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55/115

55,デバフの雨を降らそう。

 

 中立都市レグは、分かりやすい構造。


 富裕層の上層エリアは都市の高みにある。よってさらに上層区画へと移動すれば、自然と周囲を見回せる。


 その上で、最も高い建物が、〈王〉が入り浸っていた高級バーのある建物。


 そこの最上階がバーだったので、そこまで駆け上がり、窓からレグの周囲を見回した。といっても、限りはあるが。

 ただこの位置からでも、六体のガーディアンが暴れているのが確認できた。


 しかもいくつかの属性に分かれており、おれたちが撃破した雷属性タイプ以外にも、氷属性、炎属性、土属性が見てとれた。


「まいったなぁ。これは被害が甚大だ」


 中立都市レグも軍隊を保有しているが、都市内には常置していない。

 そのため駆けつけるまでは時間がかかるようだ。

 それにデゾンの冒険者ギルドのような制度もないしな。


 一体の、新たな量産型ガーディアンが、空を飛んで視界に入る。


「あの個体、なんで飛翔できるんだ? あぁそうか。風属性タイプということか」


「リッちゃん。呑気に言っている場合じゃないよ。こっちに突っ込んでくるよ!」


 スゥの言うとおり、その飛翔ガーディアンが、まっすぐこっちに飛んでくるではないか。

 おれたちが狙いなのか?


 だが違うらしい。

 無人かと思ったバーの向こうから、酒瓶片手の〈王〉がひょいと現れる。


「〈王〉? あなた、こんなところで何しているんです?」


「もちろん、高級な酒の確保──と」


 酒瓶をあおってから、〈王〉の手元にどこからともなく戦槍が飛んできた。

 窓をぶちやぶって店内に突っ込んできたガーディアンへと飛びかかり、神速の突きを放つ。

 ガーディアン:風式の頭部が吹き飛んだ。


 ミスリルの頭部を一撃で破壊するとは。とんでもない威力の突きだな。


〈王〉は着地して、何事もないかのように先ほどの話をつづけた。


「敵の撃破だな」


「へぇ。〈王〉も伊達ではないらしいですね」


「さて。冒険者ギルドから派遣された君たちに、正式に救済を依頼しよう。どうか、憐れなレグを救ってくれ。むろん、恩は何倍にして返そう」


「こっちも『通りすがりの正義の味方』をやりたいのはやまやまなんですが──見たところ、まだ六体も暴れている。それに、これだけではないでしょう」


「いま、速報が届くところだ」


 と、側近の一人が駆けこんできて、〈王〉の耳もとで何やら報告する。

〈王〉は一瞬顔をしかめたが、すぐに余裕のある笑みで、おれたちに言ってきた。


「ミスリル製の大型ゴーレムが、上層エリア各地で暴れているそうだ。その数は、24体」


「……訂正しますと、あれはガーディアンです。ついでにいうと、あれでも古神殿にいたタイプよりは小型。おそらく量産型というところでしょう。しかし24体とは多いな。撃破個数は?」


「二体だ。いま俺が破壊したものと、もう一体、どこかの有志によって破壊されたもの。頭部を破壊したうえに、凍結状態になっていたようだ」


「あ、それは我々です」


 つまり、中立都市レグの戦力でガーディアンを破壊できたのは、〈王〉だけということか。


 おれはマイリーに向き合った。


「手を貸せ、マイリー。本気の本気でいくしかない」


「ひとつあんたに貸しよ、リク」


 マイリーにひとつ借りをつくるのか。なんとも大きな『負債』をこしらえることになりそうだ。


「……分かったよ」


 おれは〈王〉に注文した。


「助けてほしいなら、協力してくださいよ。上層エリアのどこにガーディアンがいるのか、24体分、最新情報をもらいたい」


「承知した。彼女が送信石で、情報を集めている。ケイだ」


 側近の、眼鏡をかけた小柄な女性がぺこりと頭をさげる。


「ケイです。情報官として、サポートさせていただきます」


「まず屋上に上がろう」


 屋上から、レグの上層エリアを見回す。

 ここからだと、より暴れている量産型ガーディアンを視認できる。


 ケイが上層エリアのMAPを開き、各ガーディアンの現在位置に印をつけていく。


 スゥが心配そうに問いかけてきた。


「リッちゃん、どうするの?」


「これからやるのは──一度だけ、マイリーと思考実験的に話し合ったことがある。ようは合体技だが──試したことはない」


「どうして?」


「おれたちの仲が悪いから」


「あー、すっごく納得」


「準備はいいか、マイリー?」


「あたしは、いつでもいいわよ。あんたこそ、ヘマするんじゃないわよ? 癪だけど、これはあたしがサポート、あんたが主役なのよ」


「分かってるって。師匠のように、うまくやろう」


 スゥがまだ納得していない様子で尋ねる。


「結局、何をするの?」


「デバフの雨を降らす──いや、デバフの『イカヅチ』かな」

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