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71/115

71,減速デバフ。

 


 はい、解散。


〈王〉の帰還命令により、兵たちは迅速に退却。


 一方の〈紫陽夢〉メンバーも、ヴェンデルの命令で、拠点の損壊状態を確かめるなど、それぞれ仕事に戻る。


 おれとエンマは手持無沙汰になったので、近くの公園に行き、そこのベンチに腰掛ける。


「あー、疲れた」


「……わたしたち、もう役目を終えたんですよね?? そうですよね?」


「うーむ」


 破壊工作の阻止こそ失敗した。

 が、破壊工作の被害を最小限におさえることには貢献。

 その後は黒幕の正体を暴き、『〈王〉軍と〈紫陽夢〉による全面衝突』という内乱が起きるのを阻止。


 コア機関の最終目的がなんだったのか──レグ都市で内乱を起こし何を得ようとしていたのか、その点は疑問だが。


 それは、おれやエンマのような、いち冒険者が頭を悩ますようなことではない。

 ギルマスに報告するだけでいいや。


「ああ、役目は終えたよ。スゥを待ってから、いったん出張所に戻ろう。エンマ、引きこもりに戻れるのももうすぐだぞ」


「まるで100年間、砂漠を旅したような気分です」


 それは言い過ぎ。


 ふと視線を転ずると、男が一人、こちらを眺めている。

 見るからに冴えない中年の男で、タバコをふかしながら、何やら考えている様子だ。日が暮れて冷えてきたけど、サンダルばきで、寒くないのかね。


 そのおっさんと目があった。


 あー、これは。


「エンマ」


「はい?」


「スゥを探してこい」


「え?」


 刹那。

 一瞬でアンガスが距離をつめ、氣をまとった右拳を繰り出してくる。


 おれはエンマを押し倒すようにし、二人で地面を転がる。回避成功。


「きゃぁぁぁ、なんですか!」


「逃げろ、エンマ」


 エンマを押し出してから、おれはアンガスと向き合った。

 と、そのときには二撃目がきていた。

 その左の拳を紙一重で回避する。


 ただの拳ではない。

 師匠から聞いたことがある。これは氣を纏った一撃。マイリーの耐物理攻撃バリアでも、防御できないという話。


 アンガスは首をひねった。

 タバコをくわえたまま言う。


「ほう。お若いの、面白い技を使うじゃないか?」


「それは、どうも」


 とてつもなく速いおっさんだ。

 それでもギリで回避できているのは、おれの身体能力が上がったから、ではない。


 このアンガスの動きを抑えているから。


 先ほど、この男が、マイリーの言っていたアンガスだと直感的に気づいたとき、第一の型【亀の歩み】を付与しておいたのだ。


 デバフの中では珍しく、物理攻撃判定がなくとも付与できるものだから。

 その効力は、減速状態。


 つまりこのおっさん、減速デバフがかかっているのに、この動き。

 減速状態でなかったら、こっちは氣のパンチで殺されても、その自覚さえ抱く暇もなかったろうな。


「ひとつ確認なんだが、コア機関の〈四鴈〉アンガス。おれは冒険者ギルドに所属している。あんたのおひざ元である聖都内ならばともかく、ここは中立都市レグ。この場でおれを殺したりでもしたら、コア機関と冒険者ギルドの戦争となりかねないぞ?」


 アンガスはにやっと笑う。


「それはそれで楽しいことになりそうじゃないかい。だがね、お若いの。お前さんは、こっちの計画を台無しにしたんだ。だから、その代償は支払ってもらわんとならん。そして、お前さんとは楽しいバトルができそうだ」


「しかし、おれはただのデバッファーだ。アタッカーなしで、あんたとやりあえるとは思えないな」


 アンガスは失望した様子で言う。


「戦う前から諦めるのかね?」


 瞬間。

 死角からの戦剣〈荒牙〉の斬撃を、アンガスは避けながら、距離を取る。


 その斬撃の勢いのまま、スゥがおれのとなりに着地。


「リッちゃん、おまたせ!」


 スゥ。卑怯な手を使うのは望まない性格のお前が、あえて不意打ちを試すとは。

 それほどの敵だと、察したわけだな。


「アタッカーの相棒がいる、と言いたかったんだよ」


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