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74/115

74,33秒。

 


 ──33秒後。


「モンクというジョブは、みんなこんなに氣を操れるものなのか」


 マイリーは肩をすくめて。


「いいえ。アンガスだけが特別よ。情報によると、アンガスは五歳のときには武を極め、ある闘技大会に出場し、優勝したそうよ。対戦相手は全員、殺されている。それ以来、その闘技大会では『対戦相手への殺傷を禁ずる』というルールが作られたのだとか」


「さらなる武を追求し、モンクとなったのか。信仰心からではなく」


「そ。で、氣という、精霊力でも魔力でもない、第三の力と出会ったわけ」


 デバフ付与に弱点はないと思っていたが、氣の使い手であるアンガスには、デバフを解除されてしまった。

 今後も、このような敵が現れるかもしれないな。


 そのアンガスは、満足そうな死に顔で倒れていた。


 人間としては最強格という話、間違いなかったな。

 おれとスゥでは勝てなかっただろうし、ルテフニアが加勢してくれても、先ほど危うく殺されかけた。


 ただそこに師匠からの援護攻撃があり──そしてマイリーが加わった。

 さすがに、今回はこっちに戦力が偏りすぎていたな。


 33秒前。


 スゥとルテフニアの挟撃に対し、アンガスは氣の拳を使って応戦。


 このとき、明らかに意識はルテフニアの蛇の剣筋の対処へと向けられていた。

 つまるところ、まだスゥの技量では、ルテフニアには至らない。


 だからアンガスがスゥを眼中にないと見たのは、仕方ない。

 が、スゥとおれは組みなのだから、そこのところを忘れてもらっては困る。


 スゥの戦剣〈荒牙〉をアンガスが弾くことで、第四の型【冷たいものは冷たい】が付与される。

 効力は、凍結状態。


 デバフ解除できぬことに気付いたアンガスだが、それでも凍結状態を抑え込みつつ、スゥを蹴り飛ばした。


 飛んできたスゥの身体を避けつつ、速度UPバフのマイリーが、猛スピードで駆け抜ける。


 その鋭い斬撃を、アンガスはほぼほぼ回避に成功。


 右わき腹に、少しばかり斬傷が走っただけで。


「マイリーの嬢ちゃん。これはコア機関への反乱と見てもいいのかね?」


「そんなわけがないでしょ。あたしは、コア機関から『レグに内乱を起こせ』という指令を受けていないもの。とはいえ、そんな指令を受けていても、無視したでしょうけど」


 そう答えてから、マイリーは刀を鞘におさめた。

 その動作を、アンガスが不可解そうに見やる。


「嬢ちゃん。まだ愉しい勝負は、これからじゃないか?」


「いいえ。もう終わったのよ、あいにくさま」


 第二の型【ヒットポイント0】。

 デバフ効果は、文字どおり付与された者のヒットポイントが0になる。


 マイリーのバフがなければ付与できない、唯一のデバフ。

 これのデバフ発動準備を、マイリーの刀にかけていた。


 すなわち、アンガスに少しでも傷を負わせたとき、すでに付与は済んでいたのだ。


 アンガスのHP数値を、便宜上、はじき出す。

 このHPは、おそらく対象の強さから測定されているのだろうが──。


 量産型ガーディアンの数値が1万前後だったのに対し、アンガスは23万と出た。

 こいつ、本当に人間か?


 そして──そのHPは強制的に0となる。


 アンガスがその場で両ひざをつき、これから死ぬことを理解したらしい。


「そうか……ここまでか。まぁ、愉しいものだったなぁ」


 そうして満足げな顔で息絶えた。


 かくして現在。

 おれ、スゥ、マイリーは一か所に集まっていた。ルテフニアだけは少し距離を取っている。おそらくマイリーを警戒して。


「……で、どうする?」


 と、おれはマイリーに問いかけた。


「あたしはコア機関の本部に戻るわ」


「そうか……アンガスの件で、お前が責められなければいいんだが」


「大丈夫でしょう。コア機関から、アンガスを支援するよう指示を受けていたわけではないし。そもそもコア機関の考えからして、『弱いものが排除された』と解釈するでしょう」


「『弱い』ねぇ。このおっさんが弱かったら、人類のほとんどは雑魚になるが」


「それに」


「それに?」


「手土産もあるし」


「手土産?」


 マイリーは目にも留まらぬ速さで刀を抜き、反応できなかったスゥの首に突きつける。


「〈封魔〉スキルよ」

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