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89/115

89,6つの探索ルート。


〈魔月穴〉ダンジョンとは、このアーゾ大陸の地下全域に広がっている。


 ようは大陸そのものといってよく、これが〈魔月穴〉がどこの都市国家の領土でもない理由。


 入口となる大穴は大陸中に複数あり、最寄りの都市の名が冠されている。

 冒険者試験で使用されたのは、デゾン大穴からの探索ルート。


 探索ルートは全部で6つあり、ダンジョン内で合流するものもあれば、そうでないものもある。

 ただしここで明らかになっているのは、人類が探索できた領域に限る。

 一説には、ようは山登りと同じで、最終的には頂上に至るところにたどり着くだけだろう、とも。


 そして巷では、デゾン探索ルートは、『最も安全な探索ルート』とされている。


 本当かい。おれ、けっこう死にかけましたよ?

 チート受験少女がパーティにいたのに。


 とにかくいま問題は、№252が、どこの探索ルートから入ったか。


 歓楽都市ヴィグの最寄りの入口は、『グルガ探索ルート』と『ロード探索ルート』の二か所。

 ヴィグは、この二つの入口のちょうど中間地点にあるため、どっちから入っていてもおかしくはない。


 そして人類が探索した限りでは、いまのところグルガ探索ルートとロード探索ルートが、途中で合流することはない。

 つまり、間違ったほうに入ると、二度手間。


 仕方ないので、もう一度、ヴィグの№252宅に戻ることにする。

 本格的に〈魔月穴〉に入ることになってしまった以上は、どちらの探索ルートを取ったのか、明確にしておきたい。


 お尋ね者なのに、またヴィグに舞い戻ることになるとは。

 しかも殺人容疑だけでなく、生首を盗んだ罪も加わっているしな(こっちは有罪)。


 №252宅に入り、再度の家捜し。

 しばらく進めていると、玄関扉の開閉する音がした。


 警察に居所をつかまれたのか?

 警戒して様子を見にいくと、エンマを小脇にかかえたリュートが、串焼きを口にくわえて入ってきた。


「お届けものだよー」


 と、エンマを放ってくる。


「や、ヒーラー再加入は、大歓迎」


 と声をかけたら、頭を抱えて転がりだすエンマ。


「あぅぅぅぅ! リュートさんのスキルが、引きこもりにとっての地獄ですぅぅぅ」


 すでにトラウマ気味だな。


「リュート。おまえのスキルって、なんだっけ?」


「簡単に言うと、『内部にあるものを外部に出す』スキル。ただし生命体には使えないので、『内臓を体外に出して殺す』みたいなチートスキルじゃないよ。まぁ金庫室とか未開宝箱とかの中身を外に出すのに長けている。今回はエンマちゃんに使わせてもらったけど」


「しかしエンマも生命体じゃないか」


「あー、ごめん。つまり、生命体に対して『内部にあるものを外部に出す』ことはできないってことさ。引きこもり部屋に対して、『内部にいるエンマちゃんを外部に出す』ことは、可能というわけ」


「なるほど。確かに引きこもりにとっては、天敵を絵に描いたような能力だな」


「じゃ、オレは帰るよ。ダンジョン行くんだって? 頑張ってねー」


「おまえのスキルが必要かもしれない。一緒に来いよ」


 リュートはへらへら笑いながら、


「え? オレー? むりむり。足手まといになるだけだって。じゃぁねー」


 と、一人で帰っていった。


「リュートの野郎、サボっているか、楽な仕事しかしていないよな。あいつこそが、おれの理想の形なのに……」


 なんでおれはこき使われて、これからダンジョン潜らなきゃならないんだ???


「見つけたよ、リッちゃん!」


 スゥが歓声をあげて持ってきたのは、聖都グルガ行きの乗合馬車の出発日時を記した紙きれ。

 この出発日時からして、№252が行方不明になったころと符号する。


 すなわち、グルガ探索ルートで、№252は〈魔月穴〉に入ったということだ。


「じゃ、行くか。スゥ、エンマ……ダンジョン探索行きだ!!」


「おお、リッちゃんが、やる気に満ち溢れている……」


「マジで行きたくないから、死ぬ気でテンション上げているんだよ」


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