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78,平和主義のマイリーさん。

 

 ──マイリーの視点──


 あたしは平和主義者。


 だからゴブリンたちを殺しまくるときも、向こうがちゃんと『悪さ』をしているのを確認してから、刀を抜く。


 退屈しのぎに街道を見張っていたところ、ホブゴブリン率いるゴブリンたちが、旅人の一団を襲おうとしているのを目撃。


 ただし、ここは少し待つ。

 もしかすると、単純に街道を横切るだけかもしれない。


 あぁ、旅人たちに襲いかかったわね。

 では失敬。


 バフ付与スキル〈ゲームチェンジャー〉を発動。


 あたしはリクみたいに、いちいち名称をつけたりはしない。

 よって、まずは『移動を省略する』バフ。


 空間跳躍して、旅人集団とゴブリンたちの間に跳ぶ。


『火炎属性』バフで、刀を劫火で包む。

 バフ効果であるため、あたしや、あたしが味方と認定した者たち──いまはこの旅人たち──が、この火炎で燃えることはない。


 一方、この場にいるゴブリンたちは別。

 刀身がまとう火炎に巻き込まれて、火達磨になる。


 悲鳴をあげながら駆けまわりだすゴブリンたち。

 この火達磨の向こうから、ホブゴブリンが突撃してくる。


 あたしはそのホブゴブリンの手足を両断。

 芋虫のように転がすも命までは取らない。平和守護者だから。


「ふぅ。なぜあたしは、こんなに平和を愛する人間に育ってしまったのかしらね。生命を大事にするこの姿勢」


 旅人たちが「ありがとうございます!」と感謝してくる。


「はいはい」と、あたしは適当に返しておく。

 人助け、人助け、ふむふむ。


「マイリーさま」


 ダコタの気配は先ほどから感じていた。

 そちらを振り返ると、しかしあたしは驚く。


「……ダコタ。あなた、目のしたのくまが大変なことになっているわよ? ちゃんと休めているの?」


「はぁ。あの、アンガスに指示だしをしていた者が誰かを掴むまで、不眠不休で働けと命令されたのは、マイリーさまですが」


「そうね」


「……その、不眠不休で働くと、休めません」


「だから?」


「……………申し訳ございませんマイリーさま。いまだアンガスに指示を出した者は、明確にはつかめていません。

 ですが現在、コア機関内には二つの指揮系統が存在するようです。マイリーさまが属するのは、通常の指揮系統。すなわち、評議会からの指令を受ける系統です」


「そうね。評議会の年寄りたちを高く評価するわけではないけれど。それでも、よその都市内で内乱工作するようなバカな命令を下したりはしないから、まともな指揮系統よね」


「はい。そして、もうひとつの指揮系統。その頂点は不明ですが、これにアンガスは属していたようです」


「つまり、レグ内で内乱を引き起こすよう命じた指揮系統というわけね」


「はい………あの、申し訳ございませんマイリーさま」


 先ほどから、耳障りな悲鳴を上げていた、手足切断済みのホブゴブリン。

 それの首を斬って、トドメをさすダコタ。


「ダコタ。容赦ないわね」


「……えーと。慈悲のつもりだったのですが。こほん。とにかく、わが君。私は、さらに深く入り込み、『もう一つの指揮系統』の頂点を探りたいと思います」


「ええ。不眠不休で、頑張りなさい」


「…………はっ。わが君、承知いたしました!!」


 立ち去るダコタを見届けてから、あたしは一考する。


 問題は、残りの〈四鴈〉の二人。


 彼女たちは、どっちの指揮系統に属しているのかしら。


「まぁ最大の難敵だったアンガスを、渋々ながらもリクと協力して撃破した以上、そこまでの脅威ではないけれど」


 ここからどう、動くべきか。


 あたしは平和主義者なので、やるべきことは………

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