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65/115

65,定義の問題。

 


 普通ならば、化けネズミが存在するか確かめる必要などはない。


 が、おれたちはいま、暗号解読器の鍵が必要。

 この鍵は、工作員の誰かが肌身離さず持っていた可能性がある。

 そしてその死体はいま、化けネズミ(?)が巣まで持っていってしまった可能性がある。


 ただ念のため、この死体の残骸を漁ってみるが──


「やっぱり、唯一残っていた死体の残骸に鍵がありました──みたいな運のいい展開はないか。マイリーの幸運バフでもあれば別だが」


 まぁ、あのバフも現実改変はできないから、『後出し』効果はないがな。


「仕方ない。ここから化けネズミの巣に向かうぞ」


 とたんスゥがとんでもない拒否反応を示す。


「無ぅぅぅ理、リッちゃん! ネズミはぁぁぁぁぁ、無理!」


「恐怖に打ち勝つときだぞ、スゥ。冒険者魂を見せてみろ。な、エンマ?」


 エンマはエンマで化けネズミは怖いらしく、現実逃避の顔で彷徨っている。


「ゴミ箱はどこですか? 引きこもれるゴミ箱は?」


 ルテフニアが呆れた様子で言った。


「冒険者というのは、臆病者の集まりか?」


「……仕方ない。スゥ、エンマ、お前たちはここで待機していろ。おれとルテフニアで、化けネズミを退治してくる」


「うん……ありがと、リッちゃん! ルテさん、リッちゃんをお願いねっ!」


 狭い通路だったので、ルテフニアが先頭で進む。


 時間が惜しいので移動しながら、ルテフニアにデバフの説明と、武器への『デバフ発動準備状態』の付与の許可を求めた。

 だが断られる。


「デバフだかなんだか知らないが、そんなものは不要だ」


「……まぁ確かに。あんたほどの剣の腕があれば、デバフ付与など無用かもしれないな」


 やがてルテフニアが立ち止まる。


「行き止まりだ」


「変だよな?」


 とたん、床が消えた。


 可動式だったらしい。

 そのまま、おれたちは十メートルほど落下。


 ルテフニアが華麗に着地し、こっちは無様に着地した。

 だが問題は、着地場所にある。


 少し開けた空間。そこに、身の丈2メートル前後の、巨大なネズミたちが蠢いている。

 通常サイズのネズミでも、何百と蠢いていたら、ゾッとするが。

 こっちは数はそのまま、サイズがでかい。


「とんでもないところに落ちたんだが!」


「見ろ、死体だ」


 ルテフニアが示した先には、拠点から引きずられてきたらしき死体が、転がっている。

 かなり食べられているが──まてよ。化けネズミに、鍵が食われてしまっている場合は? 今度は、化けネズミの死体の胃袋を裂くのか? 


「うえっ。想像しただけで気持ちが悪い」


「まずは生き延びることを考えろ」


 周囲から化けネズミが襲いかかってくる。


 ビー玉射出器を乱射しながら、凍結デバフと、拡散デバフを付与。


 これで、ビー玉が命中した化けネズミは即凍結。

 その近くの化けネズミは、拡散デバフによって、凍結が拡散されるため、やはり凍結状態となる。


「悪くない攻撃だ」


 そう言いながら、ルテフニアの戦剣〈畜蛇〉が、蛇の剣筋で踊る。


 スゥも歯が立たなかった剣技だ。

 化けネズミなどは敵ではない。次から次へと血祭に上げていくが──


 次第に劣勢となっていく。

 いうなれば、ルテフニアは単体アタッカータイプ。一対一ならば、どんな強敵でも勝利をものにするだろう。


 しかし、たとえ敵一体が雑魚でも、こうも何百と四囲から襲いかかられては勢いを殺される。


 それはこっちも同じ。デバフは、単体の超難敵にこそ、真価を発揮する。


 ついに一体の化けネズミにタックルをかまされ、おれは倒れた。

 右手からビー玉射出器が滑り出、転がっていく。


「あー。ルテフニア、余裕があったら助けてくれるか?」


 同時に十体を相手にしながら、ルテフニアが苛立たしそうに言ってきた。


「自力で、どうにかしろ」


「やっぱり?」


 化けネズミの、板切れのような牙が迫ってくる。

 マジか? まさか化けネズミに殺されるのか? こんなことなら、マイリーに殺されてやるべきだった。


 瞬間。

 化けネズミの頸が斬り飛ばされる。


「大丈夫、リッちゃん!」


 助けてくれたのは、飛び込んできたスゥだ。

 戦剣〈荒牙〉を振るい、周囲にいた化けネズミたちを刃の餌食にしていく。


「スゥ! ついに、ネズミ恐怖症を克服したのか!」


「うーん。ちょっと、違うんだよね。エンマちゃんが言ったんだけど──『人間サイズのネズミって、もう化けネズミというか、ただの魔物ですよね』って」


「で?」


「わたし、魔物なら、怖くないよっっっ!!!」


 ……えー。そういう問題なのか?


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