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85/115

85,《デバフ・アロー》の開眼。

 

 おれはビー玉発射器を取り出した。


「いいのかイライアスさん。おれは振りかかる火の粉は、遠慮なく払う性格だ。あんたが敵対するなら、容赦なくその人体を破壊するぜ」


 と、でかいことを言っておく。

 人体破壊とか、想像しただけでグロくて、する気などむろん無いが。


 しかしおれの安い脅しは無視された。


「リクさん。あんたぁ、間違ったところにきちまったようだ。俺がこの都市に配属されてから、何をずっと考えてきたと思う? それは、平穏無事。トラブルはゼロ。退屈な日常を堪能することだけを目的としていたところに、あんたは『殺人容疑をかけられたから匿ってくれ』などとほざく」


「……確かに、おれが悪かったかもしれない。退屈な日常を求めるあんたの気持ち、おれも同意できる。だからここは、おれのことは見なかったことにしてくれ。よそに行くから。同じ冒険者として、それくらいの便宜ははかれるだろう」


「悪いなリクさん。あんたがここを訪れたこと、すぐにヴィグの官憲に気取られるだろう。ここの警察は、無能じゃないんでな。だからここであんたを逃がしたとなれば、あとあと追及されるのは、このおれだ。そりゃぁ、困るだろ?」


「おい、さすがにそれはないだろ。おれがあんたの立場なら、面倒ごとはごめん、までは分かる。しかし、せめて見逃すくらいしたら、どうだ? 冒険者の同僚を」


「悪いな、知ったこっちゃない」


 第十八の型【忘れ物だよ】でいくか。

 デバフ効力は、装備の強制解除。

 あいつのデスサイズを強制解除してから、凍結デバフで決める。


 デスサイズである以上、接近戦のため近づいてくるはず。

 そこをビー玉を射出で着弾させ、物理攻撃判定とする。お、いいね。


 しかしイライアスはその場を動かず、デスサイズが謎の軋み音を発し始める。

 まさか。何か、チャージしているのか?


「リクさん。殺しちまっても悪く思わないでくれよ」


 デスサイズの鎌刃が、赤々と輝きだす。

 精霊付与の武器か。


「遠距離攻撃なんて聞いてないぞ!」


 ここからだとビー玉の射程外。

 そもそもここから『ビー玉を当てて物理判定してデバフ付与』じゃ、遅すぎる。


「いくぜ、リクさん!」


 いや来ないくださいよ。


 師匠の言葉を思い出す。

 おれのデバフ付与スキルには、まだ先がある。

 師匠が到達している領域が、まだあるだろう。


 ビー玉射出器を捨てて、右手を『銃』の形にし、人差し指で狙いを定める。


 デバフの塊を弾きだし、いったんエネルギー粒子とする。それが飛翔しやすいよう、矢の形をとらせる。これは『矢を飛ばす』がイメージしやすいためでもある。


「まぁ、やれないことはないだろ!──《デバフ・アロー》!」


『エネルギー矢』が、人差し指から発射される。

 このエネルギー矢には、【忘れ物だよ】のデバフ効果が付与されている。


 デスサイズが精霊攻撃を発動する前に命中し、強制装備解除。

 デスサイズが遠くへと空間転移される。


 イライアスが、遠くへと弾かれたデスサイズを見やり、溜息をついた。


「やるな」


「それはどうも……」


 凍結デバフを付与しようとしたが、イライアスは降参したように手を上げた。


「よし、おれの負けだ。おまえの能力は得体がしれない。ここで下手に戦うのは、それこそ面倒にも程がある」


「……分かりやすい奴だな。嫌いじゃないが」


《デバフ・アロー》の狙いを定めながら距離を取る。

 ある程度、離れてから、おれは身を翻して駆けだした。


 やーれやれ。ここからどうしたものか。


 ただ、《デバフ・アロー》を開眼できのは、素直に嬉しいな。


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