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98/115

98,その場の勢いによる正解というものがある。

 


 まぁスゥは悪くないが、本当にタイミングが悪かった。

 せっかく話し合いの機会となっていたのに、これで亜人たちが殺気立つ。


 一応は先ほどの年老いた亜人が止めに入るが、頭に血がのぼった若者ほど、ご老輩の言葉をきかないものだ。


 かくして槍をかかげて攻撃してくる亜人たち。

 おれは凍結デバフ(命は取らないバージョン)を連射で対応。


「え、どういう流れなの? 戦争じゃないの? 血わき肉おどる戦争じゃないの?」


 と狼狽するスゥ。


 エンマが、これまでの事情を明らかにする。

 とたんスゥは、困った様子になった。


 戦剣の剣身を鞘におさめ、攻撃してきた亜人を鞘で打ち込んで眠らす。


「リッちゃん、ちょっと知らせておいたほうがいいことがあるんだけど?」


「一体どうした、スゥ?」


 だがスゥが話したいことは分かった。

 二人の男が遅れて駆けてきて、おれとスゥの後ろに隠れる。


 ハンナの仲間であり、ご神体を盗んだ男二人、ローイとトーマスだろう。


「監禁場所が同じだったから、脱出のさいに一緒に逃がしたんだけど」


 この二人を追いかけるようにして、さらに亜人の軍勢が追いかけてきた。その数、200近い。

 まいったなぁ。デバフ殺法を駆使し、スゥが本気を出せば、この数の亜人相手でも乗り切れそうだが。


 ローイと思われる男が、おれの右肩を殴って訴えてきた。


「おい! おまえたち冒険者なんだって?! とっととこの亜人どもを皆殺しにして、オレたちを地上まで無事に連れていきやがれ!」


 うーむ。

 おれは亜人兵の間を駆け抜け、すっかり諦念した様子の年老いた亜人のもとまで、滑り込む。


「ご神体を盗んだ、あの男たちだが。ご神体を奪うとき、ほかに何か罪深いことをしたのか?」


「奴らは、ご神体をお祀りしている場所を聞き出すため、まず人間の言語を研究している、学者夫婦に近づいた。彼らの警戒を解いてから、その子供を人質にとり、聞きだしたのだ。その後、時間稼ぎのため、その家族は殺害された──しかし、父親だけは生き延び、われわれに事情を伝えたのち、力尽きたのだ」


「それは鬼畜だな」


 この場を収める方法が分かった。

 が、おれにできるかどうか……


 ま、やらなきゃならんことをするか。


 おれはまずトーマスの背後にまわり、その頭に人差し指をつきつけた。

《デバフ・アロー》を発射。


 付与したデバフは、第十一の型【弾けとぶときもある】。

 持続ダメージ爆裂傷の付与。


 トーマスがおれを見やり、


「あんた、いったい何していやがる! とっとと亜人どもを殺して、オレたちを守りやがれぇぇぇ!!」


 刹那、はじめの持続ダメージが起こり、その頭部が爆裂傷で半壊した。


 瞬間。その場が静まり返り、混乱した様子の亜人たち。

 そして仰天しているローイ。


「て、て、て、てめぇぇぇぇぇ! なにしてくれていやがるんだぁぁぁぁぁ!!」


「それはおれのセリフだ。おまえたちが亜人たちから魔遺物を盗み出すため、鬼畜な所業に及ばなければ、おれもこんなことはしなくて済んだんだ。しかし道義上、おまえたちの悪行は見逃せん」


「だ、だからって、てめぇが裁いていいことにはならないだろうが!」


「いいか。法律は大事だが。しかしことダンジョンにおいては、その場の勢いも大事」


 ローイの胸元に《デバフ・アロー》を撃ちこむ。


 ローイは胸元をかきむしる。埋め込まれたデバフでも取り出そうとしているかのように。


 あいにく、それは不可能な相談だ。


 持続ダメージ爆裂傷の付与。

 ローイの胸部が内側から破裂する。


「まぁ自業自得というやつだ。悪く思うなよ」



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