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99/115

99,帰るよ。

 


 人間の言語が分かる年老いた亜人が前に進み出、トーマスとローイの死体を確認する。


「正義は果たされた──」


「ええ、その通りです」


「諸君たちは、正しき人間のようだ」


 ここで握手でもして、さようならよい隣人よ、と別れられるように思えた。

 ところが、スゥによって両腕を切断された亜人たちが、「グガググガガ」と亜人たちの言葉で騒ぎ出す。


 どうやら、「この切り落とされた両腕の落とし前はどうつけてくれる?」というようなことを言っているようだ。


 それに呼応して、両腕を切り落とされた者たちと親しいらしい亜人たちも、騒ぎ出す。

 スゥを指さして、手刀で斬る動作をしている。


 これはスゥの腕も同じように切り落とすべきだ、と主張しているように思える。


 なるほど。連中の憤りも理解はできる。

 あの時点では、スゥは亜人たちを『人間を拉致した敵』と認識していたため、このような手段に出てしまったわけだが。


 とはいえ、両腕を切り落とされた亜人たちからしてみたら──

 まてよ。なんてことはない。


 エンマの回復スキルで再接続させればいいだけの話だ。


 さっそく人間の言葉の分かる年老いた亜人に、エンマのことを説明しよう。

 両腕を切り落とされた者たちも、腕が戻れば、スゥに落とし前をつけろ、などとは言わなくなるだろう。


 ここは理知的な解決を示すのだ。


 年老いた亜人が、「グガグガグググガガ」と指示を出す。


 とたん、ほかの亜人たちが、両腕を切り落とされた亜人たちに殴りかかる。


 おれ、スゥ、エンマがぽかんと眺めている間に、両腕を切り落とされた亜人たちは、仲間たちによって引き裂かれ、肉の塊と化してしまった。


「……あのー?」


 年老いた亜人がこちらに向かって、説明した。


「あの者たちが、腕を切断された落とし前をつけさせろ、と言ってきたのだ」


「はぁ。それは、あなたたちの言語が分からずとも想像はつきましたが」


「ゆえに、わしは命じねばならなかった。そいつらを殺せ、と。これ以上、諸君たち人間族と争うのは愚の骨頂。諸君たちは正しき人間ゆえ、このまま地上に戻ることを許そう」


「……感謝します」


 理知的な解決とはいかなかったが、まぁ暴力的な解決でも、解決は解決か。


 亜人たちの気が変わらぬうちに、そそくさと地上に戻ることにした。


 このときにはトーマスとローイの死体は、肉切り包丁をもった亜人によって、解体されていた。

 もしや食べるのでは……


「あまり考えないほうがいいな」


 帰りは、とくに難敵の蟲型魔物と遭遇することもなく、快適なものだった。


 約18時間ぶりに、地上に出る。

 昨日の昼前に入ったので、ちょうど日の出のころだった。


 朝陽を浴びながら、そういえば、と思い出す。

 スゥに〈キー〉を入手したことを伝えていなかった。


「スゥ、喜べ。〈キー〉を入手したぞ」


「〈キー〉って、なんだっけ?」


「〈愉悦論の会〉の会合に出るための〈キー〉だろうが。そのために〈魔月穴〉ダンジョン入りしたのに」


「あー、そうだったね! いやぁ、でもトータルでいえば、楽しいダンジョン探索だったねぇ」


 エンマは異論がある顔をしている。

 おれもエンマに賛成だな。

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