54,ガーディアン:雷式
凄まじい勢いで展開される漆黒の函。
最終的には、身の丈30メートル程度のゴーレムと化す。
ミスリルを素材として作られた、金属生命体に。
「古神殿のガーディアン? なんだって、それがここで出てくる?」
原理としては、例の黒い函が、ガーディアン召喚函だったということなのだろうが。
「けどリッちゃん。古神殿〈風建〉で遭遇したガーディアンに比べて、一回り小さいよね?」
「確かに。だが都市破壊する分には、充分なでかさだ」
金属生命体のガーディアンは、両腕を振り回し、周囲の建物を粉砕。
さらに近くにいた市民を踏みつけていく。手あたり次第の、まさしく破壊活動。
駆けつけた都市警察の隊員が矢を射るも、ミスリル装甲に傷ひとつつけることもできない。
さらにガーディアンの両肩が開き、そこから砲口が出てくる。
〈風建〉のガーディアンには見なかった仕様だな。
その砲口から、雷撃が射出。隊員たちを一瞬で感電死させてしまう。
「……思ったより厄介そう。とっとと破壊する。いくぞ、スゥ、マイリー!」
マイリーが不満そうに言う。
「まって、なんであたしまで?」
「通りすがりの人助け精神だろ」
「ったく、仕方ないわね」
マイリーが雷耐性バフを、おれたち全員に付与。
一方、おれはマイリーの刀にも、スゥの戦剣〈荒牙〉に常時付与しているものと同じ、『デバフ発動準備』をかけた。
スゥとマイリーが接近すると、ガーディアン:雷式が砲口の狙いを定める。
発射される雷撃は、雷耐性で持ちこたえるが、動きを封じる効力はあった。
「厄介だな、あれは」
はからずもスゥたちが囮になってくれたので、おれは迂回して、ガーディアン:雷式に接近。
ビー玉射出器の狙いを定めて、ビー玉を命中させる。
第十八の型【忘れ物だよ】を付与。
そのデバフ効果は、装備の強制解除。
とたん、ガーディアン:雷式の雷砲台が、二つとも吹き飛ぶ。
もちろん、装備品と解釈されたためだ。
「でかしたわ、リク!」
マイリーが速度UPバフで、突風のように駆けぬけ、ガーディアン:雷式の右足に斬撃。
マイリー自身で付与した斬撃UPのバフと、第十一の型【弾けとぶときもある】の爆裂傷デバフの付与が重なって。
ミスリル製の右足が、切り裂かれる。
体勢を崩して倒れていくガーディアン:雷式。
「とどめはわたしが!」
と、跳躍したスゥ。〈回転斬り〉+爆裂傷デバフが、ガーディアン:雷式の頭部を破砕。
さらに念のための凍結デバフを、かけておく。
どうと倒れ、ぴくりと動かなくなるガーディアン:雷式。
ゴミ箱の後ろに隠れていたエンマが、慌てて駆けよってきた。
「凄い! 凄いです、皆さん! こんな化け物を瞬殺じゃないですかぁ!」
「大事に至らなくて良かったな。被害は最小限で済んだ」
「はい。函が、一個だけで良かったですねっ!」
「え?」
「いえ、わたし、思っていたんです。いくら奇怪な函だからって、目撃情報が多すぎじゃないかなって」
確かに。
しかし、それは運び込まれたガーディアン召喚函が、一個だけだったらの話。
複数のガーディアン召喚函が持ち込まれていたのだとしたら。
むろん、同時に上層エリア各地で、展開されただろう。
そういえば、さまざまな方角の遠くから、建物が破壊される音や、人々の悲鳴が聞こえてくるような。
「あーーー」
「なんですか、そのあきらめの溜息は??」




