63,ルテフニア、パーティ入り。
整理してみると、こういうことか?
コア機関の連中、破壊工作を動かすだけでなく、ルテフニアの命を狙った。
なんで、そんなことをしたのか?
もしかすると、ルテフニアが破壊工作を阻止するため動いていると誤解(実際のところはおれとスゥを追跡してきたんだが)、先んじて、排除しておこうと思ったのか。
ところがルテフニアに返り討ちにあい、さらにレグ内での拠点(つまり隠れ家)のひとつを殲滅される。
そこに保管していた〈ガーディアン召喚函〉を、ルテフニアが回収。
カフェで一息ついていたところ、こっちの不運バフ効果で遭遇。
で、今ここ。
さて。中立都市レグの内乱を企むコア機関。
レグ内に破壊工作のための工作員を大量に配置している場合。
その拠点もやはり複数置いてあるだろう。
ルテフニアが潰した拠点は、そのうちの一つと見ていい。
つまり、そこに行けば、他の拠点などに繋がる情報があるかもしれない。
しかし、そのためにはルテフニアの協力が不可欠ということだ、が。
「ルテフニア、ここは率直に話すんだが──」
と、ここまでの経緯──〈ガーディアン召喚函〉による同時破壊工作と、黒幕を見つけないとレグが内乱で壊滅しかねないこと──を話す。
ルテフニアは表情の読めぬまま、スコーンを食べる。
おれは、ここからどう続けたものかと一考したが、やはり率直にいくことにした。
「………で、あんたが殲滅した拠点には、何かしら手がかりがあるかもしれない。なので、その拠点の場所を、是非とも教えてほしいんだ、が?」
返答がくるまえに、スゥが注文した品をもって、テーブル席にやってきた。
「リッちゃん。ココア、お待ちどー」
「え? ああ、悪いな。おれは別に飲みたくなかったが、まぁせっかくだし──熱っ!」
「ホットココアだもの。気をつけてよ、猫舌リッちゃん」
椅子に腰かけて、ホットココアをふぅふぅしながら、スゥが横目でルテフニアを見る。
思うに、いまここで同席者がルテフニアと気づいたな、こいつ。
「……あれ? わたしたち、仲直りしたの?」
ルテフニアが、スゥを睨んだ。
「そんなものはしていない」
やはりルテフニアには損得勘定してもらうしかないか。
「ルテフニア。これはあんたが人間たちに、恩を売るチャンスだ」
するとルテフニアは鋭い口調で返答する。
「私を、みくびってもらっては困るな。私はそのような損得勘定では動かない。なぜ、この魔兵器の函をすべて集めてきたと思っているんだ? 危険性を感じたからだ。この都市に住まう、無害な人間たちのことを案じたからだぞ」
「…………つまり、無条件で協力してくれる、ということだな? この都市に住まう無害な人間たちのために? ありがとう、ルテフニア」
「なに? 私は──いや、まぁ、いいだろう」
ようやく少し冷めたホットココアを飲んでから、スゥが感動した様子で言った。
「ということは、ルテフニアさんが、仲間になったんだね。これからはルテさんと呼んでもいいでしょうか?」
「……構わんが。貴様、馴れ馴れしいな」
「スゥはそういう奴だ。それが強み──」
ルテフニアがパーティ入りで、強力なアタッカーが増えたな。
ところで、ヒーラーはどこに行った?
「エンマはどこに消えた?」
「そういえばさっき、お店の外のゴミ箱に飛び込むのが見えたけど」
さてはルテフニアに脅威を感じて、一人だけ逃げたな──ゴミ箱に。
「スゥ、さっさとココアを飲んじゃえよ。そうしたら外のゴミ箱でエンマを回収し、コア機関の殲滅済み拠点に向かうぞ」




