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87,キー・アイテム。

 

 場所を変えて、やたらと人のいないカフェに入る。

 というか、あまりに人がいないので、事前に人払いされていたのか、単純に人気がないのかのどちらかだろう。


 スプリングは簡潔にものごとを述べだす。


「〈愉悦論の会〉は、われわれ騎士団が長く監視している組織です。ノーランは〈愉悦論の会〉から抜けようとしたところ、消されたのでしょう」


「だとしても、おれがハメられたのはなぜなんだろう」


「ノーランが接触をはかろうとした者を、〈愉悦論の会〉が排除しようと企んだのではないでしょうか。〈愉悦論の会〉のネットワークは、この都市内に張り巡らされています。誰も信用しないのが良いでしょう」


 とすると、あなたも信用できないわけだ。

 などと、いちいち言葉にして言う必要はないだろう。向こうも承知していることだ。


 信用する必要はないが、情報を受け取るがよいと。


 すべてを信じられるわけではないが。

 たとえば本当に死んだのはノーランなのか、などなど。


 本来的には信用できる情報源として、イライアスが機能するべきなんだが。


「〈愉悦論の会〉とは、それは反政府組織のようなものなのか?」


「いいえ。ある者にとっては、それは反人類的な組織といえるでしょう。彼らは魔物の開放を企む者たちであり、ルシファー信者です」


 ルシファー信者といっても、ハーフディアブロのルテフニアのように、人類との共存を目指す者もいる。

 ゆえにいまの情報が本当だとしても、それだけで悪辣な組織と決めつけることはできない。


 ただ魔物を解放というのは、考えものだな。

 おれが知る限り、魔物は人類の敵以外になりようがないが。


 ノーランは〈愉悦論の会〉の会員だったが、抜けたいと思い、旧友であるギルマスに助けを求めたのか?


 辻褄は通る。

 だとしても、ノーランが遠い都市に住むギルマスに助けを求めた点は無視できないよな。

 目の前にいる鴎騎士団ではなく。


 これは鴎騎士団も信用できない、と少なくともノーランは感じたからではないのか。


「リクさま。私は騎士団の総意ではなく、一人の騎士として行動しています。あなたをお助けしたいが、殺人容疑がかけられている以上、表立っての支援はできません。しかしながら、あなたをハメたのが〈愉悦論の会〉ならば」


「連中を追えば、無実も証明できるかもしれないと?」


 話が早いとでも思ったのか、スプリングは薄っすら微笑んだ。


「はい。こちらは、〈愉悦論の会〉の会員の一人、№252の住所です。長らく泳がせていましたが、先週から消息がつかめなくなっています」


 騎士団がつかんでいる〈愉悦論の会〉の者が、この一人だけということはないだろう。

 消息を絶ち利用価値がなくなったので、おれにくれる、ということか。


「おたくが消息をつかめないのに、おれたちが見つけられるかな?」 


「見つける価値はあるかと助言いたします。〈愉悦論の会〉の者はみな、会員が集まるための特殊な〈キー〉を所持しています」


「つまり、この行方不明の会員を見つけ出せば、〈愉悦論の会〉へとつながる〈キー〉アイテムをゲットできるかもよ、と。可能性は薄いが」


 それに、かなり強引に誘導されている気もするが。


「せっかくだ。試してみよう。支援に感謝する、スプリングさん」


 住所が記された紙片を受け取り、スゥを連れて、外に出た。


「スゥ。スプリングをどう思った?」


「うーん。スプリングさんは、ちょっと苦手なタイプかな」


 スゥの『人を見る目』は、それなりに信用していい。


 教えられた住所は、繁華街から離れた、歓楽都市ヴィグにしては静かな通りにあった。

 寂れた一軒家。


 住所の紙片に、『庭の小人の裏』とも書かれている。

 小人?


「この小人の置物のことか」


 その裏を見ると、この家の鍵が張り付けてあった。

 開錠して、室内に入る。


 なんら特徴がない。

 よくある家具に、少しの読みもの。ここのあるじのことを知る手がかりがあったとしても、すでに騎士団が持っていってしまったように思うが。


 しばらく手分けして家探ししていると、興味深いものがみつかった。

 青く光る石ころ。


 魔鉱石の欠片か。


「リッちゃん。ここに、この家の会員さんが記した周期があるんだけど。なんの周期だと思う?」


「当ててやる。〈魔月穴〉ダンジョンの入口が開く周期だろ?」


「当たりだよ、リッちゃん」


 この魔鉱石は、あのダンジョンでしか採取できない……


「え。まさかこの№252の会員、あのダンジョンにもぐって、現地で死んだんじゃないだろうな?」

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