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61/115

61,拠点襲撃。

 

 ──リク──


 コア機関か?

 黒幕は?


 しかし証拠がない。

 また仮にコア機関が黒幕でも、マイリーは絡んでいないだろう。


 冷血といえば冷血なマイリーだが、無差別の破壊工作に加担する性格ではない。

 マイリーにも正義はあるからな。


 とにかく、このことをヴェンデルに伝えるべきか一考していると。


 数人の男女が店内に駆けこんでくる。

 どうやら〈紫陽夢〉のメンバーらしい。

 おれとスゥを疑わしそうに見ながらも、ヴェンデルと一緒にいるので、安全と考えたのだろう。


「ヴェンデルさん、大変だ。おれたちの拠点が、〈王〉の軍に同時攻撃を受けている」


「なんだと? どこだ?」


「ダ地区、ゴ地区、パール地区、トー地区、すべての拠点だ!」


〈紫陽夢〉のすべての拠点へ、一斉攻撃?

 スゥの影に潜んでいたケイが撤退してから、まだ十分もたっていないのに?

 てっきり、これからじっくりと〈紫陽夢〉掃討の作戦を動かすのかと思っていたが。


 何より、ここにリーダーのヴェンデルがいるのだから、〈王〉の手勢はここに来るものと思った。


 ヴェンデルも同じ考えだったはずで、その証拠に、先ほどから大剣を取り出し、カウンターにたてかけていた。

 人も隠れそうな巨大剣身が熾火のように熱をもっている、戦剣シリーズのクレイモアを。


 ここで迎え撃つつもりだったのだろう。

 ところがヴェンデルは無視し、拠点への総攻撃となっている。


 ヴェンデルが舌打ちした。


「ハーランめ。『影の女』を送り込んできたのは、おれの居所をつかむため──おれが拠点にいないことを確認するためだったか」


 なるほど。ヴェンデルを最大戦力と見て、当人が不在の拠点を先に潰しにきた、というわけか。


 だがひとつだけ確認しておきたい。


「あんたたちの拠点を襲撃しているのは、本当に〈王〉の手勢なのか?」


 ヴェンデルに報告した大柄な男が、胡散臭そうな目でおれを見た。


「なんだと?」


 ヴェンデルが言う。


「答えてやれ。おれも確認しておきたいと思っていたところだ」


 黒幕が〈王〉と〈紫陽夢〉の全面衝突を狙っているのなら、〈王〉の軍勢に変装して、〈紫陽夢〉拠点を襲撃することくらいやりそうなものだ。だが。


「間違いないだろう。各拠点からの急報では、それぞれ襲撃チームを指揮しているのは、〈王〉軍の幹部格だ。さすがに同じ都市で暮らしている。たとえ上層と下層で分かれていても、敵の顔は分かっている」


 と、その〈紫陽夢〉メンバーは請け合った。


 ふむ。となると、〈王〉は黒幕の存在を理解しながらも、〈紫陽夢〉を本気で潰しにきたのか。

 それも、おれに黒幕を見つけてこいと言ってすぐ、〈紫陽夢〉拠点へと軍を差し向けていた。

 ついでに指摘するならば、とっくに〈紫陽夢〉拠点はすべて把握していた、ということか。


 ヴェンデルはクレイモアを手にして、ほかの〈紫陽夢〉メンバーとともに、店を出ようとする。


「一番近いのはダ地区の拠点だ。加勢にいくぞ!」


 おい、黒幕の思い描いた通りに、どいつもこいつも動きすぎだろ。


「まってくれ、ヴェンデル。破壊工作の黒幕候補がひとつあるんだ。そいつらを捕まえれば、全面戦争を避けられる」


 ヴェンデルは溜息まじりに言う。


「それはハーラン側に言ってもらいたいな。攻め込まれる以上は、俺たちは大人しくやられるわけにはいかない」


 こうしてヴェンデルたちは足早に出ていき、おれ、スゥ、エンマだけが残った。


 エンマが挙手して、言う。


「あの………このままだと、大変なことになります、よね?」


 まったくもって。



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