表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

60/115

60,陰謀くるくる。

 


 ──マイリーの視点──


〈四鴈〉たるもの、情報管理が重要。


 そして、そういう面倒な作業は、優秀な右腕に任せるのがベスト。


 中立都市レグを出て、街道を外れたところで、右腕のダコタと会う。

 あたしより五歳ほど年上で、同性のあたしから見ても、見惚れるくらいの美人。ただいつも目の下にくまがある。

 うーん。そんなにこき使っている記憶はないのだけど?


「マイリーさま。元気そうで何よりです」


「なんかいつもそれ、皮肉っぽく聞こえるのよね。というか、あんた、ちゃんと寝ているの?」


「35時間ほど前に少し。2時間ほど眠りました」


「ふーん。ま、過労死だけはしないでね。あんたほど有能な副官、そうそういないのだから」


「でしたら、仕事の量を減らしていただければ──」


「はいはい。冗談はさておき」


「冗談……」


「アンガスの行方はつかんだ? 本当にリク……デゾンの冒険者を仕留めるつもりはあるの? 標的を討つならば、レグが格好の場所でしょう?」


 手帳を開き、疲れた目でなにやら確認するダコタ。


「あのですね、マイリーさま。何か情報の食い違いがあったようです。〈四鴈〉のアンガスさまは、確かに中立都市レグへと派遣されました。ですが、指令を出したのは評議会ではなく、コア機関独自の動きです」


「……すると、誰が?」


 コア機関に明確なトップはいない。

 これは評議会の考えで、つまりコア機関を己の裁量で動かせるものが現れれば、評議会など有名無実となってしまうからだ。コア機関には、それだけの力がある。


「その点はまだ調査中です」


「まって。〈封魔〉スキルはどうするの? デゾンの冒険者が所有しているかもしれないのよ」


「評議会側は問題としているようです。ですが、少なくともアンガスさまは、そのために動いているわけではありません」


 この手のことは、思考するのも面倒だわ。

 だけどリクなら、ちょっとは考えるのでしょう。

 あいつに劣るのは癪なので、あたしも仕方なく思考を働かせる。


「すると、アンガスがレグに向かった目的は、リクたちではない。そもそもアンガスは、レグに向かったの?」


「はい。それは確かです」


「リクたちが目的でもないのに、レグに向かった……。リクたちは、ただ居合わせただけ。師匠のためリクを追いかけて来たあたしも。では何に巻き込まれたというの? ……」


 レグで起きている異変といえば、考えるまでもない。

『ガーディアン召喚函』による同時破壊工作。


 それの黒幕が、アンガスだったというわけね。


「……それでダコタ。アンガスはいまどこに?」


 ダコタの視線が、あたしの後ろへと向かう。そこには警戒と恐怖の色があった。


「あぁ、いま後ろにいるわけね」


 神出鬼没にも程がある。

 刀の柄に片手を添え、あたしはあえて動かずに言う。


「アンガス。あんた、誰の指示で動いているわけ? まさか独断じゃないのでしょう?」


 背後から、ねっとりした声が言う。


「マイリーの嬢ちゃん。お前さんこそ、誰の許可を得て、ここにいるんだい?」


 明確な殺気が放たれる。


 まずいわね。


 幸運バフ、速度UPバフを、自分とダコタに付与する。

 それから目で合図を送る。一斉攻撃の。


 刀を抜き放ち、一撃を仕掛けようと振り向いたときには、アンガスの姿は消えていた。


「……あのおっさん、マジで嫌い」


「ですがマイリーさま。あのかたは、人間という種の中では最強とされていますが?」


「それ、誰が決めたのよ………………………………」


 とはいえ、ダコタの言うことも一理あるのよね。

 アンガスは得体の知れない『氣』を使うので、戦ってみないと、バッファーたるあたしとの対戦相性が分からない。


 そして、アンガスの進めている策略は、あたしの気にいるものではない。ので、近くの激突は避けられない。


 こんなときは師匠に頼るのが素直というもの。


「ダコタ、次の指令を送るわ」


「はい」


「〈暗闇荒地〉のオーガ大樹のとなりに、小さな家があるの。そこのエレノラという人に、言伝を頼みたいのよ。大至急に」


「どのような内容を伝えましょうか?」


「そうね──弟子のあたしとリクがレグにいることを。それと、『もしかすると弟子が0人になるかもしれない』ともね」


「はぁ。マイリーさま。その伝言を伝えると、エレノラというかたはどうされるのでしょうか?」


「うーーーん。それが読めないのが、師匠なのよねぇ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ