてもらいました。これほどの戦力を造れるのならもう私の技術は必要無いのでは?」

「うむ、性能は申し分ないのだがどうしても人型への変形機構を入れられなくてね。君の技術ならあれを変形させた上でさらなるパワーアップが見込めるのでは?」

「考えておきましょう」


 今日のエースが帰ってくる。到着する軍の最新戦闘機をみんなが拍手で出迎えた。少佐もダメージを負いながらも結果は認めざるを得なかった。

 だが、星河は喜びを表したりはせず、到着するなりがっくりとうなだれて膝をついてしまった。


「ああ! 星河様!」

「お気を確かに!」

「私はアイドルなのにどうしてこんな事を……」

「見事だったぞ、星河君。これからも軍のエースパイロットとして働いてくれ」

「ひやあああああ!」


 どうやら慎介の知る軍にスカウトされる人材がまた増えたようだった。

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